カンヌ映画祭パルムドールはリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」はソン・ガンホが男優賞

(2022年5月29日7:15)

カンヌ映画祭パルムドールはリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」はソン・ガンホが男優賞
2度目のパルムドールを受賞したリューベン・オストルンド監督(カンヌ国際映画祭の公式サイトから)

第75回カンヌ国際映画祭で28日夜(日本時間29日未明)、コンペティション部門の審査結果が発表され、パルムドールはスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」(原題:Triangle of Sadness)が受賞した。同監督は「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(2017年)以来2度目のパルムドール受賞。是枝裕和監督(59)の韓国映画「ベイビー・ブローカー」(6月24日公開)は、ソン・ガンホ(55)が男優賞を受賞した。

■ルーベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」

カンヌ映画祭パルムドールはリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」はソン・ガンホが男優賞
記者会見するリューベン・オストルンド監督(左から2人目)とウディ・ハレルソン(右から2人目)ら出演者(カンヌ国際映画祭の公式サイトから)

「トライアングル・オブ・サッドネス」(悲しみのトライアングル)はウディ・ハレルソン、ハリス・ディキンソン、シャールビ・ディーン、ウディ・ハレルソンらが出演の2022年の映画。
モデルのセレブカップルのカール(ハリス・ディッキンソン)とヤヤ(シャールビ・ディーン)が、ハレルソン演じるアルコール依存症でマルクスの言葉を引用する風変わりな船長の超富裕層向けの豪華クルーズに招待される。ロシアのオリガルヒ、イギリスの武器商人などが乗客にいて、すべてがインスタ映えするような世界が広がるが、嵐が吹き荒れ、乗客は船酔いしてしまい、カールとヤヤは、億万長者たちや船の清掃員とともに無人島に置き去りにされる。釣りができるのは清掃員だけという状況のなか、階級がひっくり返る―といった内容。

オストルンド監督はスウェーデンの映画監督・脚本家・プロデュ―サーで2004 年の「Gitarrmongot」が第27回モスクワ映画祭のFIPRESCI賞を受賞。2011年に短編映画「Händelse vid bank」が第60回ベルリン国際映画祭で金熊賞(短編映画部門)を受賞。そして2017年の作品「ザ・スクエア 思いやりの聖域」で第70回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しており2度目のパルムドール受賞なるか注目されていた。米「バラエティ」誌は「トップガン マーヴェリック」を含め、これまでの映画祭で「最も高い評価を得た」と指摘していた。

■是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」のソン・ガンホが男優賞

カンヌ映画祭パルムドールはリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」 是枝裕和監督「ベイビー・ブローカー」はソン・ガンホが男優賞
男優賞を受賞したソン・ガンホ(カンヌ国際映画祭の公式サイトから)

是枝監督は「万引き家族」(2018年、第71回)以来2度目のパルムドールはならなかったが、主演のソン・ガンホが男優賞を受賞し、映画祭の正式な賞とは別にキリスト教関連団体が独自に贈るエキュメニカル賞を受賞した。
過去に今村昌平監督が「楢山節考」(1983年の第36回カンヌ国際映画祭)と「うなぎ」(1989年)の第50回)で2度パルムドールを受賞している。

是枝監督は同作で初めての韓国映画の監督を務めた。米アカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門で受賞したポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」(2019年)に主演した韓国のトップ俳優ソン・ガンホが主演を務め、「MASTER/マスター」のカン・ドンウォン、是枝監督の「空気人形」(2009年)に出演しているペ・ドゥナ、韓国のトップ歌姫IU(イ・ジウン)、Netflixの大ヒット韓国ドラマ「梨泰院クラス」のイ・ジュヨンなどのキャストで、子供を育てられない人が匿名で赤ちゃんを置いていく「ベビー・ボックス」に預けられた赤ちゃんをこっそり盗んで横流して稼ぐベイビー・ブローカーの男2人が養父母を探しの旅に出る物語。同作は26日(現地時間)に上映され、12分間のスタンディングオベーションで迎えられた。
また、「PLAN 75」の早川千絵監督(45)にカメラドール(新人監督賞)の特別表彰が贈られた。

■コンペティション部門の受賞

パルムドール(最高賞) 「トライアングル・オブ・サッドネス」(リューベン・オストルンド監督)
グランプリ(最高賞に次ぐ賞) 「スターズ・アット・ヌーン」(クレール・ドゥニ監督)、「クローズ」(ルーカス・ドン監督) 
監督賞 パク・チャヌク(「別れる決心」)
男優賞 ソン・ガンホ(「ベイビー・ブローカー」)
女優賞 ザール・アミール・エブラヒミ(「ホーリー・スパイダー」)
脚本賞 タリク・サレー(「ボーイ・フロム・へブン」)
審査員賞 「帰れない山」(フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン、シャルロッテ・ファンデルメールシュ監督)、「EO」(イエジー・スコリモフスキ監督)
第75回記念賞 ジャンピエール&リュック・ダルデンヌ監督(「トリとロキータ」)