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映 画

「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」のとっておき情
(2024年10月30日11:00)
映画評論家・荒木久文氏が「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、10月14 日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 スポーツの日の荒木さん、よろしくお願いします。
荒木 こんにちは。今日はスポーツの日だったね。
鈴木 我々は、やっぱり体育の日ってイメージですよね。昔は、10月10日でしたからね。
荒木 そうですね。スポーツの日に、スポーツとは全く関係なくお贈りします。この前、「シビル・ウォー」をご紹介しましたよね。大ヒットしているらしいですが、今日ご紹介する作品も、今年後半の超目玉と言っても過言ではない話題作のひとつです。
わかった?当ててください。
鈴木 「ジョーカー」。

荒木 そうです、おっしゃる通り!「ジョーカー2」こと「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」という作品。公開中なので、見た方いらっしゃると思うんですけど、今日はその「ジョーカー」について、まだ見たことのない人にもわかりやすいように説明していきます。ジョーカーとは人の名前ですが、そもそも何者か?ダイちゃんわかりますよね? もともとはあのバットマンの敵役です。「バットマン」シリーズに登場するディランですよね。彼を主人公にした映画として、誕生秘話を描いた2019年の「ジョーカー」が有名です。ダイちゃんも見てらっしゃいますよね?
鈴木 めちゃ面白かったし!なんかドキドキしたなあ。
荒木 ドキドキしましたね。監督はトッド・フィリップス、主演はホアキン・フェニックス。この作品は、R15+指定でしたよね。にもかかわらずR映画指定として初めて10億ドル、1千500億円か。超える大ヒットでしたね。
鈴木 すごい売れ方ですね!
荒木 べネチアとアカデミー賞では11部門ノミネートで、ホアキン・フェニックスが主演男優賞を受賞しました。見ててめちゃ面白かったって言うんですが、これ、映画としては難しかったでしょう?
鈴木 難しかったし、ジョーカーにスポットライトを浴びさせて主人公にして、ホアキン・フェニックス主演で、あの内容でホアキン・フェニックスが主演男優賞取るくらいに熱演だったわけじゃないですか。
荒木 確かにそうですね。
鈴木 だから、ストーリーの内容以上にホアキン・フェニックスの芝居凄いなぁと思って見てたもん。
荒木 今回も凄いですよ。今回は極限まで痩せてね、背骨とか頬骨とか、ガイコツに皮を張り付けたような感じで、熱演ですよ。
今回はこの「ジョーカー」の続編、「ジョーカー2」なんですけど、ご覧になっていない方のためにまず、「ジョーカー」を復習しておきましょう。
鈴木 お願いします。
荒木 「ジョーカー2」の2年前ですね、オリジナルは。コメディアンを夢見る心優しい彼は、大都会の片隅でピエロの大道芸人をしながら、どん底の生活から抜け出そうともがき続けますが、理不尽だらけの世の中で、殺人事件を立て続けに起こしてしまうんですね。
ダイちゃんが言ったように大ヒットしたんですが、僕は、この映画難しいもんだったんで、よくヒットしたと思いました。
鈴木 あの1作目が?
荒木 そうですね。ひとつには、映画のどこまでが真実で、どこまでが彼の妄想かわからないところありましたよね?そのうえ、画面に時計が映ると、その時計が必ず11時11分だったなど、細かいことにこだわるようですが、そういうことを見ると、いろいろな議論や考察を呼んで、ある種の社会現象を巻き起こした作品ですね。
鈴木 意外と現実的じゃないところ、いっぱいあるなぁ。
荒木 でしょう!だから、社会病理学の面からも注目された作品でしたよね。とにかく大ヒットしたんで、今回の「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」、まだ見てないんだよね?
鈴木 まだ見てないです。
荒木 この作品 以前から各方面で注目を浴びてました。ストーリーなんですが、舞台はゴッサムシティ、明らかにニューヨークなんですけど。アーサー・フレック、つまりジョーカーは病院兼監獄のようなところで、前の回で起こした殺人の裁判を待つ日々を送っています。前の事件では、理不尽な社会を告発する代弁者として、一部の民衆からヒーローに祭り上げられていました。それ以降、彼は悪のカリスマとして絶大な人気を持ち始めていたんです。世の中は擁護派、ジョーカー支持の動きが日々激しくなっていきます。そんな時、彼の前に現れたのが謎の女性リーです。なんとあのレディー・ガガです。するとジョーカーの狂気と言うかサイコ的な悪のカリスマ的な、何かまあ感情みたいなものが彼女にも感染していくというお話なんです。



