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映画
第18回アジア・フィルム・アワード(AFA) 「敵」作品賞・主演男優賞など6部門、『ナミビアの砂漠』主演女優賞・新人監督賞にノミネート
(2025年1月11日12:00)


アジア全域版アカデミー賞「第18回アジア・フィルム・アワード」(AFA)のノミネーションが10日、発表され、映画「敵」(1月17日公開)が作品賞、監督賞、主演男優賞など6部門にノミネートされた。また『ナミビアの砂漠』で山中瑶子監督が新人監督賞、河合優実が主演女優賞にノミネートされるなど日本の7作品が計15部門でノミネートされた。授賞式は3月16日、香港で行われる。
日本からは、作品賞、監督賞、主演男優賞(長塚京三)、助演女優賞(瀧内公美)など6部門の候補として、昨年の東京国際映画祭(TIFF)でグランプリ含む3冠に輝いた吉田大八監督の『敵』がノミネートされた。
また、カンヌ映画祭監督週間で国際映画批評家連盟賞を受賞し話題になった『ナミビアの砂漠』から山中瑶子監督が新人監督賞、河合優実が主演女優賞に、同じく新人監督賞にはベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門で上映された『HAPPYEND』の空音央監督が選ばれた。
さらに助演男優賞には、37回TIFFで黒澤明賞を受賞した三宅唱監督作品『夜明けのすべて』から光石研、またカンヌ国際映画祭のある視点部門に選出された『ぼくのお日さま』(奥山大史監督)の池松壮亮がWノミネート、そして昨年のTIFFアジアの未来部門で上映された『黒の牛』(蔦哲一朗監督)、『箱男』(石井岳龍監督)がそれぞれ各賞に選ばれるなど、日本の7作品が計15部門にてノミネートされた。
本年は、アジア25の国と地域より30作品のノミネート(全16部門)があり、チャン・ジェヒョン監督の『破墓/パミョ』(韓国)が作品賞を含む最多11部門でノミネート。作品賞は他に、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞したパヤル・カパーリヤー監督の『All We Imagine as Light』(インド他)、第37回TIFFのガラ・セレクションで上映されたグァン・フー監督作品『ブラックドッグ』(中国)、また同じく昨年のTIFFガラ・セレクションで上映され、今回9部門でノミネートされているソイ・チェン監督の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』(香港)がノミネートされ、日本の『敵』と最優秀作品賞を競う。
審査員長は、昨年のTIFFでマスタークラスのチケットが即日完売し、今なお高い人気を誇る、国際的に高い評価を受ける映画界の伝説的な存在で監督の、サモ・ハンが務め、世界から集まる他審査委員メンバーおよび200人を超える投票者である映画人とともに、今年の受賞者を決定する。
サモ・ハンは「アジア・フィルム・アワードの審査委員長を務めるができ、大変光栄です。責任の重い役割ではありますが、仲間たちと協力しながら、アジア映画界の発展に引き続き取り組みたいと思います」とコメントを寄せた。
また、AFA アンバサダーに俳優として初めて就任するディーン・フジオカ、ユース・アンバサダーになった岡田将生が、他3人のアジアのスターとともに、AFAの授賞式に一緒に登壇するだけでなく、その他の関連イベントに参加し、ファンや映画好きとの交流を通じて彼らの作品やアジア映画への情熱について語る予定。
AFAの授賞式は、今年も香港で開催されます。西九龍(ウエストカオルーン)文化地区の【戯曲センター(Xiqu Centre)】にて2025年3月16日(日)に開催予定。AFAA公式YouTubeチャンネルでもライブ配信予定。(https://www.youtube.com/@AsianFilmAwardsAcademy)
【アジア・フィルム・アワード (主催:アジア・フィルム・アワード・アカデミー)】
2007年に創設されたアジア映画を対象とした映画賞。東京国際映画祭は2013年より、香港国際映画祭、釜山国際映画祭と共にアジア・フィルム・アワード・アカデミーを創設し、アジアの映画業界と連携し、その年のアジアの映画人を表彰しスポットライトを当てることでアジア映画ファンの創出、世界へのアジア映画の振興、文化交流を図っています。
