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映 画

「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2024」「お隣さんはヒトラー?」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」のとっておき情報
(2023年7月27日10:00)
映画評論家・荒木久文氏が「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2024」「お隣さんはヒトラー?」「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」のとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、7月22日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 毎年ここで紹介していますけど、夏の映画の祭りと言ったら「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2024」、略して「カリコレ」。
ダイちゃんにもお馴染みですけど、新宿シネマカリテを会場に選りすぐりのミステリー、SF、コメディ、ホラーとかちょっとこだわった作品が多いのですが、毎年やっているシネマコレクションで、今年で10回目だそうです。今開催中、8月8日迄とのことです。この中から、今週と来週と何本かご紹介したいんですけど、まず今週紹介したいのは、「ダリオ・アルジェント PANICO」という作品なんですよ。
ダリオ・アルジェント、といっても知らないと思うんですけど、「サスペリア」とか「インフェルノ」とか。


鈴木 決してひとりでは見ないでください!ですか。
荒木 そうです。キャッチコピーね。1977年公開当時有名になりましたよね。
鈴木 憶えてますわー。
荒木 83歳なんですけど、ダリオ・アルジェントさん。イタリアの映画監督、映画プロデューサーですね。他にも「オペラ座/血の喝采」とか、数々のホラー映画を手がけていることで有名なんですけど、ホラー・スリラーファンにとっては教祖様みたいな人ですね。
ダイちゃんも「サスペリア」見て怖かったと思いますけど。魔女3部作ね。
鈴木 めっちゃ怖かったです。
荒木 この人の人生を振り返る新作のドキュメンタリーなんですよ。ロングインタビューとか、メイキング映像とか、いろんな人がアルジェントの功績を語っています。彼の若い頃のインタビューを見ると自分の映画に出て来る気持ちの悪いおっさんそのものですよね。
鈴木 うっわー。
荒木 この人がホラー哲学を語ってるんですけど、いかにもホラー監督って感じで見ているだけでも怖いです。80歳になって随分かわいらしいおじいちゃんになっちゃったけどね。ギラギラな創作意欲は衰えていないようです。この人を好きで崇めている人多いので、是非「ダリオ・アルジェント PANICO」というドキュメンタリーなんですけど、詳しくは「カリコレ2024」のサイトで確認してくださいね。
来週も「カリコレ」紹介しますので。チケットプレゼントも頂いてますんで、あとでダイちゃんからご紹介ください。
話は変わって、世の中には「都市伝説」というのがありますよね。
鈴木 あるよね、
荒木 「口裂け女」からはじまって突飛もない噂とかありますけど、これからご紹介する2作品はそういうものを上手く使って作ってある作品なんですね。
まずは7月26日から公開です。「お隣さんはヒトラー?」。

鈴木 それは、いわゆるヒトラー生きてる説ですか?
