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10月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦

(2020年10月15日12:00)

文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が10月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。5日の放送では「きみの瞳が問いかけている」(10月23日公開)、「みをつくし料理帖」(10月16日公開)、「82年生まれ キム・ジヨン」(10月9日公開)の3本の話題作が紹介された。

10月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
(上地由真㊨と東紗友美さん =文化放送「上地由真のワンダーユーマン」の公式HPから)

今日は月に一度の映画を大フューチャーする回です。題して「今月のシネマログ」 最新の映画作品紹介や映画に関する話題をお送りしています。「さゆみん」こと、映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。よろしくお願いします!

上地   ということで、10月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、荒木さんの3人が「これはオススメ!」と思った作品を独断で推薦、ご紹介します。 まずはさゆみんから、お願いします。

10月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「きみの瞳(め)が問いかけている」(10月23日(金)全国ロードショー)(©「きみの瞳が問いかけている」製作委員会)(© Gaga Corporation/AMUSE Inc./ Lawson Entertainment,Inc.)(配給ギャガ)

東   はい、めちゃくちゃ泣ける感動作です。私が今月ご紹介するのは、10月23日から公開する『きみの瞳が問いかけている』という映画です。これは2011年の韓国映画『ただ君だけ』、こちらも名作なんですけど、こちらを原案にした作品です。
29歳の明香里は思いがけない事故で視力と家族を失ってしまいますが、それでも明るく過ごしていました。ある日そんな彼女が、管理人と間違えて塁という青年に話し掛けたのをきっかけに、親しくなる二人。
キックボクサーだった塁は、ある事件をきっかけに心を閉ざしているが、笑顔を向けてくれる明香里は大事な存在にいつしかなっていきます。やがて自分の過去が彼女の失明と関係していたことを知った彼は、高額な手術代を稼ごうと賭博試合のリングに立つことを決意します…。

というお話です。演じているのが、吉高由里子さんと横浜流星さん。この二人の純愛ものなんですけど、久しぶりにものすごく超王道の恋愛映画だと思ったんですよ。日本の恋愛映画って、いわゆるキラキラ系、学園ものの美男美女で織りなされている作品がちょっと増えがちになっていたと思っていたんですけど、これはあくまでアラサーとか、私や由真さんが胸キュンしちゃうような、大人向けになっていて…本当に大人の純愛という言葉が等しくて。
私の体感的にはオー・ヘンリーの小説で、『賢者の贈りもの』という、クリスマスにプレゼント交換するお話。金の懐中時計につけるプラチナの鎖を奥さんが買ってあげて、奥さんの美しい髪の毛のために(旦那さんが)鼈甲の櫛をプレゼントするお話。そんな感じの清らかな二人が出てくるんですよ。お互いに出来るもの、愛を交換し合って愛が深まってく様子、本当に清らかな映画で、久々にここまで王道の日本映画の純愛を見たなという感じになったんですよ。で、泣いちゃったんですけど…由真さん、どうでした?

上地  ああもう、それぐらいずっと泣いて、それくらい感動して。次々に運命のいたずら?っていうんですか…。

東    刺客のようにね…そう、いたずらが。

上地   そう。本当にお願いだから、二人とも幸せになって!と最後まで祈るような思いでずっと見ていました。

東    自分の優しい心に出会えるんですよね、祈り続けているとね。

上地    そう。もうお願い、やめてあげて…って。

東     本当に胸キュンなシーンが多かったじゃないですか。由真さん、どこのシーン好きでした?

上地    いっぱいあるけど・・・長い階段おんぶして、上がったところ!

東     わかる!失明しているのにも関わらず、明香里が住む家がもなんとも不便で…。なんでこんな階段が・・・というところに住んでるんですよね。

上地    (明香里が)絶対後悔するよ!絶対後悔するよ!と言って、そしてやっぱりすごい階段が待ってて。おんぶして、それを上がる、っていうね。

東     横浜流星さんが背負って上がるシーンですよね。

上地    あと、ひざまくらのシーンとかも可愛かったな~。

東     可愛いですよね~。私、今回この番組のために、カメラマンが友人なので聞いてきたんですよ。オススメの一番こだわったシーンを。プレスとかにも出てないです。聞いてきたら、やっぱりキスシーンだったらしいです。ハリウッドではよく使われているのですけど、ヴィンテージレンズというものを使っているおかげで、淡いんですよ、キスシーンが。お互いの顔触れ合ってのキスシーン。あそこが本当にこだわって撮ったとカメラマンさんも言っていたので、由真さんが言ったシーンも素敵ですし、いろんな良いシーンがいっぱいあるから、胸キュンの写真集みたいになっているんですよね。
いろんなシーンを見つけてみていただければと思います。荒木さん、見ました?

