「かくしごと」「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」のとっておき情報

(2023年6月11日10:30)

映画評論家・荒木久文氏が「かくしごと」と「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、6月3日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木      よろしくお願いします。

荒木      ダイちゃん!最近、誰にも知られず隠していること、隠し事ありますか? 

鈴木      突然、何、聞いてんの?隠し事?

荒木      (笑)うん。「かくしごと」

鈴木      隠し事はね…、いろいろいろいろあるね…、私はね…。

荒木      そうみたいねー。

鈴木      あはははは。やめてください、そうみたいねーって。

荒木      人生、生きているといっぱいありますよ。

鈴木      私に振っといて、いっぱいあるねーで終わっちゃっているじゃない。 荒木      ま、私も…ね、「隠し子」だけはいないと思いますけど…。 PCで打つと、“書く仕事”って出て来ちゃうんですよ(笑)。 ダイちゃんも私も、“隠し事”と“書く仕事”はあまりないということでよろしいでしょうかねぇ?

鈴木      (笑) ほんとに、よろしいでございますよ。

 
アラキンのムービー・ワンダーランド/「かくしごと」と「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」のとっておき情報
      
「かくしごと」(公開中)(© 2024「かくしごと」製作委員会)(配給: ハピネットファントム・スタジオ)       

荒木      くだらないことは言っていられないですね(笑)。今日は時間がない…ということで、「かくしごと」という6月7日公開の日本映画からご紹介します。 ストーリーから行きますね。
絵本作家の千紗子さんが主人公です。女優の杏さんが演じています。 彼女は、長い間絶縁状態になっていた父親が認知症になってしまった為、仕方なく故郷、長野の南の方、そこに戻って介護をすることになります。認知症が進んで他人のような父親と一緒に住んで身の回りの世話をするという大変な日々を過ごしていたのですが、ある日、彼女は地元の女友達と一緒の時、山道の自動車事故で記憶を失くしてしまった少年を助けます。 その少年の身体に虐待の跡を見つけた彼女は少年を守るために、自分自身がこの子の母親だと嘘をついて一緒に暮らし始めます。認知症が進む父と少年の田舎暮らしで、最初はぎこちない3人だったんですが、だんだん家族としてなじんでいくんですが、そのままで終わるわけもなく…という話なんです。
父役は奥田瑛二さん。少年役は新人の中須翔真が演じています。関根光才さんという監督が、北國浩二さんの小説「嘘」という原作をもとに作りましたが、タイトル、なんですが、これを「かくしごと」としました。微妙な違いがありますね。いわゆる「母もの」要素や「疑似家族要素」も少し入っているものですが、母としての女優さんの演技力が大きな比重を占めますよね。杏さん、今、一番の安定感あるお母さんが演じられる女優の一人じゃないでしょうか。

鈴木      見事ですか?

荒木      見事です。いろんな経験もなさっているし、母として育児もあるし。存在感と演技、抜群です。彼女の新しい代表作品にもなるんじゃないでしょうか。 もうひとつは、「認知症」と「児童虐待」という現代社会の大きな社会的な問題ですね。 頭の痛い問題と言っていいんでしょうね。できれば見たくない大きな問題を正面から捉えているという意味でとても挑戦的なんですけど、全体としては重苦しいドラマ展開ではあるんですけど単純なヒューマンドラマではなく、ミステリー要素も取り込まれているところが素晴らしいですね。

鈴木      そこに希望はあるんですか?展開的に。

荒木      そうですね。希望はありますし、見方によっていろんな感想が出て来るんじゃないですかね、エンディングも。

鈴木      その方が、幸せなんだよ、というところですか?

荒木      そうですね、だから、認知症の親の介護がリアルな世代とか、児童虐待が他人事ではない世代とか、性別にもよるけど何が正しいのか、正しくないのか、見る人や視点によっても感想が違ってくる作品ですね。 「かくしごと」という6月7日公開の日本映画からご紹介しました。 ということで、2本目はこの曲から行きますか。
~♪~「帰ってきた酔っ払い」♬~

 
アラキンのムービー・ワンダーランド/「かくしごと」と「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」のとっておき情報
      
「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」(5月31日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開中)(©2024「トノバン」製作委員会)       

鈴木      あはははは。

荒木      若い人でもこの曲どこかで聞いたことあるはずです。

鈴木      あるでしょう。「帰ってきた酔っ払い」ね。

荒木      そうです。「ザ・フォーク・クルセダーズ」の「帰ってきた酔っ払い」という1967年の古い曲なんですよね。

鈴木      結構、古いですね。

荒木      日本初のミリオンセラーなんです。

鈴木      えー!?これ初めてなんですか?

