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「ドライブ・マイ・カー」西島秀俊、岡田将生らが熱演のカンヌ4冠文芸映画

(2021年8月22日11:15)

「ドライブ・マイ・カー」西島秀俊、岡田将生らが熱演のカンヌ4冠文芸映画
「ドライブ・マイ・カー」(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

村上春樹の同名短編小説を原作に、西島秀俊、三浦透子、霧島れいか、岡田将生らのキャストで、ベルリン国際映画祭で「偶然と想像」が銀熊賞を受賞、共同脚本の「スパイの妻」がヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞するなど国際的に高い評価を得ている濱口竜介監督が脚本・監督を務めて映画化した。第74回カンヌ国際映画祭で日本映画として史上初の脚本賞(濱口監督と大江崇充氏)を受賞したほか、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュニカル審査員賞を受賞し4冠を達成した文芸映画の話題作。

■ストーリー

俳優で演出家の家福(西島秀俊)は、愛する妻の音(三浦透子)と満ち足りた生活を送っていた。ベッドを共にしたときに音は芝居のシーンを描写するような言葉をささやき、それを家福が脚本にしたりしていた。そして家福は長年の愛車スウェ―デンの名車サーブを運転して仕事場に通う道すがら、テープに吹き込んだ音のセリフを聞きながら自分のセリフを言いセリフを体に入れていた。だがある日、音が男と部屋で浮気をしている現場に遭遇。知られないようにして家を出る。そうしたなか、音は秘密を残したまま脳出血で倒れ急死してしまう。
2年後、広島での演劇祭でチェーホフの「ワーニャ叔父さん」の演出を担当することになり、愛車で広島に向かう。現地では専属ドライバーに運転させるよういわれ、過去を抱える寡黙な女性ドライバーのみさき(霧島れいか)を紹介され、みさきの運転でホテルと仕事場を往復する毎日が始まる。さらに、かつて音から紹介された若い役者・高槻(岡田将生)がオーディションに応募しているのを知りキャスティングする。高津と音の関係が気になっていた。
やがて家福は自分が知らない音の話を高槻から聞かされ、さらにはみさきと心を通わせるようになり、それまで目を背けてきたことに気付かされ、最愛の妻を失った悲しみと葛藤と向き合うようになり、ドラマはドラスティックに展開してゆく。

■みどころ

カンヌ国際映画祭の脚本賞を受賞した本作のシナリオは、妻が抱えていた秘密を聞けないまま突然最愛の妻を失い葛藤する主人公の心や思考などを印象的なセリフでつづりながら、繊細に鮮烈に人間関係を描いてゆき、斬新な映像とともに西島がそれを緻密にしたたかに演じて圧倒的な存在感を見せている。三浦透子は妖艶にミステリアスに妻の音を演じて濃密な印象を残す。さらには家福に心を開かせるドライバーのみさき役の霧島れいかが寡黙だが内に秘めた芯の強い女性像を好演している。そして想いを寄せていた音を失い、家福と音の話をしようする若い俳優を岡田が熱演している。みさきが運転する車の中で感情をほとばしらせて家福に延々と音のことを話すシーンは、映画のクライマックスに向けた入口になるシーンとして緊迫感にあふれスクリーンに引き込まれる。そして家福らが広島で上演するチェーホフの名作「ワーニャ叔父さん」の舞台のシーンを挿入しながら、家福、みさき、高槻のそれぞれの想いや感情が複雑に絡み合ってクライマックスに向かう。
(2021年8月20日全国ロードショー)