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映 画
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」などのとっておき情報
(2023年3月21日10:30)
映画評論家・荒木久文氏が「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」などのとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、3月18日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 学生さんは昨日あたりからお休みですかね?
鈴木 もう春休みじゃないですか?
荒木 映画業界は今、春休み映画シーズンの真っ最中です。そんなわけかどうか、若い人向けの映画がたくさん公開されています。その若い人向けの映画の中から、私が見せていただいた個人的に面白かったものを紹介していきたいと思います。アラキンレコメンデーション・ビンビンですよ!
鈴木 うわっ!いいですね。
荒木 まずは、こちらからですよ。タイトルをよーく聞いてください。「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」と言います。
鈴木 俺、最初の0.2秒くらいから後ろ、頭は入ってないよ。
荒木 もう一回言いますよ。「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション。あまりにも長いのと、原作は漫画なんで、ファンは「デデデデ」ということでわかっているらしいので、「デデデデ」ということで。
鈴木 わかりました(笑)。「デデデデ」ね。
荒木 ストーリーから言っちゃおうかな。東京の街でハイテンションな女子高校生ライフを送る小山門出さんと通称おんたんこと中川凰蘭ちゃん、この二人が中心人物です。彼女たちは、受験勉強に追われながら、仲の良い友人たちとともに、何気なく夜はオンラインゲームで盛り上がるふつうの女子高生なんですけど。なんと2人が暮らす街の上空に、3年前の8月31日、超巨大な宇宙船「母艦」が突如として襲来するという未曽有の非常事態が起こってしまいます。でも大きな戦闘や戦争が起こることはなくて、その巨大な「母艦」が常に上空に浮かんでいるというですね…。
鈴木 うわっ!逆に怖いな。
荒木 非日常が日常に溶け込んでしまった東京という…。そこである夜、悲劇は起こります・・ということなんですね。2人と世界は加速度的に破滅へと向かっていくという…何て言うんだろ…SF青春物語か。
鈴木 面白そうじゃないですか。
荒木 そう。アニメ。浅野いにおさんのコミックをアニメーション映画化した2部作の前編ですね。話題が集まっているのは、あの音楽ユニット「YOASOBI」のボーカル・ikuraとしても活動するシンガーソングライターの幾田りらが、主役の「かどで」役で声の出演をしているんです。もうひとり、タレントとして若い世代を中心に人気を集める「あの」、あのちゃんが、おんたんの声をそれぞれ演じているわけなんです。主役の二人が、いわゆる人気タレントということで、最近、よく話題作りのためによくあることですが、ちょっと期待外れのことも多くて、プロの声優のほうがよかったなと感じることもあるんですが、今回はびっくりしました。この二人が、うまいというか、存在感がすごいんですよ。
鈴木 じゃあ、いい感じなんですか?
荒木 いい感じなんですよ。主人公のふたりそのものになっちゃてる感じですね。
あのちゃんも本格声優初めてらしいのですがリズムと言い、アクセントと言い、彼女の訳の分からない雰囲気あるでしょ。なんかアブナイ雰囲気。
鈴木 あれが、ジャスト、センスぴったりなんじゃないんですか。
荒木 はまり役なんですよ。もともとアニメキャラみたいな人ですからね。
初めからこの人しかいなかったと思うぐらいです。
鈴木 へぇー。そこまでですか。
荒木 はい。キャスティングの勝利でしょうね。いくらちゃんこと幾田りらさんも、あの無機質っぽい声がダークな、かどでちゃん役にハマっていますね。これは原作にも係るんですが、セリフのセンスが抜群です。
鈴木 いいですね。
荒木 劇中に挿入されるアニメがあるんですが、その声は先日亡くなったTARAKOさんも出ています。
全体的な雰囲気、リアルな女子高生の掛け合いみたいなものに、宇宙人が加わっちゃって独特な雰囲気なんですよ。なんともフワフワの浮遊感のあるとでも言いましょうか?
不思議な感じ。絵やキャラクターは好みがあるんでしょうけど、実際の下北沢や吉祥寺などが出てくるんですけど、町並みなんかが、こだわりがでています。ストーリー的には、必ずしも原作には忠実に再現されているわけじゃないんですけど、前章、後章と2つに別れてますんでね。だから原作を読み込んでいる人から言わせると、原作を知らないほうが楽しめますよということです。
鈴木 たまにそういう作品ってありますよね。
荒木 アニメ、先日紹介したバレーボールアニメ「ハイキュー」も、今大ヒット中らしいですけど、今年はアニメ超豊作という感じを受けますね。
鈴木 凄いんだね!アニメって!
荒木 「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」、通称「デデデデ」という。
鈴木 紹介する方が、泣くね。泣きますね。
荒木 あとで曲をかけてもらいますけど、曲もこだわってる。前章が3月22日公開で後編は5月24日(金)公開の予定です。
荒木 2本目は、おそらくダイちゃんも待ち望んでいたと思います。SF超大作というと…?
鈴木 あ!デューンだ!
荒木 そう!「デュ―ン 砂の惑星PART2」。もう言うことないんですけど、一昨年でしたか、第94回アカデミー賞で6部門に輝いたSFアドベンチャー大作「DUNE/デューン 砂の惑星」の続編です。あらすじに関しては…、ま、どうでもいいことはないんですが(笑)。簡単に言うと、デューンと呼ばれる砂の惑星。この惑星を制する者が全宇宙を制するといわれる星で、この星をめぐって戦いが繰り広げられるという。貴族同士なんですね、ハルコンネン家とアトレイデス家という、この2つの宇宙貴族が闘って、ポールという主人公、ティモシ―・シャラメはアトレイデス家の王子なんですけど、これが殺されそうになるんですが、新たな救世主として闘うということで。
鈴木 どうなんですか!今回は?