荒木      そうなんですよ。ある意味、日本の音楽シーンを変えた楽曲と言っていいと思います。オリコンが出てから初めてのミリオンセラーということで…。 今回ご紹介するのはこの歌を作って歌った、「ザ・フォーク・クルセダーズ」のメンバーで「サディスティック・ミカ・バンド」でも活躍しました加藤和彦さん。 時代を先取りした音楽性で日本のポピュラー音楽史に残る数々の名曲を生んだ人です。 「トノバン」の愛称で親しまれた加藤和彦さんの軌跡をたどったドキュメンタリーです。

鈴木      天才、奇才の1人ですよ。

荒木      タイトルが「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」という、現在公開中の作品です。ダイちゃんも見ていただいたんですよね?如何でしたか?

鈴木      見ましたね。想像以上に、想像していた5、6倍楽しかったですね。

荒木      そうですか。いろんなアーティストも出て来るし関係者も出て来るしね。

鈴木      荒木さんと一緒にやっていた、あのラジオ局のあの時代に知り合った方とか、出会った方とかも結構コメント出ていましたし、何か日本の邦楽界の1ページどころか、10ページ、100ページを見せていただいたなって感じです。

荒木      音楽関係者は特に面白いと思います。日本のアーチストのこの手の作品は貴重ですよね。海外のは結構あって、この番組でも紹介していますけど…。 加藤和彦さんは名前は聞いたことあると思います。亡くなってから今年で15年になります。今生きていれば77、78歳かな。「ザ・フォーク・クルセダーズ」、その結成秘話、後のバンド「サディスティック・ミカ・バンド」の海外公演やレコーディング風景をとらえた貴重な映像が多かったですよね。

鈴木      高中正義さんも結構語ってましたもんね。

荒木      そう!高中さんとか、いろんなメンバーいましたよね。

鈴木      凄かったですよね。

荒木      日本のポップスの金字塔といわれる“ヨーロッパ3部作”が中心だったんで、それに関わった高橋幸宏さんとかね。きたやまおさむさんは当然なんですけど、つのだ☆ひろ、泉谷さんもいましたね。坂崎幸之助、吉田拓郎、松任谷正隆さんもね。

鈴木      拓郎さんとの対談なんかもありましたね。

荒木      坂本龍一さんもいましたけど、さらにこの映画では、不朽の名曲といわれる「あの素晴らしい愛をもう一度」を新たにレコーディングしエンディングテーマとして使っているんですが、さまざまなジャンルのミュージシャンによってある意味、進化する楽曲の姿を映し出しています。

鈴木      進化のしんが、また、深いという字も当てはまる深化という。両方でいけますよね。

荒木      そうですね。この1971年の曲なんですけど、きたやまおさむさんと加藤さんが作ったんですが、世代を超えたアーティスト達が中心となりTeam Tonobanとして新たにレコーディングしたものなんです。歌っているメンバーは、高野寛さん、高田漣さん、坂本美雨さん、石川紅奈さん。それから、もちろんきたやまおさむさんや、坂崎幸之助さんも歌ってるんですが、ドラムサンプルとして高橋幸宏さんも入ってますね。 そして1971年の当時のライブから加藤和彦さんの歌声もサンプリングされているんです。後半に出てきますので、あとで聞いていただけると思いますけど、注意して聞くと彼の若い声が聞こえますね。この映画自体は、何回もお話に出ている高橋幸宏さんが加藤さんに寄せた想いから、映画化の企画が立ち上がったそうです。

鈴木      その幸宏さんもいないんですもんね。

荒木      そうなんですよ、ほんとうにね。皆さん早く逝っちゃってね。 当時のファンにはもちろん全く知らない世代、若い人たちにも是非見ていただくとこの人の進歩性っていうのかな、ちょっとユーモアのあるものとか、専門的に言うとコード進行とメロディなんかもね、とっても聞きどころだと思うんです。

鈴木      そして加藤さんて、ただ高価なものを愛したんじゃなくて、一流品を愛したんだなあって。食もそうだし、服もそうだし。それがよくわかって上も下も知らないとこういう音楽っていろいろ作れないんだろうなって。

荒木      そういうことでしょうね。非常に贅沢もした人ですけど、いろんなことをよく知っていた人ですよね。拓郎さんほかにいろんな影響を与えた人でした。 「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」。現在公開中の作品をご紹介しました。

鈴木      これは、是非リスナーの皆さんにも見ていただきたい1本です。ありがとうございました。

      
「マッドマックス:フュリオサ」「ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ」などのとっておき情報
      
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊨と鈴木氏)                

   ■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

   ■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。

     
         
        

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