アジア・フィルム・アワード公式サイト:http://www.afa-academy.com
■「敵」日本映画最多6部門でノミネート

SF作家・筒井康隆の同名小説を『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の監督・吉田大八が映画化した新作映画『敵』は、作品賞、監督賞(吉田大八監督)、主演男優賞(長塚京三)、助演女優賞(瀧内公美)、撮影賞(四宮秀俊)、衣装賞(宮本茉莉)の計6部門にノミネートされた。日本映画としては最多。
本作の主演には、『ザ・中学教師』(92)で初主演を飾り、『ひき逃げファミリー』(92)で第47回毎日映画コンクール男優主演賞、『瀬戸内ムーンライト・セレナーデ』(97)で第21回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、1974年にフランスで俳優デビューしてから実に50年、名優として日本映画、ドラマ、舞台の歴史に名を刻んできた長塚京三。2013年公開の『ひまわり〜沖縄は忘れない あの日の空を〜』以来、12年ぶりの主演映画となる。“理想の上司像”の印象も強い長塚が、本作では元大学教授・渡辺儀助を演じ、人生の最期に向かって生きる人間の恐怖と喜び、おかしみを同時に表現する。清楚にして妖艶な魅力をもつ大学の教え子には瀧内公美、亡くなってなお儀助の心を支配する妻役には黒沢あすか、バーで出会い儀助を翻弄する謎めいた大学生には河合優実。そのほか松尾諭、松尾貴史、カトウシンスケ、中島歩ら実力派俳優陣が脇を固める。
小説「虚人たち」で泉鏡花文学賞を、「夢の木坂分岐点」で谷崎潤一郎賞、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞を受賞するなど受賞歴多数、「時をかける少女」等でも知られる原作の筒井康隆。文壇・メディアとの戦いを経て、生き抜いてきた自身が描く老人文学の決定版である「敵」の映画化にあたり、筒井は「すべてにわたり映像化不可能と思っていたものを、すべてにわたり映像化を実現していただけた」と本作を絶賛。吉田監督は「自分自身、この先こういう映画は二度とつくれないと確信できるような映画になりました。」と自身の新境地を見せる。
アジア・フィルム・アワードは、2007年に香港国際映画協会によって設立され、“アジア全域版アカデミー賞”とも言われており、これまで『パラサイト 半地下の家族』(19/ポン・ジュノ監督)や『ドライブ・マイ・カー』(21/濱口竜介監督)など、世界中の映画祭や賞レースを席巻した作品が受賞している。
『敵』についても、第37回東京国際映画祭にて東京グランプリ、最優秀男優賞、最優秀監督賞の3冠を達成し、その後、昨年11月に行われた台北金馬映画祭の「Windows On Asia部門」に選出、12月には上海国際映画祭の「Japanese Week」に招待され、数千人の劇場が一瞬で埋まるなど、国内外の映画祭で絶賛の渦を巻き起こしている。
今回はアジア25の国と地域より30作品のノミネート(全16部門)があり、過去に同映画賞で6部門でのノミネートとなった作品には、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』(18/是枝裕和監督)や、第80回ヴェネツィア国際映画祭にて銀獅子賞を受賞した『悪は存在しない』(23/濱口竜介監督) がある。
吉田監督は「素晴らしいアジア映画のお祭りにお招きいただき、本当に光栄です。苦労を共にしてきた俳優やスタッフたちと喜びたいと思います。もちろんまだ何かを貰ったわけではありませんが、数ヶ月後の楽しい予定がひとつ決まっただけでもだいぶ気が楽になりました。関係者一同浮かれそうな気持ちをグッと抑えて、1月17日の公開へ向け鋭意宣伝活動中です。何卒よろしくお願いします」とコメントを寄せた。
なお今後も、AKI-NO 日本映画祭(イスラエル)、ヘルシンキ・シネアジア映画祭(フィンランド)、香港国際映画祭(香港)、アイルランド日本映画祭(アイルランド)、ウーディネ・ファーイースト映画祭(イタリア)など、世界中の映画祭への出品が決定している。