Plusalphatodayツイッター

「無頼」 EXILE松本利夫らが無頼の徒を熱演 井筒和幸監督8年ぶりの新作

(2020年12月15日21:30)

「無頼」EXILE松本利夫らが無頼の徒を熱演 井筒和幸監督8年ぶりの新作 
「無頼」(東京・新宿区のK’s cinema)

「ガキ帝国」、「パッチギ」などで知られる井筒和幸監督の「黄金を抱いて跳べ」以来8年ぶりの最新作。敗戦直後から高度成長時代を経てバブル崩壊までの時代を背景に、裏社会で裏切りと抗争を繰り返しながら生き抜くヤクザたちの群像劇を骨太に描いた作品。主人公の井藤正治にEXILEの松本利夫、その妻に柳ゆり菜のほか、中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅、木下ほうかなど個性俳優がそろって無頼の徒たちのディープなドラマを繰り広げる。

■ストーリー

敗戦後、貧困と無秩序の焼け跡から日本人が立ち上がろうとしていた1945年、一人の少年・井藤正治は家の屋根のトタンをはがして売ったりして、持ち前の負けん気でたくましく生き抜いていた。青年に成長した正治(松本利夫)は、その腕っぷしの強さと体を張った生き様で裏社会に入り込んでいき、親分の川野(小木茂光)に認められて配下になり一家を構えてはみ出し者たちを束ねていた。そして妻の佳奈(柳ゆり菜)に支えられながら、文字通り命掛けでヤクザ社会でのし上がって行く。

■みどころ

デビュー作の「ガキ帝国」(1981年)をはじめ「犬死せしもの」(1986年)、「岸和田少年愚連隊 BOYS BE AMBITIOUS」(1996年)、「パッチギ!」(2005年)などで、アウトローやはみ出し者を生き生きと描いてきた井筒監督。8年ぶりの新作についてこう語っている。
「本作『無頼』でスクリーンを彩るのは、欲望の昭和を徒手空拳で生き抜いた、文字どおり無頼の徒たち。本来、ネガとポジは表裏一体。アウトロー社会という今の世間からは排除されたネガ画像を通して、僕なりの昭和史を逆照射してみたいという思いもあります。時代は昭和から平成、令和へと写っても、貧困や差別、孤立は何も変わっていません。ことの是非を語るつもりは毛頭ない。ただ、こんなふうに無頼な生き方を通して男たちがいたということを、現代の若者に見せたいと思ったんです。そしてフィルムを通じて、くじけるな、寄る辺なき世界を生き抜けと励ましてあげたい。それがこのシャシンに込めた、映画作家としての僕の願いです。」(映画「無頼」の公式サイトから)

主人公・井藤世治の少年時代から壮年時代まで描いたヤクザ大河ドラマといった骨太の作品になっている。その世治の生きざまをEXILEの松本利夫が奔放に演じているほか、柳友ゆり菜が世治に寄り添う妻役を熱演。そして中村達也、ラサール石井、小木茂光、升毅、木下ほうからが無頼の徒を熱演している。世治が川野の配下に入る時の伝統的な儀式や、究極の縦社会ともいえる親分子分の人間模様、ダンプで敵対組織に突入したり、融資を拒否した銀行にバキュームカーで乗り付け糞尿をホースでぶちまくシーン、はたまた世治が刑務所に入る時に全裸になって身体検査されるシーンなど数々のエピソードの描写もリアル。そして世治を取り巻くファミリーの人間ドラマも鉄火場を生き抜く者たちだけに濃厚な関係が描かれている。健さんの仁侠映画や文太の「仁義なき戦い」シリーズに感情移入していた世代にとって、松本演じる親分世治の誕生会で歌手が小林旭の「熱き心に」を熱唱し、世治が感無量で聞き入るシーンなどに胸に迫るものを感じるに違いない。 (12月12日公開)