「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のとっておき情報

(2024年10月7日12:30

映画評論家・荒木久文氏が「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、9月30 日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

鈴木      よろしくお願いします。

荒木      いきなりお知らせで恐縮です。試写会プレゼントのお知らせです。 10月17日(木)午後6時半から、東京千代田区の一ツ橋ホールにて行われる黒木華主演の「アイミタガイ」という映画試写会です。この試写会に6名をご招待します。

鈴木      これは、3組6名様という感じですか?

荒木      そういうことです。女性の友情を描いたとても感動的なストーリーです。ご希望の方はあとでダイちゃんから応募方法をお知らせしますので、東京近辺の方ふるってどうぞという感じですけど。よろしくお願いします。

鈴木      ありがとうございます。

荒木      さて、今日のご紹介する映画、「シビル・ウォー アメリカ最後の日」というタイトルの作品です。

      
アラキンのムービーワンダーランド/「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のとっておき情報
      
「シビル・ウォー アメリカ最後の日」(全国公開中)(©2023 Miller Avenue Rights LLC; IPR.VC Fund II KY.  All Rights Reserved.)(配給:ハピネットファントム・スタジオ)       

鈴木      あっ!出た。

荒木      「シビルウォー」って英語的に言うと「市民戦争」ですが…。

鈴木      だけど、やっぱり南北戦争になりますよね。

荒木      そう、基本的には、内戦、内乱という意味で、一般的には、アメリカが南北に分かれて戦った内戦を言うわけです。「南北戦争」と呼ぶわけです。 そこから来ているタイトルですが、これは未来の話です。 10月4日公開「シビル・ウォー アメリカ最後の日」というタイトルです。 アメリカで内戦戦争が起こったという映画ですが、いろんな意味で怖い映画「ホラー」という感じです。単に怖いと言うより現実的にひしひしと迫る怖さみたいな…。 ダイちゃんも予告で見てると思うけど、戦場のど真ん中にいきなり放り出されたような映像体験ですよね。ただの戦争映画じゃないということです。
  あらすじです。 近未来のアメリカが舞台です。ご存じのようにアメリカは50州からなる国家なんですけど。考え方によっては州という国が集まっているアメリカ連邦と言ってもいいですね。 その連邦政府から19の州が離脱して、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と呼ばれる軍隊と政府軍の間で内戦・戦争が起こり、各地で激しい武力衝突が繰り広げられている…という状況です。

鈴木      テキサスとカリフォルニアが手を組むってあり得なさそうですけどね。

荒木      そうなんです。この設定なんですけど、テキサスとカリフォルニア、ふたつの州が手を組むって有り得ない設定ですよね。

鈴木      そう思います。保守的と革新派というか、青と赤は、確実に青と赤ですからね。

荒木      そうですよね、テキサスは最も保守的、カリフォルニアは最もリベラル。対照的な2つの州が連合を組むという意表を突いたというところが凄いですね。

鈴木      逆にいうと、面白いですよね。

荒木      まあ、どうしてかはわからないんですけど、後で、監督のインタビューからご紹介しますけど、設定が凄いんです。もっとも日本でも幕末に仲の悪かった薩摩と長州が手を組むって事ありましたからね。

鈴木      そうか、あり得るな。

荒木      そんなことで、ふたつの州を中心にした反乱軍と政府軍の間で戦争が起こっているという前提ですね。 アメリカ大統領は、権威主義的な人物で自分たちの勝利が近いことをアピールするんですけど、本当は大統領府のあるワシントンD.C.にテキサス・カリフォルニア中心の反乱軍が目前に迫っているということなんです。そんな中、女性カメラマンのリーという女の人をはじめとする4人のジャーナリストが大統領にインタビューを行おうと、ニューヨークからワシントンDCに車で出発します。 その途中が戦場なんです。どちらかの軍にいつ殺されるのかわからないという、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていくわけなんですけど、主人公は従軍記者ですけど、彼らは案内役で主体は戦争なんですね。出演は、ダイちゃんも好きな、スパイダーマンの初代のガールフレンド役だったかな、キルステン・ダンストです。ちょっと、おばちゃん感じになったんですけどね。

鈴木      あはははは。いい感じじゃないですか。

荒木      そして重要な役で、「プリシラ」や「エイリアン・ロムルス」の、あの可愛いケイリー・スピーニーも出てきます。売れっ子ですよね。 「エクス・マキナ」などを作った、アレックス・ガーランドというイギリス人が監督・脚本を手がけています。現実のアメリカ社会の分断、危機感を本当に上手く描いてますね。A24制作なんです。めちゃくちゃな金をかけてますよ。

鈴木      見た感じ、そういう感じしますか?

