岸惠子さん死去 93歳 「君の名は」「おとうと」「忘れえぬ慕情」

(2026年8月20日9:00)

岸惠子さん死去 93歳 「君の名は」「おとうと」「忘れえぬ慕情」 
岸惠子さん(公式サイトから)

  俳優で文筆家の岸惠子さんが7日、横浜市の自宅で老衰のため死去した。93歳だった。19日、所属事務所が発表した。映画「君の名は」で国民的スターになり、フランスのイヴ・シャンピ監督と結婚してフランスのパリを拠点に国際派女優としても活躍、エッセイなど文筆家として活動するなど幅広い活躍で知られた。

所属事務所は公式サイトで「俳優 岸惠子が老衰のため令和八年八月七日永眠いたしました。ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます」と報告。
「葬儀は故人の意思により近親者のみにて相済ませました 尚 誠に勝手ながらご香典ご供花の儀等は固くご辞退申し上げます」としている。そして「長年にわたり多大なご懇親を賜り誠にありがとうございました ここに謹んで御礼申し上げます」と感謝の言葉で締めくくった。

1932年(昭和7年)8月11日生まれ。横浜市出身。1951年、松竹「我が家は楽し」でデビュー。松竹「君の名は」(大庭秀雄監督)3部作(53~54年)が大ヒットして岸さんは松竹の看板女優になり、一躍トップ・スターの仲間入りをする。
同作は菊田一夫・作のNHK連続ラジオドラマの映画化で、太平洋戦争末期の東京大空襲の夜、数寄屋橋の上で互いに命を助け合った、岸さん演じる主人公の氏家真知子と後宮春樹(佐田啓二)が、半年後の再会を約束して別れるが、約束の日に現れず、1年後に再会するも真知子は結婚が決まった身で、すれ違いを重ねていくという運命を描く悲恋物語。
「放送中は女湯がカラになる」といわれたラジオドラマの人気と相まって、映画も大ヒットして3作製作された。岸さん演じる真知子がストールを首に巻くスタイルが「真知子巻き」と呼ばれて流行し、ファンレターが1日400通以上、ブロマイド売り上げ1位になるなど社会現象を巻き起こした。

松竹「女の園」(木下恵介監督、54)、東宝「雪国」(豊田四郎監督、75)、東宝「怪談」(小林正樹監督、72)松竹「約束」(斉藤耕一監督、72)など巨匠の作品に多数出演。大映「おとうと」(市川崑監督、60)でブルーリボン賞主演女優賞などを受賞。「かあちゃん」(市川崑監督、01)で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。1954年、有馬稲子、久我美子と3人で「文芸プロダクション人参クラブ」を設立して映画界に新風を巻き起こした。1955年、佐田啓二と共演した「亡命記」で第2回東南アジア映画祭(現・アジア太平洋映画祭)の最優秀女優賞を受賞。フランスのイヴ・シャンピ監督の日仏合作映画「忘れえぬ慕情」(56)、同「スパイ・ゾルゲ/真珠湾前夜」(61)、高倉健が出演したシドニー・ポラック監督の「ザ・ヤクザ」(74)など国際的にも活躍した。第42回日本アカデミー賞会長功労賞受賞。2004年、フランス共和国芸術文化勲章オフィシエ、2004年、旭日小綬章。

テレビではNHK大河ドラマ「太閤記」(65)、TBS系「赤い疑惑」(75)、NHKテレビ小説「こころ」(03)、終戦六十年スペシャルドラマ「火垂るの墓」(日本テレビ系、05)、TBS開局60周年5夜連続特別企画「99年の愛~JAPANESE AMERICANS~」(10)など数多くのドラマに出演。87年、NHK衛星放送の報道番組「ウイークエンド・パリ」のキャスター、91年、テレビ朝日系「ニュースステーステーション」のパリ駐在キャスターを務めた。
2013年3月、自らの恋愛経験を基にオマージュした熟年男女の恋愛小説『わりなき恋』を発表。2014年、小説『わりなき恋』を原作とした一人舞台『わりなき恋』に主演。脚本も自ら担当。エッセイ集『私の人生ア・ラ・カルト』(講談社、05)などのエッセイも多数発表した。

私生活では1957年、主演した日仏合作映画「忘れえぬ慕情」(56)のイヴ・シャンピ監督と、パリ郊外の村役場で川端康成が立会人になって結婚式を挙げて注目を集めた。以後、パリに居を構え、フランスと日本を往復しながら女優を続け「空飛ぶマダム」と呼ばれる。1963年5月23日、娘をもうけるが1975年、離婚。2000年、フランスを離れ日本に戻った。1996年、国連人口基金親善大使に任命。

■山田洋次監督、吉永小百合が追悼コメント

岸さんは松竹「男はつらいよ 私の寅さん」(山田洋次監督、73年)に12代目マドンナ役で出演しており、山田監督が19日、松竹を通じてコメントを発表した。
「ぼくの青春時代、つまり日本映画が娯楽の王座をしめていたあの時代を代表する大スターの死を、深い感慨と悲しみの中に受けとめています。寅さんの華やかなマドンナ陣の一人としてスクリーンを輝かしてくれたことも、今はなつかしい想い出となりました」

映画「細雪」(市川崑監督、83)で岸さんと共演した吉永小百合が19日、コメントを発表した。
「大好きな先輩でした。『細雪』でご一緒した時、ラッシュを見て、『あなた、とても良いわよ』と誉めて下さり、嬉しかったこと、忘れられません。パリのお宅に伺い、『歩いていく二人』という本を一緒に作ったことも、大切な思い出です。もう一度 お逢いしたかった!今はその思いでいっぱいです」