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「Summer of 85」甘美で切ないひと夏の少年の恋と数奇な結末

(2021年8月29日11:50)

「Summer of 85」甘美で切ないひと夏の少年の恋と数奇な結末
「Summer of 85」(東京・渋谷区のBunkamura ル・シネマ)

「8人の女たち」(2002年)、「17歳」(2013年)、第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」(2019年)などで知られるフランス映画界の巨匠フランソワ・オゾンが、17歳のときに深く影響を受け映画製作の原点になったといわれるエイダン・チェンバーズの小説「Dance on my Grave」(おれの墓で踊れ)を映画化した作品。運命的な出会いをした2人の少年の切なくも美しいひと夏の恋と永遠の別れを、オーデイションで選ばれたフェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザンが熱演している。2020年カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選ばれたたほかフランスのアカデミー賞といわれる第46回セザール賞で11部門に12ノミネートされた。

■ストーリー

1985年夏、フランス・ノルマンディーの海で友人に借りたヨットに乗ってセーリングを楽しんでいた16歳のシャイな高校生アレックス(フェリックス・ルフェーヴル)は、嵐に見舞われヨットが転覆し、あわやのところでヨットで近くを通りかかった18歳のダヴィド(バンジャマン・ヴォワザン)に助けられる。運命の出会いに2人は急速に惹かれあい愛し合うようになる。アレックスにとっては初恋だった。2人はクラブで踊り、遊園地でジェットコースターに乗るなどデートを重ね愛を深め、ダヴィッドの提案で「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てる。
そうしたなか、ダヴィドはアレックスに当てつけるように目の前で美少女のケイト(フィリッピーヌ・ヴェルジュ)をヨットに乗ろうと誘って2人で行ってしまい、アレックスは嫉妬に狂う。ダヴィドはそんなアレックスの一途な恋心を重く感じるようになる。そしてアレックスがバイトをしているダヴィドの母親が経営する船具店でついに2人は激しく口論になり、店を飛び出したアレックスを自転車で追いかけたデヴィドは交通事故で死亡してしまう。生きる希望を失ったアレックスはダヴィドと交わした誓いを思い出すーー。

■見どころ

ノルマンディーにある海沿いのル・トレポールの美しい街や海を舞台にアレックスとダヴィドが繰り広げるラブストーリーは、美しくも悲しいひと夏の濃密な恋物語として胸を打つ。恋に恋するように身を焦がしダヴィドに向かっていくアレックス。そんなアレックスの恋心をダヴィドが重いと感じて少女を誘うことから2人の恋に亀裂が入り、ダヴィドが事故死するという衝撃的な2人の短くも濃密なラブストーリーを運、オーデイションで選ばれたフェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザンが瑞々しく繊細に演じている。フランス全土を震撼させた神父による児童への性的虐待事件「プレナ神父事件」を映画化した社会派映画の前作「グレース・オブ・ゴッド 告発の時」とは対照的に、少年の恋物語を瑞々しく描いたスタンダードな恋愛映画といった趣の作品になっている。
オープニングにはTHE CUREの代表曲「In Between Days」が流れ、1972年のサザーランド・ブラザーズの1972年の曲をロッド・スチュワートがカバーして大ヒットした1975年の「セイリング」(Sailing)など往年のヒットソングが映画を彩っている。
(2021年8月20日から全国公開中)