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黒川検事長が辞表提出 明日閣議で正式に辞職承認も「訓告」処分に「軽すぎる」の声

(2020年5月18日)

黒川検事長が辞表提出 明日閣議で正式に辞職承認も「訓告」処分に「軽すぎる」の声
(黒川検事長=東京高検のHPから)

東京高検の黒川弘務検事長(63)は21日、週刊文春が報じた賭けマージャン疑惑を認めて辞表を提出した。明日の閣議で正式に辞任が認められる。一方、法務省が訓告処分としたことに「軽すぎる」「高額な退職金を支払ったら内閣総辞職に値する」(立憲民主党・安住国会対策委員長)などの批判の声が噴出し、さらには安倍首相の任命責任を問う声が上がるなど波紋はさらに広がっている。

■黒川検事長が謝罪コメント「猛省しています。検事長職にとどまることは相当ではないと判断し、辞職を願い出た」

黒川検事長は法務省の聞き取り調査に対し賭けマージャンをしたことと、産経新聞記者が用意したハイヤーに乗ったことを認め、辞表を提出した。明日の閣議で辞任が正式に決まる。
黒川検事長は同日「本日、内閣総理大臣宛てに辞職願を提出しました。この度報道された内容は、一部事実と異なる部分もありますが、緊急事態宣言下における私の行動は、緊張感に欠け、軽率にすぎるものであり、猛省しています。このまま検事長の職にとどまることは相当でないと判断し、辞職を願い出たものです」とのコメントを公表した。

■黒川検事長の処分が「訓告」に「軽すぎる」「なぜ懲戒免職ではないのか」の声

一方で森法相が21日の官邸での会見で「まことに不適切というほかなく、きわめて遺憾です」と強調した後に「監督上の処分として訓告としました」と語ったことに耳を疑った人も多かったのでは。ネット上には「軽すぎる」「なぜ懲戒免証ではないのか」という声があがっている。

訓告とは「国家公務員法82条が定めている懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)とは異なり、法律上の処罰とならない比較的軽い実務上の処分の1つで、業務違反の際に口頭又は文書で注意をする処分であり、給与や昇格に影響はないことも多い」とされる。懲戒処分にしない”大甘処分“で、高額な退職金はそのまま支払われる可能性は高いとみられるのだ。

そもそも「賭けマージャンは刑法の賭博罪に問われる場合があり、法定刑は50万円以下の罰金とされる。例外規定として”飲食代など一時的な娯楽に供するものを賭けただけの場合処罰されない」という。今後黒川検事長らが刑事告発される可能性もあり、「訓告」で一件落着とはいきそうにない。

■立憲民主党・安住国会対策委員長「政府が辞任を認め高額な退職金を支払ったら、国民は黙っておらず、内閣総辞職に値する」

立憲民主党の安住国会対策委員長は「政府が辞任を認め高額な退職金を支払ったら、国民は黙っておらず、内閣総辞職に値する。森法務大臣や安倍総理大臣には大きな政治責任が発生したので、しっかり追及するが、黒川氏の定年延長を決めた閣議決定も撤回するべきだ」としてさらに追及する方針を明らかにした。

■レートはいくらでどれぐらいカネが動いていたのか?

週刊文春によれば、黒川検事長は緊急事態宣言が出ているなか、5月1日と13日、都内の産経新聞記者の自宅マンションで、同記者と同僚記者、朝日新聞の元検察担当記者と4人で賭けマージャンをして、産経新聞記者が用意したハイヤーで帰宅したと報じた。「賭けマージャンは賭博罪に該当する上に、接待や財産上の利益強要を受けている場合、国家公務員倫理規定に抵触する恐れがある」と指摘している。
同誌は7~8年前に黒川氏をよく乗せていたという元ハイヤーの運転手の「動くのは少ない時でも4~5万円」「ある記者が『今日は十万円もやられちゃいました』と言っていた」などとする証言も報じている。



■朝日新聞社「4人は3年間にわたって、月2~3回程度、1回の勝ち負けは1人当たり数千円~2万円程度」

朝日新聞(電子版)は21日、賭けマージャンに参加した50代の元記者の男性社員から聞き取った内容を公表した。「社員は5月1日と13日、東京都にある産経新聞社会部の記者の自宅マンションで、同記者と同社の次長、黒川氏の計4人で、夕方から深夜や翌日未明にかけ、現金を賭けてマージャンをしていた。同じ部屋に各自が持ち寄って飲食もした。いずれの日もマージャンが終わった後に、社員はタクシーで1人で帰宅した。
13日は産経新聞記者と社員が数千円勝ち、産経新聞次長と黒川氏がそれぞれ負けた。1日は社員が負けたという。4月13日と20日にも同じ場所でマージャンをした」としている。

「4人は、5年ほど前に黒川氏を介して付き合いが始まった。この3年間に月2、3回程度の頻度でマージャンをしており、集まったときに翌月の日程を決めていた。1回のマージャンで、勝ち負けは1人あたり数千円から2万円ほどだったという。<br> 社員は東京社会部の司法担当記者だった2000年ごろ、黒川氏と取材を通じて知り合った。 2017年に編集部門を離れ、翌年から管理職を務めていた。黒川氏の定年延長、検察庁法改正案など、一連の問題の取材・報道には全くかかわっていない。<br> 社員は「緊急事態宣言下に軽率な行動をとったことを深く反省しています」と話している」と報告した。

そして岡本順・朝日新聞社執行役員広報担当のコメントも併せて発表した。 「社員が社内でのヒアリングに対し、検事長とのマージャンで現金を賭けていたことを認めました。新型コロナ感染防止の緊急事態宣言中だったこととあわせて社員の行動として極めて不適切であり、皆さまに不快な思いをさせ、ご迷惑をおかけしたことを重ねておわびします。取材活動ではない、個人的な行動ではありますが、さらに調査を尽くし、社内規定に照らして適切に対応します。また、その結果を今後の社員教育に生かしてまいります。」としている。

報告にある「3年間にわたって、月2~3回程度」は単純計算すると「3年間で72回~108回程度」になり、数百万円が動いたとみられ、常習性があり悪質とみられる。

■元文部科学事務次官・前川喜平氏「検事長の任命権者は法務大臣ではない。内閣だ」

安倍首相と森法相は21日、口裏を合わせたかのように、1月の閣議決定や検察法相改正案は「法務省が提案した」と言っていたが、元文部科学事務次官・前川喜平氏はツイッターで「検事長の任命権者は法務大臣ではない。内閣だ。だから黒川検事長は内閣総理大臣に辞表を出した。定年延長も辞職の承認も内閣の権限。アベ首相は責任を免れない。」と指摘した。

法務省は改めて賭けマージャンのレートや動いた金額なども調査して公表し、その上で「訓告」の処分が妥当なのかを国民に詳しく説明すべきではないだろうか。そして、1月に閣議決定で黒川検事長の定年を延長して、今度はそれを合法化する検察庁法改正案を提出した安倍内閣の責任が問われ、真相究明が待たれる。