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「ファーザー」アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞の認知症演技

(2021年5月14日22:30)

「ファーザー」アンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞の“認知症演技”
「ファーザー」(絶賛公開中)(© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020)

第93回アカデミー賞で最有力候補といわれていた「マ・レイニーのブラックボトム」のチャドウィック・ボーズマンさんを抑えて主演男優賞を獲得したアンソニー・ホプキンスの主演作。「羊たちの沈黙」(1991年)以来30年目で2度目、83歳で史上最高齢での主演男優賞受賞の記録も作った。老いによって記憶を失ってゆくホプキンス演じる父親と、「女王陛下のお気に入り」(2018年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマン演じる娘の葛藤と苦闘のドラマ。監督は本作が長編映画初監督となるフロリアン・ゼレールで、自身が2012年に発表した戯曲「Le Père 父」を映画化した。この演劇は世界でヒットして日本でも橋爪功が主演した。映画は第93回アカデミー賞で作品賞、コールマンの助演女優賞など6部門にノミネートされて、ホプキンスの主演男優賞と脚色賞を受賞した。

■ストーリー

ロンドンで一人暮らしをしている81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は記憶が薄れ始めて認知症の兆しを見せ始め、心配する娘のアン(オリヴィア・コールマン)が面倒を見ていた。だが、彼女に恋人ができてパリで一緒に暮らすことになったため、週末にきて面倒を見るがその間は介護人に世話をしてもらおうとしていた。しかし、アンソニーは手配した介護人を拒否して、この家は誰にも渡さないなどといって健常ぶりをうそぶいていた。そうしたなか、見知らぬ男が家にいてアンと結婚して10年以上になると語ったり、その男が腕にはめている腕時計が自分のものとそっくりで盗んだのではと疑い始めて苛立って急に激高したりするようになる。さらにはもう一人の最愛の娘ルーシーはどこに消えたのかわからなくなり、次第に現実と幻想の境界があいまいになって崩壊してゆく。アンの恋人は病気なのだから老人ホームに入れるのが一番いいと言い出しアンは悩むが気力と体力が消耗してゆく。崩れてゆく父親と懸命に支える娘の葛藤と苦悩のその先にある答えが待ち受ける。

■見どころ

名優ホプキンスが、次第に記憶を失ってゆく様子を熱演し、認知症になってゆく迫真の演技を見せている。認知症の父親の視点から描くという斬新な表現も注目された。どれが現実でどのシーンがアンソニーの幻想なのかと観客も認知症の混乱を体験し、最後に真実が明かされるという展開も見どころになっている。ホプキンスの熟練の演技で認知症がリアルに描かれることで身につまされ、結末に胸に迫るものを感じさせられる。
ホプキンスは、アカデミー賞授賞式の最後に主演男優賞が発表されたとき、会場にいなかっただけでなくほかの候補者のようにリモートで自宅から参加することもなく、地元の英国ウェールズの田園地帯でぐっすりと眠っていたという。ホプキンスは翌朝、ウェールズの野原からインスタグラムに動画のメッセージを投稿し、受賞した驚きを表明するとともに、亡くなった主演男優賞の候補者の1人だったボーズマンさんに敬意を払った。

「おはようございます。私は故郷のウェールズにいます…83歳にしてこれを手にするとは思ってもみませんでした」と、ホプキンスはアカデミー賞史上最高齢で主演男優賞を受賞しことを驚き「あまりにも早くこの世を去ってしまったチャドウィック・ボーズマンに敬意を表したいと思います」と述べた。
(2021年5月14日より全国公開)