ジョニー・デップ、名誉棄損裁判は「苦戦」といわれるなか「ヨーロッパで休養」

(2022年5月12日11:50)

ジョニー・デップ、名誉棄損裁判は「苦戦」といわれるなか「ヨーロッパで休養」
法廷で証言するハード㊧とデップ(Twitter/@CourtTV)

ジョニー・デップ(58)がアンバー・ハード(36)との裁判で苦戦を強いられると専門家が指摘した。そうしたなかデップは裁判が休廷に入りヨーロッパで休養しているという。米メディアが報じた。

米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、デップは、ハードに対する名誉毀損訴訟で苦しい戦いに直面しているという。そして、デップがあまりにも有名であるという事実が、裁判に勝つことをさらに難しくしていると、法律の専門家が同紙に指摘した。

デップの弁護団は、クライアントの知名度の高さのために、名誉棄損を立証するのにより高い法的ハードルをクリアしなければならないという。
「米国の憲法修正第1条は、公共の関心事について議論する権利を保護するもので、今日では間違いなく有名人の生活も含まれる」と、米カリフォルニア州のエンターテインメント関係の弁護士ミルタ・アホウリアン氏は同紙に指摘した。

米国では名誉毀損の裁判は一般的に勝つのが難しく、有名人が絡むとさらに難しいという。被告(ハード)の側の「現実的悪意」を証明する負担が加わるからだという。「彼はこの追加的な負担を負っており、それは簡単なことではない」とアホウリアン氏は述べた。 「私の意見では、どちらも名誉を傷つけられたという基準を満たすことはできないでしょう」と言い、「おそらく、どちらの側にも勝ち目はないでしょう」と付け加えた。


「現実的悪意」とは、虚偽の発言が事実でないことを知りながら行われたこと、あるいは無謀に行われたこと、つまり自分の発言が事実かどうかをわざわざ確認しなかったことを証明することが必要だという法的基準だという。

一方、有名人の場合、その人の既存の評判が加味されることから、このケースではデップの助けになるという。「ジョニー・デップはおおむね評判の良い人です。平均的なアメリカ人が彼について知っていることは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのような非常に人気のある映画でしょう」という。そして「陪審員たちが、彼のことをすでに知っていて、彼を好きで、彼を信頼しているような気持ちで臨むなら、彼はそこでいくらか自然な優位性を享受せずにはいられないでしょう」と元カリフォルニア州判事で現在は刑事弁護人のハリム・ダニディナ氏は同紙に指摘した。

マライア・キャリーの兄、モーガン・キャリーがマライアを訴えた名誉毀損訴訟で代理人を務めるニューヨークの弁護士リチャード・アルトマン氏は、デップの訴訟を「薄いケース」と呼び、「なぜこの訴訟が棄却されなかったのか理解できない」と述べた。「ハードの論説記事は具体的な事実を指摘していないので、意見のように見えます。虐待されたという女性が、虐待されたことを書いている。意見に対して名誉毀損の訴訟を起こすことはできない」と指摘した。

そうしたなか、判事のスケジュールの都合で休廷(現地時間16日に再開)になっていることから、デップはヨーロッパで過ごしているという。「ジョニーはヨーロッパで数日間休養し、旧友と付き合い、音楽を演奏し、田舎で散歩している」と関係者は語った。

デップに近い関係者によると、デップは「自分の正当性が証明された」と感じており、「自分の言い分を伝えることができた」ことに安堵しているという。

デップは、2018年12月にワシントン・ポスト紙に発表した「家庭内虐待を代表する公人」とするコラムをめぐり、ハードに名誉毀損で5000万ドル(約65億円)の損害賠償を求めて提訴している。ハードはエッセイの中でデップの名前を出していないが、彼の弁護士は、2016年に離婚を申請した際にハードが行った家庭内虐待の疑惑を明らかに言及しているためデップを中傷していると主張している。

これに対してハードは、デップが彼女のキャリアや人生を台無しにするための「中傷キャンペーン」を行っていると主張し“倍返し”の1億ドル(約130億円)の損害賠償を請求して反訴している。

2人はこの主張をめぐって先月11日から4週間にわたりバージニア州の裁判所で争ってきたが、審理はハードが2回目に証言台に立った5月5日から休廷に入り、16日から再開され、ハードが再び証言台に立つ予定だという。

■「現実的悪意」とは

ウィキペディア:現実的悪意(げんじつてきあくい、英: actual malice)は、アメリカ合衆国連邦最高裁の判例上、名誉毀損に基づく損害賠償請求を認めるにあたって要求される要件としての、表現者の認識。現実の悪意とも訳され、この概念を用いた上記判例法理のことを、現実の悪意の法理又は現実的悪意の法理という。
現実の悪意の法理とは、公人が表現行為(典型的にはマスメディアによる報道)の対象である場合、行為者が、その表現にかかる事実が虚偽であることを知ってて、又は、虚偽であるか否かを無謀にも無視して表現行為に踏み切ったことを原告が立証しない限り、当該表現行為について私法上の名誉毀損の成立を認めない、とするものである。

■ジョニー・デップVSアンバー・ハードの”バトル“の経過

2012年に「ラム・ダイアリー」で共演したのがきっかけで恋愛関係になり、同年デップは長年のパートナーだったヴァネッサ・パラディ(45)との破局を発表。14年にハードと婚約して翌年2月に結婚したが、わずか1年3か月の結婚生活で16年5月にハードが離婚を申請。酒に酔ったデップからDVを受けていたとしてあざができた顔写真を公開して波紋を広げた。デップはDVを否定していたが17年8月にデップが700万ドル(約7億6300万円)を支払うことで離婚が成立した。これで一件落着かと思われたが続きがあった。

2018年10月、デップが雑誌「GQ」(英国版11月号)のインタビューで、ハードに対するDVを全面否定して、ハードのDV告発で「シンデレラからカジモド(「ノートルダム・ド・パリ」の登場する醜悪な容姿の男)にされた」などと激しく非難。さらにハードが同年12月ワシントン・ポストに手記を寄せて、(デップの名前は出さず)DVを告発したら脅され、決まっていた役を降ろされるなど報復されたと主張して、そうした米国の文化・社会構造を変える必要があるなどと訴えた。

その後デップが「ワイフ・ビーター」(妻虐待夫)と報じた英紙「サン」を訴え、さらにワシントン・ポストに手記を書いたハードを名誉棄損で提訴した。ロンドンの裁判所で行われたデップが「サン」を訴えた名誉棄損裁判では、壮絶な夫婦喧嘩やデップのベッドにウンチが置かれていた“ウンチ事件”、デップの指切断事件、デップのドラッグ使用歴、ハードの3P疑惑など前代未聞の暴露合戦が繰り広げられた。判決は「サン」の記事は「おおむね事実」として名誉棄損の訴えは棄却されデップは敗訴。控訴も棄却されデップの敗訴に終わった。

2022年4月12日(現地時間)、ハードが2018年12月に米紙ワシントン・ポストに寄稿したコラムで名誉を棄損されたとしてデップがハードに5000万ドル(約62億5000万円)の巨額賠償金を請求した訴訟が米バージニア州フェアファックスの裁判所でスタート。双方のさまざまな証人が証言し約6週間続く予定。ハードは、デップが匿名のアカウントを使って誹謗中傷を繰り返したなどとして1億ドル(約125億円)を請求して”倍返し“の反訴をしている。

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