荒木      そうですね。で、あり得ない設定っていう、さっきダイちゃんが言った、カリフォルニアとテキサスが手を組むなんてね…。これはどうしてそうしたのか、監督はハッキリ言いません。というのは、どっちにもあまり感情移入して欲しくないということで、訳わかんなくしてあるんですね。

鈴木      なるほど。なんとなく現実的じゃないことをやれば、ある意味、映画は映画ですもんね。

荒木      そう、さらに、大統領が権威主義的と言うだけで反乱軍がリベラルなのか保守的なのか、その逆なのか、まったく分からないんですよ。わざと観客がどちらかに共感できないようにはっきりさせないようにしてあるんです。 細かく見ると、大統領イメージはちょっとトランプっぽいし、政府軍がファッショ的ぽいとは思うのですが、最後のほうのを見ると、それもわからなくなります。そうでもないのかな?とも思ったり…。

鈴木      えーっ?結末というか、答えは出るんですか?

荒木      あー、見方によっては出てるし、見方によっては出ない。その辺は微妙ですね。

鈴木      そうなんだ。

荒木      そして、内戦はふつうゲリラ戦が基本なのですが、アメリカ軍もこの映画ではそれぞれ分裂しているようで、それぞれの軍がどっちについているのかわからないです。装備も軍備も見た目一緒でジャーナリストが出くわすのが、どっちかわからないというとても怖いですね。 大量虐殺の残酷シーンも出てくるのですが、監督も、どちらがやっているのかわからないようにわざとそうしたと言っています。どっちにも共感できないようにということです。最初に言ったように、これホラー映画なんですね。

鈴木      ミステリーとか、サスペンスじゃなく、ホラーですか?

荒木      あきらかにホラーです。しかも本当に起こりうるホラーです。 多分、10年15年前だったらこの映画は相手にもされなかったでしょうね。

鈴木      今、リアリティありますよ。

荒木     そう ダイちゃんが言ったように、それって南北戦争のこと?時代劇?ぐらいだったんでしょうけど、近年の、特に最近のアメリカ内部の動きを見ていると、国家や国民の分断が本当に進行していると思えてならないですよね。こういう背景の中で、この映画が描いている事態が起こりかねないというのをみんな感じているので、既にアメリカでは、大ヒットしているんですね。 今年11月、大統領選挙でしょ。もしトランプが勝てば、前回を上回る大規模な反トランプデモが起こるでしょうし、トランプが負けても、彼は前回同様負けを認めなくって、議事堂攻撃のような武力衝突があるかもしれないですよね。

鈴木      どちらが当選しても、悲劇が待ってるんじゃないかって、皆さん仰ってますもんね。

荒木      トランプは、「私が敗北したら多くの血が流れる」と不気味な発言していますからね。

鈴木      なんなんですか?

荒木      現実として起こるかもしれない恐怖が、この映画の価値を高めていると言っても過言じゃないですね。時代の落とし子的な作品とも言えるでしょう。

鈴木      実際の、アメリカの南北戦争、1860年代に起きた戦争とは、今起きたら、テクノロジーも違うからね。

荒木      そうなんですよ。

鈴木      ねっ。ただのドンパチじゃないじゃないですか。

荒木      最後の、ワシントンの攻防戦が凄いですよ。ヘリ、戦闘機、戦車、歩兵部隊。リアルな米兵を使ったらしいですよ。特に音です。例えば狙撃音、ライフルや機関銃の音。実際に火薬を通常より多く詰め込んでるんですって。

鈴木      そうなんだ。

荒木      後で、いくらでも爆発音を入れられるのにわざとやっているんですよ。するとね、俳優たちが直反応してビビって、うわっ!とか言って、本当に演技じゃない反応するんですって。

鈴木      それがリアルなんでしょうね、やっぱり。

荒木      他にも、爆発音とか悲鳴とか、ヘリの音だとか。だから、ダイちゃん!見る時は絶対IMAXかDolby推奨です。ちょっとお金かかっても楽しめますから。音が命の映画ですからね。