荒木 そうそうそう。よくあるのが、戦争なんかで財宝隠匿とか、要人脱出逃亡説ですよね。
鈴木 南米に逃げた系ですね。
荒木 そういうことです。本当はヒトラーは生き延びて、脱出、逃げたというまことしやかな話があるんですよ。具体的にはヒトラーの遺体を確認していないこと、元ナチス高官のアイヒマンなどが本当に中南米に逃げたこと、2015年にはCIAの極秘文書の中にヒトラー逃亡に関する資料あったことなどから、ダイちゃんが言ったように、ヒトラー生存説、逃亡節が本当に根強くあるんです。
鈴木 私は、アマゾンプライムだとか、ネトフリで、7週に渡って見ましたもん。
荒木 すごいの見てるね(笑)。この 映画「お隣さんはヒトラー?」は、そんなヒトラーの南米逃亡説をモチーフにしたなかなかよくできたコメディです。
舞台は戦後15年たった1960年、舞台は南米コロンビアです。ユダヤ人の老人ポルスキーさん、70歳くらいでしょうか。彼は戦争中ホロコーストで家族を失いながらも1人生き延びたんです。今は町はずれの一軒家で穏やかな日々を過ごしています。そんな彼の隣の家に、同じくらいの年のドイツ人ヘルツォークが引っ越してきます。そして、彼の顔を見た瞬間、ポルスキーはびっくりします。顔面はほとんど長いひげで覆われて頭髪も白髪なのですが、その青い瞳は死んだはずのアドルフ・ヒトラー、そのものなんですね。ちょうど南米ではアイヒマンが捕まって騒然としており、ヒトラーが生きて身を隠していてもおかしくないと考えたボルスキーおじいちゃん。さあ!大変!隣の人はヒトラーだと、ナチの残党を調査するユダヤ人団体に訴えますが、信じてもらえず、ボルスキーさんは自分で証拠をつかもうと、カメラを手にして、自らの手で証拠を掴もうと行動を開始するんです。
鈴木 それは、コメディじゃなく、サスペンスドラマじゃないですか。
荒木 ただ、爺ちゃんだからね、リアルサスペンスじゃないね。(笑)。意気込んでいたポルスキーさんですが、やがて2人はお互いの家を行き来するようになっちゃうんです。チェスを指したり、絵が上手いんで肖像画を描いてもらうまでの関係になるんですね。つまりお隣付き合いが始まります。
2人の距離が少し縮まったかなと思った時、彼はヘルツォークがやはりヒトラーだと確信する場面を目撃してしまいます…。という作品なんですが、はじめは老人2人の地味なコメディかなという印象でしたが、なかなか傑作です。着目点が素晴らしいです。はじめのブラックがかったコメディという先入観はいい意味で大きく裏切られました。見終わった後は、なるほどそういうことなんだ!!という納得感。…ちょっとこれは言えないんですけど、ちょっと心に残るヒューマンサスペンスドラマにもなっているんですね。
鈴木 俺、絶対見たいなー。
荒木 ボルスキー役のデヴィッド・ハイマンさんという人はイギリスの俳優さん。そして、ヒトラーに疑われるヘルツォーク役のウド・ギアさんは、「アルマゲドン」とか「マイ・プライベート・アイダホ」なんかに出ているんですけど、よくヒトラー役やる人です。
鈴木 よくヒトラー役やる人(笑)。
荒木 顔見ると、あ、この人かってわかりますね。傑作と言っていいと思います。おすすめです。拾い物。
鈴木 生前のヒトラーって絵に関心があって、絵が上手かったんですよね。
荒木 その辺りも、ちゃんと入っているんですよ。ヒトラーの、空の描き方の特徴とかそういうものまで出てくるんですね。
「お隣さんはヒトラー?」7月26日公開です。
もう1本ね。次も噂話が元になっています。人類が初めて月に立ったのが1969年ですね。アポロ11号が人類初の月面着陸に成功したんですけど、例のアームストロング船長のこの一歩は偉大な一歩だ…ってね。
ところがこのアポロ11号の月面着陸、本当は月に行っていなくて、映像はハリウッドの映画スタジオで撮影して、それをテレビで流したのだという都市伝説のような噂話が昔から根強くあるんですね。
鈴木 あります、あります。大好きその都市伝説!

