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映 画
報知映画賞のとっておき情報
(2021年12月12日13:00)
映画評論家・荒木久文氏が、報知映画賞のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、12月6日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー NEO」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 荒木さん、今日もお願いいたします。
荒木 はい、こんにちは。 映画界では映画賞のシーズンが始まりました。
今日のまずそのトップを切って決定した12月1日発表の報知映画賞についてお話ししましょう。
報知映画賞とは 46回を迎える新聞社系で最古の賞、その年最も早い映画賞、権威のある賞で、その年の流れを作ります。主宰はもちろん報知新聞社です。
システムは一般投票が11月いっぱい行われて、読者リスナーから作品俳優などが寄せられます。そこから各賞10人作品ほどに絞られるノミネート会議 その後…選考委員による選考会で決定します。選考委員は…私荒木、幻冬舎の社長見城徹さん、 読売新聞文化部の山田恵美さん、サイバーエージェント社長の藤田晋さん、フリーアナウンサーの松本志のぶさん、タレントのYOUさん、映画コメンテイターのLILICOさん、映画評論家の渡辺祥子さん、そして報知新聞社から3名が加わり11人です。
映画評論系の人は作品をたくさん見ていますが、問題はほかの委員はお忙しい方ばかりですので…。
鈴木 選考委員はノミネートされた映画を全部見るのでしょうか?
荒木 ノミネートされた作品は、ほとんど全部見ているんですって…。
目を真っ赤にして、昨日3本見ました…なんて言ってきてますよ。
鈴木 あはは、リアルだなー。
荒木 私はノミネート委員と選考委員も兼ねていまして、本選会11人の委員が5時間以上もかけて討議し投票します。今年は11月16日 選考委員会が都内ホテルで開かれまして。選考委員一人一人が各賞にふさわしい作品俳優を推薦し意見を言い合い、投票し、映画賞が決定しました。
11票の過半数を獲得した作品、俳優が受賞者となるのですが、一回目で過半数を取らなければ 上位2作品(2俳優)の決選投票となります。
鈴木 政治の世界みたいですね。
荒木 さて 選考結果についてですが…もう発表になっていますので、ご存じの方も多いとは思うのですが、ザーッとお話しますね。
まず、邦画部門作品賞から。作品賞は瀬々敬久(たかひさ)監督の「護られなかった者たちへ」という仙台を舞台にし、東日本大震災を背景にした連続殺人事件ミステリーです。選考会ではでは「やくざと家族 ザ・ファミリー」と決戦投票の結果 なんと1票差で
「護られなかった者たちへ」が獲得。票が割れたということですね。
監督賞は…前田哲監督。初の受賞対象作品は「そして、バトンは渡された」と「老後の資金がありません」の2作 セットの解体アルバイトから映画監督になった人。相米信二さんの弟子筋ですね。選考では「やくざと家族 ザ・ファミリー」の藤井道人監督と「茜色に焼かれる」の石井裕也監督とみつどもえでしたが、僅差で前田監督に決定しました。
そして俳優個人賞です。
最も注目の主演男優賞は…「マスカレード・ナイト」の木村拓哉さん 31年目で初の映画賞主演賞 無冠の帝王と呼ばれた木村さんついに受賞ですね。
1回目の投票では 候補は綾野剛さん 岡田准一さん 佐藤健さん、菅田将暉さんなど
ばらばらでしたが、華やかさと存在感がとびぬけていると評価されて受賞です。
「キムタク」には「キムタク」しかできないなどと言われることが多いのですが、
こうなったら徹底的にキムタク路線を突っ走ってほしいですね。
鈴木 何をやっても「キムタク」でいいんじゃないんですかね?
荒木 そう思います。CMじゃないですけど、やっちゃえ「キムタク」ですよ。
更に 主演女優賞は「地獄の花園」と「そしてバトンは渡された」の永野芽郁さん。
この賞は候補が多く、乱戦でした。「花束みたいな恋をした」の有村架純 「女たち」の篠原ゆき、「茜色に焼かれる」の尾野真千子さん…。そして、尾野さんと永野さんの決選投票で1票差、僅差で永野芽郁…です。
ふたつの作品で全く違った顔を見せてくれたのがポイントでしょうか?
