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映 画
「奇想天外映画祭」「ムーンライト・シャドウ」「MIRRORLIAR FILMS Season1」のとっておき情報
(2021年9月19日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が、「奇想天外映画祭」「ムーンライト・シャドウ」「MIRRORLIAR FILMS Season1」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、9月13日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さん よろしくお願いします。
荒木 はい、今日はまず、映画イベントのお知らせです。
今回ご紹介するのは、ちょっとコアなファン向けかもしれませんね。
タイトルが 『奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival Vol.3』
というイベントです。現在 東京・新宿のK's Cinemaで開催されています。
鈴木 タイトルだけでわかりますね。
荒木 この映画祭は、映画の歴史における「怪作」(あやしい作品)「珍作」(珍しい)「奇作」(奇妙の奇です。)そして「迷作」(こっちは迷う方の「めいさく」)そして、「異作」(異なる作品と書いて異作ね。) そういうものを選んで、紹介するという、『奇想天外映画祭』。まあ、びっくり仰天映画祭とでもいうのか、業界用語だと「くりびつてんぎょう」ですか…今回は開催3回目となるようなのですが、今回の目玉作品は日本初公開となる、吸血鬼映画「赤い唇」という作品です。1952年のベルギー映画です。
この作品はハリー・クメールというヨーロッパでは幻想映画の巨匠と呼ばれる人が監督したものです。ストーリーは、ベルギーのオステンドという、港町のホテルに宿泊した新婚夫婦が、謎めいた美しい伯爵夫人との出会いをきっかけに、禁断の闇の世界へと引き込まれていく…というものです。
この作品 独特のエロティシズムと、もう 退廃的な雰囲気と耽美的と言ったらいいんでしょうかね。妖しい怖さもあります。中心になる伯爵夫人の白い肌と金髪とそして血のような赤い唇のコントラストが美しくもあり、怖くもありの、なんとも怪しい作品です。
ほかにもタイトルだけご紹介すると…サイコスリラー『赤い影』、カルトホラー『恐怖の足跡』、映画史上初めて「幽霊」を登場させたとされる『呪いの家』、アンコール上映となる『ウィッカーマン final cut』の12作品がラインナップしています。みんな1940年代から70年くらいまでの作品です。
正直 わたしもこういった作品は、ほとんど見ていません。まあ、よっぽど好きな人じゃないと見ている人少ないでしょうね。
今回 私もマルセル・レルビエが監督したトーキー創世記のミステリー『黄色の部屋』という作品はぜひ見たいと思っています。これは密室トリックの元祖と言われている作品なんですよ。非常に興味があります。
『奇想天外映画祭 Bizarre Film Festival Vol.3』というイベント、現在展開中です。
24日まで新宿のK's Cinema。興味をそそられた方は、ぜひ、どうぞー。ダイちゃんもね、ゾンビはいないけど吸血鬼ですよ。
鈴木 吸血鬼そのものがエロですよね。血を吸うなんて言うのはね。
荒木 そうですね。次は「ムーンライト・シャドウ」という作品 月影とかそういう意味でしょうか?現在公開中の作品です。原作が吉本ばななの「キッチン」に収録された短編小説。初期の名作です。ラブストーリーです。
ヒロインはさつきさん 小松奈々さんが演じています。彼女が等君という男性、これは宮沢氷魚くんが演じていますが、「鈴」がきっかけで2人はつき合い始めました。
等には3歳年下の弟がいて、彼には恋人がいました。
この4人はとっても気が合い、時間を共に過ごすことが多くなります。
しかし ある日さつきの恋人の等くんと 弟の恋人が交通事故に巻き込まれ死んでしまいます。突然の別れに打ちのめされ、悲しみに暮れるさつきと弟君。
そんな時 さつきは死んだ弟の恋人が以前言っていた「満月の夜の終わりに死者ともう一度会えるかもしれない」という不思議な現象「月影現象」を思い出します…。
正直言うとあまり 一生懸命見ていると、訳が分からなくなってしましますので、この映画は見るというより感じてください。理屈で見るとだめでしょうね。なんとなくぼんやり観るのがいい感じとおもいます。
映像がキレイだけど、抽象的な表現が多く、雰囲気を楽しむ感じでいいと思います。
もともと現実なのか夢なのかよくわからないようなふわふわした感じが、吉本ばななさんの小説はそれっぽいって言われますからね。
ダイちゃんはこの人の小説は読んだこと、ありますか?