荒木 これからご紹介する作品、現在公開中なんですが「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」というタイトルなんですが、この都市伝説「映像でっち上げ説」を逆手にとって作った、とても面白いコメディです。
ストーリーは69年、当時のアメリカ。月に最初にアメリカ人を送り込むというアメリカの国家プロジェクトNASAが「アポロ計画」のスタートから8年、ソ連に後れをとった上に失敗続きだったわけです。
国民の関心も薄れつつあったわけです。当時のニクソン大統領の側近たちは、これはまずいと状況を打開するべく、PRマーケティングのプロあるケリーさんというスカヨハ様が演じている、やり手の女性をNASAに送り込みます。
つまりPRで盛り上げようというわけです。ケリーさんは、あの手この手でNASA のイメージ戦略を仕掛けて国民の注目を集めていきますが、NASAの発射責任者コールはそんな彼女のやり方に反発しています。
そんな中、アポロ11号が打ち上げられることになるわけですが、その寸前 ニクソンの側近から今回は絶対に失敗できないので「月面着陸のフェイク映像」をスタジオ撮影してテレビ放映するぞ、という前代未聞の極秘ミッションがケリーに告げられるというところからはじまります。
鈴木 ありそう。絶対あった気がする。
荒木 絶対失敗しちゃだめだって・・ね。アポロ11や月面着陸に関する作品はこれまでにも数多く作られていますね。この「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、そのどれとも違ってとてもよかったです。まず、なんといってもスカヨハ様、魅力的ですねー。
鈴木 彼女が出てたら、荒木さんは何の作品でも名作って言うでしょ。
荒木 そうなんですよ。彼女の作品はほぼ見てますけどこういう素敵な女性役はあまり見たことがないです。
鈴木 いい感じですか?
荒木 60年代のファッションがすごく似合って、彼女の着る服のセンスの良さ。原色着るんです、ピンクとか黄色とか、身体にフィットして体形がモロに出てて、盛るような白人女性の典型的な髪型と真っ赤なルージュもね。
鈴木 あの…おっちゃん、おっちゃん!(笑)。
荒木 私の眼が大喜びでしたよ。端的に言ってこの映画はスカーレット・ヨハンソンを見るだけでも価値があります。話が横に行っちゃいました。で、相手役には、チャニングテイタムです。この人、筋肉もりもりでちょっと頭のほうは弱い役が多かったので初めしっくりこなかったですけど、スカヨハ様が好きなので思わず夢中になってしまいました。
1969年当時、私も月着陸生中継の映像をライブでテレビで見ていました。夜10頃だったかな。
鈴木 興奮しました?
荒木 ただただ凄いなーと思うだけで、紙芝居みたいなモノクロですけど。その時はフェイク画像なんてことは露とも考えませんでした。
鈴木 キューブリックの軍団でしたよ、多分、おそらくあれは。
荒木 (笑)そうかもしれないね。フェイクだという話、実に多くあるんですよね。星条旗がはためかないとか、星が映ってないとかね。
鈴木 影が逆だとかいろいろあります。
荒木 その後 アメリカによる有人火星探査を描いたSF映画「カプリコン・1」。
鈴木 知ってます。
荒木 有人火星探査に失敗したNASAがそれを隠すため、室内に火星セットを作り火星への着陸シーンを撮影する内容でした。このあたりが月着陸フェイク説の元になったんじゃないかと思うんですけどね。
鈴木 ありそうだから凄いんだよなあ。
荒木 この映画、ちゃんと逆手にとって上手く作ってありますよ。最後のバタバタも含めてとてもよく考えられている脚本です。
鈴木 よく考えられた脚本で、スカーレット・ヨハンソンさんが出て、もう名作中の名作、アカデミー賞100個とってもいいくらいですね。
荒木 そうです!この2作品、とても拾い物というか・・・
「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」現在公開中です。スカヨハ様賛歌になってしまいました。
鈴木 荒木さん個人的には、NASAの月のあれはあったと思います?
荒木 これは本当でしょう。流石にそこまでは…、いくらアメリカでもやらないよっていうか。
鈴木 だってさ、あの時に行けた人類が、なんで50年以上も月に行けてないの?
荒木 あの時の月に着陸した痕跡を映せばそれは簡単に証明できるんじゃないかって話もあるんですよね。なかなかそれもやらないっていうのは、そういう噂を裏付けるのかもしれないけど、あの当時の科学力でよく行けたなってのもありますけどね。
鈴木 そうですよ、中国は月の裏側まで行っちゃうって、どうなってんの みんな?って。
荒木 月の裏側の鉱石を自分のものだとか、月は自分の領土だとかいう時代じゃなくて、行ったんだか行かないんだって騒いでた時代が懐かしいですね。
鈴木 ちょっとロマンがありましたね。ありがとうございます。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。