カンヌ2冠「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホら韓国俳優が来日記念舞台あいさつ

(2022年6月27日17:10)

カンヌ2冠「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホら韓国俳優が来日記念舞台あいさつ
舞台挨拶を行った(左から)是枝裕和監督、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン、イ・ジュヨン(26日、東京・港区のTOHOシネマズ六本木ヒルズ)

カンヌ映画祭で韓国人俳優初の最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホ(55)ら「ベイビー・ブローカー」の韓国俳優陣が来日して、是枝裕和監督(60)とともに26日、都内で来日記念舞台あいさつを行った。

今回来日したのはソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン、イ・ジュヨンら主要キャストの4人。同作は5月28日(現地時間)に閉幕した第75回カンヌ国際映画祭でガンホが最優秀男優賞を受賞し、さらにキリスト教関連の国際映画組織がコンペティション部門の中から「人間の内面を豊かに描いた作品」に与える 「エキュメニカル審査員賞」も受賞し、合わせて2冠の快挙となった。

「パラサイト 半地下の家族」のプロモーション以来約2年ぶりの来日となったソン・ガンホは、「こんにちは、ソン・ガンホです」と日本語で挨拶。そして「およそ2年ぶりにみなさんの前でこうしてご挨拶させていただき光栄です。この映画は日本と韓国に限った特別な話ではなく、私たちが生きている中で感じる様々なことを伝えている映画だと思います」と語った。

カン・ドンウォンも「こんにちは、お久しぶりです。カン・ドンウォンです。来ていただいてありがとうございます」と日本語で日本のファンに語りかけた。

イ・ジウンも日本語で「こんにちは、IUです」と挨拶し「空港にたくさんのみなさんが来てくださり歓迎してくださいました。また、多くの人が既にこの映画をご覧になっていて『よかったよ』という言葉をかけていただけて、とても気分がいいです」と笑顔で語り手応えを口にした。

イ・ジュヨンも日本語で「こんにちは。私はイ・ジュヨンです」と挨拶し「みなさんにお会いできて本当に嬉しいで す。昨日は、監督と俳優のみなさんとおいしい日本料理も味わいました」と笑顔で明かした。

是枝監督は「遡ると15年ほど前に釜山の映画祭で『韓国人の俳優で映画を撮るなら誰を主演に撮りたいですか?』と聞かれ てソン・ガンホさんの名前を出させていただいて、そのインタビューを終えて、帰ろうとエレベーターを待っていたら扉が開いて ソン・ガンホさんがいたんですね。その偶然を何かの縁があるんだろうと思っていたんですが、こういう形で作品に結実して、日本での公開をこうやってキャストと迎えられたことを嬉しく思っています」と感慨深げに語った。

■ソン・ガンホ「是枝監督の作品は全て拝見していてファンでしたし、尊敬する監督」

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ソン・ガンホ

ソン・ガンホはカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞が発表された瞬間について「カンヌの映画祭は名前が呼ばれるまで、全く結果がわからないので、とても緊張した瞬間でした。ステージに上がってからは『是枝監督と素晴しいキャストのみなさんに感謝 申し上げます』とスピーチをしたことは覚えています」と振り返った。今回、赤ちゃんの“ブローカー”という役柄をオファーされた時の心境については「約6年前でしたが、釜山映画祭で初めて話を伺ったときは、是枝監督の作品は全て拝見していてファンでしたし、尊敬する監督でしたので、ぜひ是枝監督の新しい作品で…と いうことでとてもワクワクし、ときめきました。『どのような役でもやらせていただきたいです。光栄です』とお伝えしました」と明かした。

是枝監督はソン・ガンホにこの役をオファーしたことについて「映画の中で、ソン・ガンホさんが初めて登場するシーンを思いついて、そこだけ書いたんです。その時は3~4枚の短いストーリーでした。ただその時点のプロットにソン・ガンホさんとカン・ドンウォンさんとペ・ドゥナさんの名前は書いていて、夢が叶ってこういう形になりました」とうなずいた。

■カン・ドンウォン「現場でもすごく優しくて最高の監督」

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カン・ドンウォン

カン・ドンウォンも「監督の作品は大好きで、いつかお会いして、お仕事をご一緒できればという思いがありました。実際にご一緒することになり、お会いしたら、現場でもすごく優しくて最高の監督でいらして、本当に素晴しい経験になりました」と語った。会ってみて抱いていた印象と違った部分は? という質問に「特に印象が変わった点はありません。いつ も変わらず優しく、現場で楽しそうに撮影されていて、撮影が終わる頃はとても寂しかった記憶があります」と述懐する。
カン・ドンウォンは、韓国で誕生日を迎えた是枝監督をお祝いしたそうで「良いことなのか悪いことなのか… (笑)? 監督がひとりで誕生日を過ごされると聞いて、食事に誘いました」とニッコリ。是枝監督は「2年連続でドンウォンさん とソウルで誕生日を祝いました。よかったです」と微笑んだ。

カンヌ2冠「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホら韓国俳優が来日記念舞台あいさつ
イ・ジウン

■イ・ジウン「いくつもの設定を立体的に表現できるようにと監督とも話し合いながら演技しました」 今回、赤ちゃんを赤ちゃんポストに預ける母親という難しい役どころを務めたイ・ジウンは「これまでドラマに出演したことは ありましたが、長編映画は初めてで、そこは挑戦でした。私が演じたソヨンは、様々な設定があってキャラクターを説明する修飾がいっぱいある人物でした。このいくつもの設定を立体的に表現できるようにと監督とも話し合いながら演技しました」と振り返った。