鈴木 フォリ・ア・ドゥっていうのは、そういう意味なんでしょう?なんとなく。
荒木 そうなんです。フランス語で、二人狂いとでも訳すのでしょうか?ひとりの妄想・狂気がもうひとりに感染し、2人ないし複数人で妄想を共有するということ。
鈴木 怖い、怖い。
荒木 怖いよね。で、レディー・ガガが新たに参加して、なんか一層の狂気漂う作品になっていますね。でもねこの映画、ダイちゃんが見る前に言うのもなんなんですが、とにかく今年後半、一番びっくりした作品です。
鈴木 びっくりした作品?
荒木 はい。ていうのは、皆さんも見ていただけなければわからないんですけど、いろんな意味でびっくり映画の超問題作と言っていいと思います。
鈴木 どういうこと?
荒木 これね、いわゆる法廷劇、法律劇ね。法廷がメインになります。殺人で裁かれる…。そして監獄ストーリーです。しかも音楽的要素をふんだんに入れたミュージカルというと怒られちゃいますが、音楽がらみ映画なんですよ。なんのことか、更にわからないですよね?半分が監獄兼病院、残りが裁判所。
鈴木 暗いなあ(笑)。
荒木 歌を歌う場面が3分の1ほどありますかね。この作品では、ジョーカーとリーっていう役のガガが、一種唐突に数々の名曲を歌い出します。
鈴木 サントラも、スタンダードのカバーが多いですもんね。
荒木 そうなんです、スタンダードが多いんです。最初、えー?ッとびっくりしますが、そのうちだんだん引き込まれるんですよ。ガガは当然なんですけど、ホアキン、すごいいい声なんですよ。
鈴木 今回、なんか怪しい感じで歌ってるじゃないですか。
荒木 でしょ?初め、吹替えかと思ってたんですが、そんなことないみたいですね。ちょっと聞いてみましょうか…。 ♪~ 歌が上手いんですよね、この歌の数々が、前回にはなかった女性主人公ともいうべきリーの強烈な登場、この作品には必要不可欠だという人いますよね。
鈴木 なるほどー。
荒木 歌映画って、今の日本では少ないよね。突然歌が入って来ちゃうのは、昔の、日活の歌謡映画とかありましたけど(笑)。
鈴木 あれ、ちょっと見てる方も困るんですよね。突然歌われるとね(笑)。
荒木 えっ? とか思っちゃうもんね。アイテムとして歌の表現はないことはないと思いましたね。レディー・ガガは見方によっては、彼女の存在感がこの映画の中心、ミソですよね。
鈴木 あの人、何でも歌えるから、ガガは。
荒木 演技も凄いですよ。リーという名前で出ているので、ダイちゃんもご存じのように、彼女がハーレクィーンになるのかなって、そう思って見てる人もいるみたいなんだけど、どこにもそんなこと書いてないんですよ。誰も言ってないし。
けど、ガガが出演したことによって、第3作「ジョーカー3」で女ジョーカー・ハーレクインが出て来そうという人もいます。
鈴木 「ジョーカー3」に繋がる雰囲気…満載ですか?
荒木 ま、ありますでしょう。
鈴木 あはははは。ありますか?やっぱり!
荒木 今回の評判がどうかってのがあるんですけどね。ハーレクィーンは、もちろん前に、もう既に出てますね。マーゴット・ロビーがやっていますよね。
鈴木 出ていますね。
荒木 マーゴット・ロビーに繋がるハーレクィーンになるのか、異次元なのか、まだわからないというね。ただ、リーという女性は、マーゴット・ロビー比べると、狂気の質が違いますね。
鈴木 質が違う?
荒木 うん、なんかね、マーゴット・ロビーってわりかし顔も派手だし、前に出るでしょ!怖さがね。レディ・ガガはね、瞳の奥に暗い恐怖って言うね…。
鈴木 それ!内にこもる系が一番怖いですよ。内包するパターンが!
荒木 そう!それが怖いんですよ。だから、もしかしたらマーゴット・ロビーがハーレクィーンで再登場するかもしれませんけど…。
鈴木 そしたら、レディ・ガガはなになんですかね?
荒木 なんですかねー。この作品、もともと、あまりに前作が完璧すぎたために、作る必要がないんじゃないかって言われてたこともあるんですよ。それもまた、凄いことですよね。
鈴木 1作目で終わるというつもりで作ったんですか?それとも、最初から3作、4作作るつもりで…。
荒木 一作集中でしょう。だから全力をかけて作って、あれだけいい映画になって、そしたら、もうやることないでしょ!って周りから言われたらしい、監督がね。更にもうひとつ言えるのは、前作にあった現実と妄想の割合が前よりもっと増えているんですよ。
鈴木 いやー、なんか暗い雰囲気だなー、それ。ゴッサムシティ自体が暗いんだからさー、そもそも。
荒木 今回のゴッサムシティは、そんなに暗くないんですけどね。バットマンの時よりはね。とにかく、あんまり細かく言っちゃいけないんで。もう十分喋ってしまってますけどね。
鈴木 あはははは。
荒木 友だちと、終わったら十分時間をかけて語りあうのには、とてもいい作品だと思いますよ。私は消化する為の時間が欲しいって言うのが、正直な感想でした。
鈴木 これは、荒木さん的には、もう一回見たいパターンですか?
荒木 見ないとしかたないという感じかな。
鈴木 あっ!えーっ!?
荒木 わかんないことが多すぎて。しばらく思考判断停止の状態も続いたし、いや、2回見たくなる作品ですよね。ダイちゃんも見に行って表現し難い私の気分を、是非味わってください。ということで…。
ご紹介した作品は「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」という、10月11日から公開の作品です。是非見に行ってください。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。