荒木    見ました、もちろん。横浜流星君、10kgも増量してね。キックボクシングのシーンが本当に迫力満点でしたよね。

東     彼は実際にどうしても格闘家の役を昔からやりたかったらしいんですよ。本当に格闘技の実績があるとうかがったのですけど、中三の時に世界大会で優勝しているらしいのです。世界大会で優勝?!とびっくりしたんですよ。そこまでの実力者が初めて演る格闘の作品ということで、三木さんも相当攻めた画角で撮っているので、非常に格好良かったですよね。

荒木    吉高さんも、女優さんとしては意外に恋愛映画、ないのね?

東     2012年の『僕等がいた』以来、恋愛映画は演ってなかったんですよね。

荒木    この映画で恋愛映画の代表作になるのじゃないかと思いますね。あと盛り込まれているのが恋愛、盲目、格闘技、裏社会とか、それだけでお腹いっぱいになりそうですけど、監督の力量があるから、上手くバランスを作ってくれて見やすく、涙いっぱい出るし。あとさっき東さんも言いましたけど、『街の灯』というチャップリンの戦前の映画をベースにしているんですよ。知らない人はそのまま楽しめばいいのですが、知っている人はだいたい筋がわかっちゃうんですよね。だけどそういう人も楽しめるのは、いろんな伏線が多いの。例えば花の香りだとか、いつも口ずさんでいる歌とか。そういうものが伏線でわかりやすく出てきますので。推理小説みたいに、これは最後でどういう風にいかせるのだろう・・・そういう見方というのも映画の楽しみの一つですから。『街の灯』がわかっている人でも十分楽しめますので、見に行っていただくといいなと思います。

東     本当に久しぶりの王道なので、ぜひ映画館で涙を流していただければと思います。というわけで私、東紗友美がご紹介したのは、10月23日から公開の『きみの瞳が問いかけている』でした。

上地    今日は映画特集回!「今月のシネマログ」をお送りしています。続いては映画評論家の荒木久文さんのオススメ作品です。

10月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
「みをつくし料理帖」(10月16日(金)全国公開)(配給:東映)(©2020 映画「みおつくし料理帖」製作委員会)

荒木    私のご紹介する作品は10月16日から公開の『みをつくし料理帖』です。 享和二年(1802年)、あと60年ぐらいで明治になる江戸時代末、舞台は大坂。
八歳の澪と野江という女の子たちは、まるで姉妹のように仲のいい幼なじみでした。この年の夏に大坂が大雨に襲われます。洪水が起こって多くの人々が犠牲になり、美緒は両親を亡くして天涯孤独の身になります。さらに、野江とは生き別れになってしまいます。
それから10年後、18歳になった澪は江戸に流れてきていました。
そして神田にある「つる家」という蕎麦屋の店主に助けられ、その店で彼女が持っていた天性の料理の才能を見出され、当時女性は少ない調理場に入ることを許され、料理人としての人生が始まります。
はじめは上方と江戸の味の違いから、当初、澪の作る料理は評判が良くなかったのですが、苦労を重ねながらも店の看板料理を次々と生み出し、いろんな悲しみを乗り越えながら、「つる家」を評判の店へと発展させ、その味が江戸中の評判になっていました。
そんな頃、遊郭吉原から又次という男がつる家にやってきます。又次は、吉原のトップの花魁「あさひ太夫」のために澪の看板料理を作ってほしいと申し出るのでした…。

江戸の料理人として働くひとりの女性の苦悩や試練、生き別れた幼なじみとの不変の友情を描いたものです。主演は今引っ張りだこで人気の松本穂香さん、幼なじみ役には奈緒さん。その他のキャストも超豪華です。監督は角川映画で一世を風靡した角川春樹さん。 自らこの監督をして、これで最後だとおっしゃっているんですね。78歳。映画の中でも料理を食べに来る役でちょっと出ていますよ。白髪のお侍さん。

上地・東  わからなかった…!

