Plusalphatodayツイッター

なかにし礼さん死去 82歳 「昭和のヒットメーカー」が熱く訴えた反戦平和の想い

(2020年12月27日23:00)

「天使の誘惑」、「北酒場」など数々のヒット曲の作詞を手掛け、「長崎ぶらぶら節」で直木賞を受賞、コメンテーターなど多彩な活躍で知られた作詞家で直木賞作家のなかにし礼(本名・中西禮三=なかにし・れいぞう)さんが23日午前4時24分、心筋梗塞のため死去した。82歳だった。葬儀は家族葬で執り行い、後日お別れの会を開く予定。喪主は妻・中西由利子さん。

なかにし礼さん死去 82歳 「昭和のヒットメーカー」が熱く訴えた反戦平和の想い
「作詩家・作家生活50周年記念 なかにし礼と75人の名歌手たち」(発売元日本コロムビア)

中西さんは、黛ジュンが歌った「天使の誘惑」(1968年)、菅原洋一の「今日でお別れ」(1970年)、細川たかしの「北酒場」(1982年)で3度日本レコード大賞を受賞。さらに北原ミレイの「石狩挽歌」、黒沢年男の「時には娼婦のように」(1978年)、奥村チヨの「恋の奴隷」(1969年)、いしだあゆみの「あなたならどうする」(1970年)、アン・ルイスの「グッド・バイ・マイ・ラブ」(1974年)、石原裕次郎さんの「わが人生に悔いなし」(1987年)など4000を超す曲の作詞を手掛け「昭和のヒットメーカー」として一世を風靡した。2015年にリリースされたCD4枚組「作詩家・作家生活50周年記念 なかにし礼と75人の名歌手たち」(発売元日本コロムビア)=上の写真=に、なかにしさんが作詞を担当したヒット曲の数々が収録されている。

さらには「長崎ぶらぶら節」(2000年)で直木賞を受賞し小説家としても活躍。満州からの引き上げ体験を題材にした「赤い月」は100万部を超すベストセラーになった。

2012年3月に食道がんの発症を報告。心臓が弱く手術や放射線治療には耐えられないと思い、自ら調べて陽子線療法で克服して同年10月に復帰したが2015年3月にがんが再発した。同年9月に再発したがんが消え活動を再開。2016年4月に、植え込み型除細動器(ICD)と心臓ペースメーカーを体内に埋め込みこむ手術を受けたという。1か月ほど前から持病の心疾患で入院していたという。

■”究極の世界平和ソング“「リメンバー」

なかにしさんは折に触れて反戦平和への熱い想いを訴えた。2013年11月11日、オペラ歌手の佐藤しのぶと記者会見して”究極の世界平和ソング“「リメンバー」を発表した。同年10月末日にリリースされた同曲は、核兵器根絶を願う佐藤がなかにしさんに作詞を依頼。なかにしさんが平和活動を行うオノ・ヨーコが広島を訪れたときに語った「リメンバー、ヒロシマ、ナガサキ」をモチーフにして「リメンバー ヒロシマナガサキ 過ちは繰り返さない」「遠くとも核なき世界を めざして手をつなぎ みんな歩き始めよう!」と「核なき世界」の実現を呼びかける歌詞を作詞した。

さらに2014年12月、東京・西新宿のライブハウスで「なかにし礼絵本詩集『金色の翼』発売記念ライブ『平和の申し子たちへ!』(文化放送主催)を開始して、初のライブに挑戦した。なかにしさんは詩の朗読、トーク、「時には娼婦のように」などの生歌も披露した。この曲は黒沢年男が歌ってヒットしたが、なかにしさんが自分で歌ってレコーディングしたバージョンもある。
トークでは「平和というのは戦争がない、しないというだけではなく、国家、権力というものが国民を決して圧迫しない束縛しないことが大事」などと訴えた。

なかにし礼さん死去 82歳 「昭和のヒットメーカー」が熱く訴えた反戦平和の想い
「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」(毎日新聞社刊)

■詩集「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」で訴えた反戦・平和のメッセージ

なかにしさんの反戦・平和の思いを込めた2冊の本が前出のイベントのメインテーマだった。1冊は詩集「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」(毎日新聞社)で、もう1冊は「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」などの詩とその英訳、そして宇野亞喜良氏のイラストをコラボした絵本詩集「金色の翼」(響文社)だった。
「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗を始めよう」はこう始まる。


「二〇一四年七月一日火曜日
集団的自衛権が閣議決定された
この日 日本の誇るべき
たった一つの宝物
平和憲法は粉砕された
つまり君たち若者もまた
圧殺されたのである
こんな憲法違反にたいして
最高裁はなんお文句も言わない
かくして君たちの日本は
その長い歴史の中の
どんな時代よりも禍々しい
暗黒時代へともどっていく
そしてまたあの
醜悪と愚劣 残酷と恐怖の
戦争が始まるだろう」

と集団的自衛権の閣議決定に強い憤りと危機感を吐露している。

「しかし君に戦う理由などあるのか
国のため?大義のため?
そんなもののために
君は銃で人を狙えるのか
君は銃剣で人を刺せるのか
君は人々の上に爆弾を落とせるのか」

などと若者に訴え掛けて「泣きながら抵抗を始めよう」とメッセージを送る内容になっている。

■集団的自衛権の閣議決定

それまで政府は、憲法9条の下では、自国が武力攻撃を受けていない状況下でわが国が同盟国等のために武力行使をすること(集団的自衛権の行使)は許されない、としていたが、安倍内閣は2014年7月1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権の行使を禁じた憲法の解釈を変更して、日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようにした。

■長男・康夫さんコメント「父は最期まで格好良く色気があっていい男でした」

なかにしさんの長男の中西康夫さんは25日、事務所を通じてコメントを発表した。以下コメント全文。

「この度は突然の訃報でお騒がせしております。
やりたい事や伝えたい事がまだまだあったと思うので残念でなりません。
父の作品にはいつも父が伝えたい事が深く書かれていました。
その想いを感じて頂きながらこれからも父の作品と親しんで頂けましたら幸いです。
父は最期まで格好良く色気があっていい男でした。
激動の昭和から現代までを生き抜いてきた人です。
最期は家族だけで静かに見送らせて下さいますよう宜しくお願い申し上げます。
  長男 中西 康夫」