鈴木 ありますよ。大学の確か先輩ですよ。
荒木 そうですか。実は私ですが、恥ずかしながら、私はこの人の小説、「キッチン」はじめ、著作は読んでいません。お父さんの吉本隆明を読んだ世代ですからですが『言語にとって美とはなにか』とか、『共同幻想論』とか。難しくてわかんないのが圧倒的に多かったですけど…。最後よけいな話になってしましましたが…。
「ムーンライト・シャドウ」という9月10日から公開中の作品です。
最後です。「MIRRORLIAR FILMS Season1」(ミラーライアーフィルムズ シーズンワン)。
9月17日から公開です。ミラーライアーというのは、2017年に伊藤主税(and pictures)、俳優の阿部進之介、山田孝之たちがプロデューサーを務めスタートした、短編映画の制作プロジェクトです。
俳優・監督・漫画家など総勢36名が、監督として「変化」をテーマの短編映画を作るというシステムで、4シーズンに分けて公開する「MIRRORLIAR FILMS」の今回は第1弾というわけです。
今回は9本のショート、独立した短編作品で構成されています。
主な監督と作品を紹介すると、写真家としても活躍する俳優の安藤政信が山田孝之、森川葵をキャストに迎えてメガホンをとった「さくら、」「百円の恋」の武正晴監督が友近と渡辺大知の共演で描く「暴れる、女」。 女優・モデルの三吉彩花さんが初メガホンをとった「inside you」、「苦役列車」の山下敦弘監督による「無事なる三匹プラスワン コロナ死闘篇」、など9本です。
鈴木 結構な本数ですね。
荒木 この企画は、監督を本業とする人、俳優、新人までが顔を揃える短編映画プロジェクト。だから、はっきり言っていろいろ、バラバラです。
鈴木 節操ない感じですか?
荒木 そうですね。でも全編通して何かエネルギーを感じます。どれも意欲的な作品群と言っていいと思います。
個人的には 武正晴監督の、お笑いの友近さんが刑務所から出所したばかりのとても凶暴なやくざみたいな女を突き抜けるような感じで演じた「暴れる、女」が、とてもショッキングで面白かったですよ。
鈴木 あはは似合っている感じですよね。
荒木 やたらに殴るし、男にのしかかるし、素じゃないのかと思うほど生き生きと演じていました。「MIRRORLIAR FILMS Season1」(ミラーライアーフィルムス シーズンワン) 9月17日から全国順次公開中。これからも注目です。
鈴木 荒木さん、プライベートというか、個人的な好みをお伺いしたいのですが
大きなお金をかけた世界中で大ヒットするような、ハリウッド的大作とこんなの見るやつがいるのかよ というぐらいの中小作品とでは、どちらが好みですか?
荒木 僕はね、小さければ小さいほど好きですね。
鈴木 えー?
荒木 大作ももちろん嫌いじゃないんですけど、個人的には当たりはずれはありますが小さい映画のほうでしょうね。自分の感性にぴったりというのがたまにあるので、やめられないですよね。
鈴木 出会いがたまらないのですかね?
荒木 そうですね、10本に1本 いやー、20-30本に1本かな?年に何本かそういう映画、自分だけの映画みたいのがありますからやめられないですよね。歓びですよね。
皆さんにもそういう作品があるといいですね。
鈴木 わかりました。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。