荒木    角川監督は昔の大プロデューサーですから、「俺の最後の作品なんだから、みんな出ろ!」と大号令したのでしょうね。いっぱい出ていますね~。すごい俳優さん。石坂浩二さん、反町隆史、松山ケンイチ、薬師丸ひろ子、浅野温子…いっぱい出ていますよ。 個人的に私は三人娘の原田知世さんがいないのが残念ですけどね…。まあ、それはいいとして…。原作の『みをつくし料理帖』は高田郁さんの時代劇小説です。10巻まで出ていて、400万部も出ているらしいですね。本当に丁寧な時代考証があって、親と子の情とか、心の機微、細かい部分を描くことで有名な作家ですよね。

由真さん、見ていただきましたよね。どうでした?

上地    とにかく二人の友情がね。離れていても、思い合うというか。友情というか、愛というか…なんだろうな…家族を超えているというか。

荒木    本当に二人の美しい友情でしたよね。お料理なんかもたくさん出てきたでしょ。

由真    美味しそうだった~。牡蛎料理とか…。

荒木    牡蛎の味噌仕立てとか、牡蛎の宝船とかも出ていますね。あとは卵を使ったとろとろ茶碗蒸し。それと黄身の味噌漬けらしいですけど、鼈甲珠。
今、我々はいろんな国の料理を食べられるし、たくさん美味しいものを食べていると思うのだけど、もしかしたら、ああいったストレートで粗削りな料理を食べていた江戸の人たちの方が本当に幸せだったのかもしれませんね。和食で言えば、新鮮で…。

東     シンプルだけど美味しそうなものがいっぱい出てくるんですよね。

荒木    料理映画って、たくさんありますよね、昔から。『幸せのレシピ』とか、『ディナーラッシュ』とかあるんですけど、この映画って料理時代劇なんですよね。『武士の献立』というのが二、三年前にあって、楽しかったのですけど。そういう意味では珍しい映画ではあるんです。料理と友情という二つのテーマで展開される映画なのですが、料理にかこつけてみると、女の子の友情というのがちょっと隠し味に効いているな…という感じだね。
豪華俳優さんたちが、まるで和食のフルコースのように、椀物とか、焼物とか。懐石コースみたいに出てくるじゃないですか。

上地    作品自体がフルコースになっているんですね!

荒木    最後の超豪華デザートもあるんですよ。ユーミンが作って、手島葵が歌うテーマ音楽!

上地    良かったんですよ、またこの歌がね~。

荒木    和食のフルコースを楽しむような形で、映画を楽しむといいのかもしれませんね。10月16日公開の『みをつくし料理帖』という作品でした!

上地    「今月のシネマログ」、トリは私、上地由真のおすすめ作品をご紹介します。 私がご紹介するのは10月9日公開『82年生まれ キム・ジヨン』です。

「82年生まれ、キム・ジヨン」と「本気のしるし」のとっておき情報
「82年生まれ、キム・ジヨン」(公開中)(©2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.)(配給:クロックワークス)

タイトルの通り、主役は1982年生まれ、30代半ばの女性 キム・ジヨンという女性です。ジヨンという名前は韓国ではとても一般的で、「どこにでもいる普通の女性」の象徴でもあるようです。常に子供の母であり夫デ・ヒョンの妻であるジヨンは、時々 閉じ込められているような感覚に陥ることがありました。そんな彼女を夫は心配しますが、ジヨン自身は「ちょっと疲れているだけよ」と軽く受け流します。
しかし夫は最近、妻ジヨンが時々、まるで他人が乗り移ったような言動をとることに気づいて、事態を深刻に受け止めていました。
ある日彼女は夫の実家で、自身の母親が乗り移ったようになり、「正月くらいジヨンを私の元に帰してくださいよ」と姑に対し文句を言い始めます。
またある日はもう死んでしまっている夫と共通の友人になって、夫に「ジヨンは体が楽になっても気持ちが焦る時期よ。お疲れ様って言ってあげて」とアドバイスをします。
ある日は祖母になって「ジヨンは大丈夫。お前が強い娘に育てただろう」と母親に語りかけるのです。
その時の記憶はすっぽりと抜け落ちているんですね。
そんな妻、キム・ジヨンに、夫デ・ヒョンは傷つけるのが怖くて本当のことを言えずに、ひとりで精神科医に相談に行きますが…。

