「帰らない日曜日」名家の子息と”秘密の恋“をするメイドの数奇な人生

(2022年5月26日9:20)

「帰らない日曜日」名家の子息と”秘密の恋“をするメイドの数奇な人生
「帰らない日曜日」(© CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021 All rights reserved.)

ノーベル賞作家のカズオ・イシグロやニューヨーカー誌などが絶賛したグレアム・スウィフトが2016年に発表した小説「マザリング・サンデー」の映画化。監督はカンヌ国際映画祭に正式出品されて高く評価された「バハールの涙」のエヴァ・ユッソン監督。オーストラリア出身の新進女優オデッサ・ヤングと、人気ドラマシリーズ「ザ・クラウン」(2019年~)でチャールズ皇太子を演じてゴールデングローブ賞とエミー賞の主演男優賞を受賞した英俳優ジョシュ・オコナーの2人を主演に、「英国王のスピーチ」(2011年)でアカデミー賞主演男優賞を受賞したコリン・ファース、「女王陛下のお気に入り」(2018年)で同主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマンなどの豪華キャストで、名家の子息と孤独なメイドの”秘められた恋“を大胆なベッドシーンを含め、セレブの豪邸の華麗な内部や田園風景などの美しい映像をまじえて描く。
2021年・イギリス・104分、後援:ブリティッシュ・カウンシル/配給:松竹。

■ストーリー

1924年のイギリス。3月の日曜日、その日はイギリス中のメイドが年に一度里帰りを許される「母の日」だったが、ニヴン家で働くジェーン(オデッサ・ヤング)は孤児院育ちで帰る家はなかった。そんな彼女に訳ありの電話がかかって来る。相手は秘かに関係を続けていた近隣のシェリンガム家の跡継ぎでニヴン家とも家族ぐるみの付き合いをしているポール(ジョシュ・オコナー)で、「11時に正面玄関へ」と手短に告げた。ポールは幼馴染で同じ上流階級のエマ(エマ・ダーシー)との結婚を控え、その日は前祝の昼食会が予定されていたが、遅刻を決め込んで、自転車でやってきたジェーンとベッドで愛し合い深い絆を確かめ合う。ポールは昼食会に向かい、1人になったジェーンは裸のまましばらくポール邸の中を歩き回る。そしてニヴン家に戻るが、思わぬ知らせが待ち受けていた。彼女のその後の人生に大きな影響を与えた「帰らない日曜日」の1日を出来事を、後年小説家になったジェーンが振り返る。

■見どころ

ポールとジェーンの官能的なベッドシーンと身分の違いを超えた恋が流麗に描かれ、オデッサ・ヤングとジョシュ・オコナーが繊細にそして大胆に演じている。ポールが昼食会に向かった後、無人のポールの邸宅の中をジェーンが一糸まとわぬ姿で見て回るシーンも思わず息をのむ。2人に後ろめたさや罪悪感はなく、むしろ溢れる情熱、解放感、自由であることの快感、自立する女性の魅力といったものが、美しい映像の中で描かれている。その後ジェーンに訪れる予想外の悲劇が一層、逢瀬の甘美、至福を際立たせる。
「キャロル」(2015年)や「女王陛下のお気に入り」(2018年)の衣装デザインを担当し、「恋におちたシェイクスピア」(1998年)などでアカデミー賞を3度受賞している衣装担当のサンディ・パウエルが当時のイギリスの上流階級の婦人たちの豪華な衣装を再現している。また、「クルエラ」(2021年)で本年度のアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされたヘアメイクのナディア・ステイシーが20代から40代のジェーンを特殊メイクで表現した。生涯心に刻まれる秘密の恋のエモーショナルな展開に目が離せない。
(2022年5月27日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開)