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「燃ゆる女の肖像」女流画家と貴族の娘の燃えるような珠玉のラブロマンス

(2020年12月6日13:50)

「燃ゆる女の肖像」女流画家と貴族の娘の燃えるような珠玉のラブロマンス
「燃ゆる女の肖像」(©Lilies Films.)( 12月4日(金) TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開)

2019年の第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞と、女性監督としては初めてクィア・パルム賞(LGBTやクィアをテーマにした映画に与えられる賞)を受賞したセリーヌ・シアマ監督の珠玉のラブロマンス映画。フランスの若手女優ノエミ・メルランとアデル・エネルの共演で、女流画家とそのモデルになる貴族の娘の燃えるようなつかの間のラブロマンスを描いている。

■ストーリー

18世紀のフランスのブルターニュの孤島が舞台。画家のマリアンヌ(ノエミ・メルラン)は、ブルターニュの伯爵夫人(ヴァレリア・ゴリノ)から孤島の屋敷に招かれ、娘のエロイーズ(アデル・エネル)の見合用の肖像画を描くことを依頼される。エロイーズは姉が自殺したため修道院から呼び出されて結婚させられようとしていたが、結婚を拒んでいた。マリアンヌとなかなか打ち解けなかったため、マリアンヌは海岸を散歩する彼女に同行し話をしながらひそかに彼女を観察して絵を完成させるが、エロイーズに否定されてしまう。マリアンヌは描き直すことを決断し、エロイーズも積極的にモデルになりポーズをとるようになる。伯爵夫人が「5日後に戻ってくるのでそれまでに完成させるよう」と島を離れ、家政婦(ルアナ・バイラミ)が世話をする中、2人は肖像画に取り掛かる。マリアンヌは画家の観察眼でエロイーズを見ていたが次第に惹かれてゆき、やがて2人は結ばれるが、肖像画が完成し転機が待ち受ける。

■みどころ

本作でフランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の主演女優賞にノミネートされたノエミ・メルラン(32)と、「スザンヌ」(2013年)でセザール賞助演女優賞、「ミリタリーな彼女」(14年)で同主演女優賞を受賞したフランス映画界を代表する女優の一人のアデル・エネル(31)が、繊細に大胆にそして美しく、反発しやがて惹かれあってゆくまでの緊迫したやりとりや、結ばれて愛を燃やす姿を演じている。2人の圧倒的な存在感がスクリーンにはじける。また映像はワンカットワンカットが絵画のように美しい。写真がなかった当時は上流階級で見合のための肖像画が流行していたというが、男性の肖像画はなく女性は相手を知らないまま結婚する制度への反発、また家政婦の堕胎のシーンや、当時は禁断だったなかでの迸る同性愛などのテーマ性も含めて女流監督セリーヌ・シアマ(脚本・監督)が濃密に描いている。カナダの若き天才グザヴィエ・ドラン監督が「こんなにも繊細な作品は見たことがない」と絶賛し、オスカー女優のシャーリーズ・セロンが「この映画を本当に愛しています。4回観ました」と告白したという国際的に反響を呼んだ作品。(2020年12月4日公開)