■イ・ジュヨン「私にとって長く忘れられない思い出になる作品」

カンヌ2冠「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホら韓国俳優が来日記念舞台あいさつ
イ・ジュヨン

ブローカーらを追う刑事を演じたイ・ジュヨンは「私も是枝監督の大ファンでしたし、先輩の俳優のみなさん、普段から気になっていた俳優さんとお仕事することができたので、現場で多くのことを学んで、感じるという姿勢で臨んでいました。プロモーショ ンも含めて素晴らしい経験を積めたと思いますし、私にとって長く忘れられない思い出になる作品だなと思います」と実力派俳優陣と共に是枝作品に出演できた喜びを口にした。

是枝監督は、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナの3人に関しては以前から面識があり、プロットの時点であて書きをしたことを明かし、イ・ジウンとイ・ジュヨンの2人に関しては「コロナ禍で家で韓国ドラマにハマって、そこで見て本当に『うわっ!』と印象に残った2人にお声がけしました」と説明。イ・ジウンがアーティストのIUとして韓国はもちろん、日本でも絶大な人気を誇る点を踏まえ「昔からのファンのみなさんには申し訳ないです、僕はにわかファンなので…(苦笑)。夢が叶って、理 想的な、思い描いたとおりのキャスティングが実現して、僕が一番幸せな現場でした」と笑顔を浮かべていた。

イ・ジウンは是枝監督の言葉に「実は、監督が音楽や作品を通じて私のことを知る前に、一度、韓国で監督を見かけたことが あったんです。その時、私は監督のファンでしたが、監督は私のことを知らない状況だったので、挨拶したいと思いつつ、出来ずに通り過ぎました。それから1年以上が経って、監督の作品に参加できて、私の音楽も知っているということは、すごく不思議な気分です」と不思議な運命のめぐりあわせがあったことを明かした。

イ・ジュヨンは「私は大学にいて、まだ映画のことを学んでいた頃に、監督の作品を見に行くような普通の学生でした。数年たって、監督が私の出演した作品を見て、私という女優を知っているということ自体、不思議な経験でありすごく幸せです」と彼女も不思議な巡り合わせに思いをはせる。

今回の来日にあわせて多くのファンが空港で彼らを出迎えたが、ソン・ガンホは「成田空港に降りた時、イ・ジウンさんは日本でも有名なスターであり、日本の多くのファンが来るだろうと話に聞いていましたが、実際に100人を超えるファンが集まった そうです。でもカン・ドンウォンさんを見るために集まったのは3人だったそうです。ちなみに、私は5人来てくださっていました (笑)。なので、とても気分が良い1日になりました!」と茶目っ気たっぷりに語り会場は笑いに包まれた。

是枝監督は「だいたい、現場はいつもこんな感じで、ソン・ガンホさんがカン・ドンウォンさんをイジって楽しむといい。僕は大 好きです」と嬉しそうに語っていた。

最後の挨拶でキャストを代表してマイクを握ったソン・ガンホは「この映画は、日本の監督と韓国のキャストが一緒に作ったということが大事というよりは、日本人であっても、韓国人であっても、私たちが生きている社会の中の私たちの姿、私たちの隣 人の姿、また人生の価値が描かれた作品となっています。国を越えて、誰にとっても共感できる温かい物語だと思います。みなさんにもその思いを受け取って、共感していただける、そんな意味ある時間として記憶されてほしいと願っています。ありがとうございました」と呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。

■是枝監督「この物語が人間の命をどう考えるべきか? それを登場人物たちが悩む話だなと…」

そして、是枝監督は「6年前に書いたプロットは実はすごくシンプルな話でしたが、映画を撮るために韓国に渡って、ベイビー ボックス(赤ちゃんポスト)の周辺の人たちへの取材を重ねたのが、とても良かったなと思っています。取材をすればするほど、この物語が人間の命をどう考えるべきか? それを登場人物たちが悩む話だなと…ちょっとずつ、最初に思い描いた話から 変わっていきました。撮影を始めてからも変わっていくというプロセスを経て、今日、みなさんに観ていただく作品になってます。僕の映画はいつもそうかもしれませんが、明快な答えが最後に待っているというより、登場人物たちと同じように見た方た ちも旅を続けながら、一人の赤ちゃんの運命を一緒に考えていただけたら嬉しいです。楽しんでください」と呼びかけ、舞台挨拶は幕を閉じた。

カンヌ2冠「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホら韓国俳優が来日記念舞台あいさつ
「ベイビー・ブローカー」(ⓒ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED)(配給:ギャガ)

■「ベイビー・ブローカー」のストーリー

赤ちゃんを高く売る、ただそれだけのはずだった… 古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウ ォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジン(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。〈赤ちゃんポスト〉で出会った彼らの、特別な旅が始まる―。

■先週末の動員数で初登場3位のヒットスタート

24日に公開された「ベイビー・ブローカー」は先週末(24日、25日)の観客動員数が「トップガン マーヴェリック」、「ドラゴンボール超スーパーヒーロー」に次いで3位のヒットスタートとなった。(興行通信社調べ)同日に初日を迎えた作品の中では「それいけ!アンパン ドロリンとバケールるカーニバル」(4位)、「ザ・ロストシティ」(7位)、「鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」(8位)を上回ってトップだった。