「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督、潜水艇事故を非難「タイタニック事故に似ている」　「タイタンの根本的な欠陥」指摘

潜水艇で死亡した5人の乗客の一人であるオーシャンゲートのストックトン・ラッシュCEOは以前、炭素繊維で作られた潜水艇はチタンよりも強度対浮力比が優れていると信じていると述べ、この素材でタイタンを製造するという決定を擁護していたという。

キャメロン監督は、世界中でどれほど多くのダイビングが事故がなく行われているなかで、タイタンの事故が起きたことに特に驚いていると語った。

潜水艇の安全性に関するグローバル・スタンダードは「ゴールド・スタンダード」であり、特にこれまで潜水艇で死亡した人がいないという。1960年代にはいくつかの事故があったが、それ以来大きな事故はなく、それ以来基準は飛躍的に向上している、と監督は付け加えた。

キャメロン監督がタイタニック号を見るために乗ったロシアの潜水艇は、「非常によく理解された設計手法」で作られ、「完璧な操作記録」を持つパイロットによって操作されていたという。タイタニック号を取り巻く厳しい環境にもかかわらず、常に「大きな信頼」を抱いていたと付け加えた。常にもう1隻の潜水艦が海中にいるというシステムで潜っていたため、万が一事故が起きても、生命維持装置、通信手段、電源が確保されているという安心感があったという。「私たちは常に、かなり安全な場所にいると感じていました」とキャメロン監督。

タイタン号を運営するオーシャンゲートは2021年の声明で、「タイタンは専門家であるエンジニアやメーカーと協議して建造・設計され、複数の安全システムを備えている」と述べていたという。

だが監督は、深海潜水コミュニティのメンバーは、タイタンの安全対策について以前から警鐘を鳴らしてきたと語った。「これは成熟した技術であり、コミュニティーの多くの人々がこの潜水艦について非常に懸念していたと指摘した。深海潜水技術コミュニティーのトップクラスの人たちが、彼らのやっていることは乗客を乗せるには実験的すぎる、認証が必要だ、などと会社に手紙を書いたりもしていたという。

ほとんどの潜水艇は、乗客を乗せた球体を船の他の部分から切り離し、浮上させることができるなど、「自己救助のための複数の方法」を備えている。タイタンには「そこまでの冗長性と自己救助能力はない」とも指摘した。

キャメロン監督はタイタンの破片が発見され、5人全員の死亡が発表された23日（現地時間）にもABCニュースに出演。「潜水艇が悲劇的な爆発を起こしたのは、カーボンファイバー複合構造の船体のせいだ」と非難した。
「外圧がかかる船には複合材は使いません。例えばスキューバ・タンクのような内圧容器には最適ですが、外圧には最悪です」。潜水艇の設計者は潜水技術よりも航空工学に頼っており、そのアプローチが爆発につながったと指摘した。「私たちは皆、これは欠陥のあるアイデアであり、彼らは認証を受けなかっ。あれは致命的な失敗だったと思います。炭素繊維は潜水するたびにダメージを蓄積していく」と指摘した。

ジェームズ・キャメロン監督は「タイタニック」やアーノルド・シュワルツェネッガー主演の「ターミネーター」シリーズ、「アバター」シリーズなどで知られるハリウッドの巨匠。
タイタニック号沈没事故を題材にした、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウインスレット共演の「タイタニック」（1997年）はアカデミー賞の作品賞、監督賞など11部門で受賞し、同監督の「アバター」（2009年）に抜かれるまで、歴代世界史高興行収入（21億8523万ドル＝約3059億円）を記録。セリーヌ・ディオンが歌く「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」も大ヒットした。