鈴木      じゃあ、音響設備がしっかりしたシアターに行った方がいいよっていう、アドバイスですよね。

荒木      そうですね。

鈴木      なるほどー。

荒木      あとは音楽です。ちょっと僕はわからないんですが、音楽は、スーサイドのいろいろな曲が使われてますけど、これ、アメリカのアンダーグラウンドミュージックですよね。

鈴木      アメリカっていっても、アンダーグラウンドって、実はメジャーですもんね。聴いてる方が多いし。

荒木      途中 戦闘シーンなんかにね、どっちかというと乾いた感じっていうか、明るい感じの音楽が入ってくるんですよ。それが、なんとも違和感というか、映像との落差が凄くてですね、これも面白いです。あとで聴いていただこうと思うんですけど。 最後に、私はこの映画を見て、ふたつのことを考えましたね。ひとつは、物理的な戦争じゃなくて、一般のアメリカ市民が内戦に対してどう動くのかなあというところなんですね。そこは、あんまり描かれてないんですけど、内戦というと、アフリカのルワンダや、ボスニア・ヘルチェゴビナの例を持ち出すまでもなくて、つい昨日までお隣同士で仲良く暮らしていた人たちが、血みどろの殺し合いを簡単に始めるんですね。この映画でも、多少そういう場面があります。

鈴木      そうですか。

荒木      お前は純粋なアメリカ人なのか?という、ちょっと白人至上主義的なものとかあるんですけど。逆に戦争がないものとしての暮らしている人たちも描かれていたりするんですね。ふたつめが、人それぞれの好みもあると思いますけど、私としては、もっと内戦に至る経緯とか、なぜ反乱軍部隊が優勢なのかとか、そういうバックグラウンドが知りたいと思っちゃいました。 そして まず、戦争になると、当然、経済の崩壊が起きるでしょう。この映画の中でも、ガソリンがものすごく高くなって、米ドルが下落してですね、カナダドルの方が価値がある場面も出てきます。もっと興味深いのは、国際関係です。アメリカで内戦が起きれば、中国は真っ先に動いてくるでしょう。南北朝鮮、中東イスラエル、もしかしたら、別の地域で核兵器が使われるような事態が起こるかもしれないし。

鈴木      アメリカと敵対している国は、アメリカで内戦が起きたら嬉しい、喜ぶ方、たくさんいると思いますよ。

荒木      超嬉しいですよ。

鈴木      間違いなく、周りは混乱を好みますから。

荒木      他にも、直接・間接侵略なんてのもあって、ま、アメリカは弱くなったとは言え、世界の警察菅。そういうところが分裂して機能しなくなったら一斉に国際バランスが崩れるでしょうね。 そこも見たいと思ったけど、そこまで突き詰めると、もう1、2本映画が必要なんでしょうね。そんなことを考えて見ていたら、目の前の直接的な恐怖、戦場におかれた恐怖もあるけど、目に見えない恐怖を感じてさらに怖くなりました。

鈴木      アメリカの今の分断の状況って、この映画の予告編でも出ていましたけど、いわゆる今までだったらアメリカ人っていったら、白人がいたり、黒人がいたり、ヒスパニック、エイジアンがいるってことで、肌の色で何となく分別されてたけど、今だったらアメリカ人って言われても、おまえはどっちのアメリカ人だ?って。そういうことって、一番怖ろしい分断ですよね。宗教とかでもまったくなくて、思想ですもんね。

荒木      トランプ的なのか、反トランプ的なのかって。そういう感じになってきちゃいますもんね。現代のアメリカの矛盾点を凝縮して突っ込んだような戦争映画でした。本当に怖い映画です。これは、今劇場で見るべき映画だと、私は思いました。

鈴木      アメリカで大ヒットしているんですものね。

荒木      そうですね。

鈴木      それが、いいのか悪いのかわからないけど。

荒木      本当ね。そういう映画です。今日は一本勝負です。 10月4日公開「シビル・ウォー アメリカ最後の日」というのをご紹介しました。

鈴木      サウンドトラックとか、映画の劇中に使われている、デ・ラ・ソウル使いしているって形なんで、デ・ラ・ソウルのナンバーもお送りしたいと思います。ありがとうございます。

      
アラキンのムービーワンダーランド/「シビル・ウォー アメリカ最後の日」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊨と鈴木氏)         

   ■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

   ■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。

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