荒木 私も見せていただいたんです。2時間46分。
鈴木 長っ!長い!あっという間?
荒木 そうですね、あっという間、凄かったですよ。前作より遙かに凄いんじゃないかな。世界観と言い、戦いの迫力と言い、興奮も前作以上だと思いますよ。
鈴木 じゃあ、我々が「DUNE」に求めているものは、100%提供してくれている?
荒木 ああ!没入感も凄いから。見ている間ずーと砂漠のシーンが多いんですけど、ずうっと砂漠にいるような感じです(笑)。
鈴木 なんか、喉渇きますね。水持ってったほうがいいですね。
荒木 そうなんですよ。ティモシー・シャラメはじめ、ゼンデイヤとか、前作のキャストに加えて、今回戦う相手、「エルヴィス」のオースティン・バトラーが。これが凄いんですよ。顔とかもう、これ凄いなという感じで(笑)。まぁ、凄いな、凄いなだけじゃ表現出来ないんですけど、あとはフローレンス・ピューとかね、ダイちゃんの好きなレア・セドゥとかね。
鈴木 2回見なきゃ駄目だね。
荒木 アメリカではチケットが飛ぶように売れて、「オッペンハイマー」の予想を超えるそうですね。クリストファー・ノーランも、ビルヌーブ監督に対して、“歴史的傑作”だと言ったらしいですよ。
鈴木 ちょっとぉー!これは早く見いかないと。
荒木 「デュ―ン 砂の惑星PART2」現在公開中です。是非、ダイちゃん、行って感想も聞かせてください。
鈴木 そうですね、これは見なきゃ。
荒木 で、最後。こちらもパート2と言えばパート2なんですけど。タイトルは「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」です。2というので、当然1があったのですが、それは2018年の「止められるか、俺たちを」という作品でした。
多分みなさん知ってる人少ないと思うんですけど、ピンク映画とか、自主映画の巨匠で、若松孝二監督と言っても…、知らないよねー。もう知っている人は少ないんでしょうね、12年くらい前に亡くなったんですけど。この「止められるか 俺たちを」は、この若松孝二を中心に描いた映画です。
鈴木 ドキュメンタリーじゃないんですよね?
荒木 ドキュメンタリーじゃないです。2018年の作品は若松監督の作品を中心に、監督自身と若松プロダクションの初期を描いたんです。
今回の作品は若松監督の制作会社「若松プロ」に在籍した多くのスタッフたちの1960年代から70年代にかけて、映画にかけた思いを群像劇として描いたものですね。
映画に対する愛情、激しすぎる映画愛を描いていると言っていいんでしょうか。
ストーリーは、若松監督が代表を務めた若松プロダクションが、名古屋にミニシアターを作るんです。「シネマスコーレ」。
これは本当のことなんです。当時1980年代は、ビデオの普及によって人々の映画館離れが進んでいたんです。その時代に逆行するように、「シネマスコーレ」という、映画の学校という意味の映画館を作るんです。支配人にはもとセールスマンの映画好き木全さんと言う人で、彼は若松監督に振り回されながらも、持ち前の明るさで経済的危機を乗り越えていきます。そんなシネマスコーレには、映画愛に萌える若者たちが吸い寄せられてくる…というストーリーなんです。
若松孝二を演じるのですが、井浦新さんなんです、前作もね。これが凄いんですよ。
鈴木 それが凄い!(笑)。
荒木 もともと、本物の若松監督って 小太りで小さくて、顔はチャールズブロンソン…。
鈴木 なるほど。無骨なかんじですね。
荒木 そうそう。ブルドック入れたみたいな感じ。かっこいい井浦さんに全然 似てないんですよ。そのうえ東北なまりが抜けなくて、ぶつぶつしゃべるんですよ。昔はゴールデン街でよく見ました。
鈴木 そうなんだ。
荒木 いつも酔っぱらって、殴り合いのけんかばっかりしてる人で有名でした。
鈴木 いやー、時代、いいなあ。
荒木 あのかっこいい井浦さんとは、全然違うんです。
ところが、この井浦新さんがほんとの若松孝二みたいに見えてくるんです。本当に、不思議によく似ちゃってるんですよ。映画館の管理人役、木全役は東出昌大さん。
実在した人物や架空の人物を織り交ぜながら、当時の若い映画人たちを描いているんです。若松プロダクションって、多くの映画人材を生み出してきたんです。あの頃、自主映画とか、ピンク映画。ピンク映画では、「ゴールドボーイ」でこの前紹介した金子修介監督とか、周防監督や滝田洋二郎監督。こういう人たちのゆりかごみたいなもんですね。この作品で脚本を担当した井上淳一さんていうんですけど、この人が中心人物で出てくるんです。
彼自身が監督して、脚本を手がけ、自身の経験をもとに作り上げたという作品です。
映画好きな人は見といた方がいいかもしれない。3月15日から全国順次公開中です。
鈴木 なんか、ピンク映画とか、ちょっとリアリティがあった時代を体験してみたかったですね。
荒木 今度、ピンク映画の特集をやってみましょうか。
鈴木 お願いしますよ!
荒木 久々に、エロものをやりましょうか。やってないものね。ということで、「青春ジャック止められるか、俺たちを2」現在公開中です。
鈴木 止められませんよ、俺たち。ですよ。
荒木 すぐ止められちゃう(笑)。止まりたいよ、俺たちは。
鈴木 荒木さんは、止めようと思っても止まらないから(笑)。ありがとうございました。
■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。