というお話です。映画の中では、女性としての生きづらさがいろんなところで、描かれていて、私のお母さんがこんな感じだったんじゃないのかな…という風に思う部分もあって。 韓国は男性優位の社会で、結婚したら妻、母親として家を守るという考えが本当に根強くあって、まだまだ日本よりも厳しい部分があるのだなと感じました。

東     いや本当にね、私は途中からずっと泣いちゃって普通に見れなかったんです。私も、もうすぐ二歳になる子供がいて、キム・ジヨンさんと同じように、ある時はお母さんの娘だし、ある時は母親だし、ある時は社会で働く女性だし、休む間もなく続いていくあの感じ。それにここまでリアルに描いてくれて、だからこそ本当に共感出来るし。
これをいろんな方に見てほしい。正直やっぱり男性に見てもらいたいと思ったんですよね。 でも女性の生きづらさを描いているんですけど、同時にきっと男性にも生きづらさ、例えば出世しなければならない、生きづらさがあるんじゃないかなと。
お互いがまずは、生きづらさや大変さを知ることから。知っているつもりでも、実際の意味では大変だよね、くらいしか思えてないところの、さらに一歩先に行ける作品だったので、本当に社会的に意味のある作品になっているなと思った。
いろんな人にそれぞれの生きづらさがあるのだろうな…と響いてね。私、逆にこの作品を解説出来ないなと思っちゃった。苦しくなり過ぎちゃってね。

東     荒木さんどうですか?

荒木    私はですね、男としてはやっぱり身につまされる部分があるんですね。自分の経験で恐縮なんですけど、奥さんが仕事持っていて、仕事続けながら子供育ててたわけですよ。男としては本当に協力したつもりではいたんだけど、結局三十年経っても、かみさん、「あの時はワンオペでね、あんたは仕事のペース全然変えなかった」とかね、しょっちゅう恨み言、言われているんですよ。それで、「あの時の辛さをあんたは全然わかってない」と、何かある度に思い出してね。思い出し怒りっていうの?ああいうの?どうなの?思い出し笑いっていうのはあるけど…思い出し怒りばっかりされてね。

上地・東  アハハハ…!

荒木    この映画ね、男でも葛藤があると思いますよ。日本人の男性として。ジェンダーギャップという数値化された男と女の男女格差をどれくらい多いかと示すランクで言えば、韓国の方がまだ上なんですね。

上地・東  えっ…!日本よりも?

荒木    うん、日本より。日本は153ヶ国中121位ぐらいなんですよ。だから男女格差って、本当は数値化すると、やっぱり日本の方が厳しいよね。

上地・東  そうなんだ…。

荒木    そういう意味で、韓国の平均的な女性、キム・ジヨンという名前、タイトルもいいですよね。キムというのは朝鮮最大の性ですよね。韓国の二割の人がキムだものね。ジヨンという名前は70年代から80年代前半まで、女の子の名前ランキングの1位なんですね。だから当時はクラスに1人はキム・ジヨンがいたということになります。

東     そのくらい万人の悩みという意味合いを付けたという…。

荒木    そういうこと。本当に社会性があり、面白い。本もベストセラーになって。当時韓国では男性からバッシングがあったそうですけどね。

東     それこそ狙いなんですよね。それくらい君たちは非協力的だったんだよ、というところだったのですからね。

荒木    まあそういう意味で、逆説的にも面白いね。

上地    私、上地由真のオススメ作品は、10月9日公開『82年生まれ キム・ジヨン』でした。10月公開の映画作品の中から、それぞれの押しを紹介しました。 ぜひ映画館でチェックしてくださいね。

以上、「今月のシネマログ」でした! 映画評論家の荒木久文さん、映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。

■上地 由真

オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。

■東 紗友美

映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。

■荒木 久文

   現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員  日本映画ペンクラブ会員