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「復讐者たち」ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちの復讐計画を描いた実録映画

(2021年7月29日21:30)

「復讐者たち」ホロコーストを生き延びたユダヤ人たちの復讐計画を描いた実録映画
「復讐者たち」(東京・新宿の新宿武蔵野館)

ナチスによるユダヤ人大虐殺(ホロコースト)を生き延びたユダヤ人の主人公がナチスの残党を密かに処刑するユダヤ旅団に参加して活動するうちに、より過激な復讐活動を行っていたユダヤ人組織”ナカム“によるドイツ国民600万人を標的にした復讐計画「プランA」が進行していること突き止め阻止しようとする実話を描いたサスペンス。ドロン・パズ、ヨアウ・パズの兄弟が実際に復讐計画に関わった生存者を取材して脚本・監督を担当。主人公のマックスにタランティーノ監督の「イングロリアス・バスターズ」(2009年)のナチス高官役や、テレンス・マリック監督の「名もなき生涯」(2019年)で、第2次世界大戦時のオーストリアで、ヒトラーへの忠誠を拒否して信念に生きた実在の農夫役を演じたアウグスト・ディ―ル。マックスと心を通わせるユダ人組織のメンバー、アンナに「ブレードランナー 2049」「蜘蛛の巣を払う女」のシルヴィア・フークスなどのキャスト。

■ストーリー

1945年、ユダヤ人のマックス(アウグスト・ディ―ル)は収容所で離ればなれになった妻子がナチスに殺害されたことを知り復讐に燃え、ナチス残党を密かに処刑しているユダヤ人旅団の兵士ミハエル(マイケル・アローニ)に頼み込んで部隊に参加する。そうしたなか、より過激な報復活動をしていたユダヤ人組織“ナカム“を危険視するミハエルからナカムに潜入して監視する任務を頼まれる。ナカムに取り入って信頼を得たマックスは、彼らが極秘に進めていた”プランA”と呼ばれる復讐計画をキャッチする。それはナチスの残党だけではなくドイツ国民600万人を標的にした驚くべき復讐計画だった。組織のアンナ(シルヴィア・フークス)と親しくなっていたマックスは、復讐のためにその計画に参加すべきか揺れ動く。

■見どころ

ホロコーストといえば、東京五輪開閉会式ディレクターを担当する演出家の小林賢太郎氏が、過去のお笑いコンビ、ラーメンズ時代に、ホロコーストをネタにして揶揄したとして米人権団体が抗議声明を発表したのを受けて、22日にディレクターを解任される騒動があったが、奇しくもその翌日の23日の公開となった。そのホロコーストを生き延びたユダヤ人たちをめぐるドラマを描いた作品であり、改めてナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺について考えさせられる映画だ。ナチスにより収容所に入れられたユダヤ人が裸にされてガス室に送られ殺害されその死体が無造作に積み上げられるなどの凄惨なシーンは実際の映像も残っており、アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚色賞など7部門を受賞したスピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」(1993年)など何度も映画になっている。「復讐者たち」はホロコーストそのものを中心に描く作品ではないが、ナチス・ドイツが連合国軍に敗れて第二次世界大戦が終戦になった直後に、一部の過激なユダヤ人の組織「NAKAM」がドイツに仕掛けようとした復讐計画をめぐるドラマは実話に基づいているというだけあって、リアルで緊迫した展開が続く。フランスのファッション雑誌「Gala」から「今日における最も重要なドイツの俳優」と評されたアウグスト・ディールが妻子をナチスに殺害され復讐に燃えるユダヤ人の主人公マックスを熱演している。そしてマックスたちにとって連合軍の勝利と敗軍の将ヒトラーの死は新たな報復の戦争の始まりになったという過酷な歴史の闇が描かれている。
(2021年7月23日より、新宿武蔵野館などで全国公開)