そして 助演男優賞です。鈴木亮平さんです。だいちゃんにも見ていただきましたのね。
鈴木 恐ろしい役でしたよね。
荒木 ここでは舘ひろしさん、松坂桃李さんの名前も挙がったのですが、1回目の投票で、文字通りの圧勝 もうあの「弧狼の血レベル2」の凶悪なやくざ、上林は映画史に残る名演でしたよね。文句ない受賞です。
さらに助演女優賞 これは混戦でした。清原果耶、草笛光子 奈緒 中村アン、倍賞美津子の名前が挙がりましたが、ベテランの寺島しのぶさんが過半数を獲得。対象作品は「やくざと家族 ザ・ファミリー」「キネマの神様」「空白」など。
寺島さんは報知映画賞では過去2008年に「赤目四十八瀧心中未遂」で主演女優賞を受賞以来の助演女優賞の受賞ですね。ベテラン堂々の受賞です。
そして新人賞は今年は3名。
俳優から2名。一人目はあの「世界の終わり」のカリスマボーカリストFUKASEくん。
初めて挑戦した映画「キャラクター」で殺人鬼を演じました。初演技とは思えない、こわーい演技を評価されました。
もう一人は女優さんで「茜色に焼かれる」で風俗店で働く不幸せな女性を演じた新人片山友希が「 サマーフィルムに乗って 」の伊藤万理華ちゃんとの決選投票で選ばれました。これから楽しみな女優さんです。
そして 監督として新人賞に選ばれたのは、この番組でもご紹介しました1人で7年間かけて作ったといわれるストップモーションアニメ「JUNK HEAD」の監督・堀貴秀さん。
本職は内装業の傍らコツコツ作ったアニメで国際賞もたくさん撮りました。
そして アニメ作品賞。「えんとつ町のプペル」「トゥルーノース」「竜とそばかすの姫」など上がりましたが、なんと、1回目の投票で「漁港の肉子ちゃん」が過半数に。あの明石家さんまさんが直木賞作家・西加奈子の小説にほれ込み、プロデューサーを務めた作品です。
大竹しのぶさんや木村拓哉さんの娘 cocomiさんなどが声優を務めています。
そして「作品賞 海外部門」では こちらも「ミナリ」「ノマドランド」「プロミシングヤングウーマン」などと評価が分かれましたが、シリーズ25作目 ダニエル・グレイブ最後の出演 記念碑的作品ということで『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』が選ばれました。
そして今年の特別賞は、昨年11月に急逝した前東映グループ会長・岡田裕介氏が、邦画界の顔として、遺作となった吉永小百合主演「いのちの停車場」に至るまでの製作者として日本映画界に多大な貢献をしたということで贈られます。
鈴木 ところで、荒木さん。この番組では、荒木さんがあまり紹介していない作品が、今回ずいぶん受賞していますよね?
荒木 ごめんねー、そうなんですよ。あははは。
私がマニアックなのか?確かに外してますね。正直言って、ほんとはこんなこと言っちゃいけないんですけど、私が第一候補に押した作品や俳優はほとんど入っていませんね。
鈴木 どういうことでしょうねー。
荒木 どういうことでしょうねー?ほかの人と感覚が違うのか?私がばかなのか?確かにマイナーグループですよ。今回はばらつきが多かったです。決選投票が4、5回あって評価が割れることが多かったです。それだけ質の高い作品がそろったという事なのでしょうか?
政治的というか、大人の事情で取り上げられなかった作品もあるんですけど…「護られなかった者たちへ」などはご紹介したかったんですけど…申し訳ありませんでした。
鈴木 それと、選考委員は個性的な方がとても多いような気がしますが、どういう雰囲気で選考会は進むのですか?差し支えのない範囲で審査の裏話をお願いします。
荒木 選考委員は自分の感覚や評価を大切にしていますから、皆さん熱心ですよ。時間もかかります。幻冬舎の見城さんなんかは感激屋でね、「涙がボロボロ出たよ」とか表現が編集者的というか文学的で、自分の気に入った作品を推薦して説得してきますよ。 YOUさんは最近俳優業が多いせいもあって、役者さんの立場から「この演技はむずかしいですよ」などと評していきます。
LILICOさんは大きい派手な映画が好きなんだろうと思うでしょ?
鈴木 そうですね。ワイルドスピード系というか、豪快な感じの映画が好きな感じがします。
荒木 ところが以外に彼女は小さな、地味な作品が好きで、私なんかと同じ傾向ですかね。今回も「女たちへ」など日本の小さな映画を推薦していました。
そして、渡辺祥子さん。この世界では有名な映画評論家なんですけど、「私007大好き、大好き…」なんていう感じでちょっと、ミーハーっぽい。意外でしょ?一度見ていただきとおもしろいんですけどね。
鈴木 そうですね。皆さん意外なですね。おもしろい。
荒木 12月16日都内のホテルで表彰式とパーティが開催されます。
映画業界はこれから年間の映画賞・ベスト映画のシーズンに入っていきますね。
報知映画賞の次は、12月の末に発表の、日刊スポーツ映画大賞、そして東京のスポーツ紙7社の記者が選ぶ ブルーリボン賞、毎年1月にノミネートと受賞結果が発表され、授賞式は2月です。そして毎日新聞・スポーツニッポンが主催する毎日映画コンクールは来年1月末の発表ですね。
雑誌では「スクリーン」や「キネマ旬報」ですね。
年間ベスト映画や個人賞は2月号ですから、1月後半に発表ですかね。
私の所属している「日本映画ペンクラブ」これは、毎回ご説明しているように
評論家や映画記者、字幕制作者などが所属している会ですが、こちらのほうの会員が選ぶ2021映画ベストテンなどは、1月後半の発表の予定です。
順次この番組でもお届けしていきますが…そうですね、もしよかったら
バンピー月曜日のリスナーが選ぶ今年のベスト映画も選んでみましょうか?
思い付きですが…。
鈴木 ああーそういうの知りたいなー、おもしろいですね。
荒木 あなたが今年見た映画の中でこれが一番よかったよーと思われるものを一作簡単な感想ともに番組宛て送っていただけますか?12月いっぱいで締め切りにしますか?
鈴木 ぜひやりましょう。
荒木 年始ぐらいに発表して、そうですね。応募の方の中から抽選で何か映画の劇場チケットや、珍しいノベルティみたいなものを私からプレゼントしましょうかね。
詳しくは またお知らせしてください。だいちゃん…宜しくお願い致します。
荒木 今日の特集は、先日決定した報知映画賞についてのお話しでした。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。