「２１ブリッジ」チャドウィック・ボーズマンさんNYの闇に立ち向かう刑事役を熱演

「ブラックパンサー」などで知られ昨年８月大腸がんのために４３歳の若さで死去したチャドウィック・ボーズマンさんがNYPD（ニューヨーク市警）の刑事役で主演した２０１９年の作品。大量のコカインを強奪し警官を殺害して逃亡した２人組の強盗をニューヨークの熱血刑事が追跡する迫真のクライムアクションで、ボーズマンさんのほかに「アメリカン・スナイパー」のシエナ・ミラー、「セッション」でアカデミー賞助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズなどのキャスト。監督は「ゲーム・オブ・スローンズ」などのブライアン・カーク。ボーズマンさんが脚本にほれ込んで「アベンジャーズ／エンドゲーム」の監督を務めたルッソ兄弟ともに製作にも名を連ねた。

■ストーリー

退役軍人のマイケル・トルヒーリョ（ステファン・ジェームズ）とレイ・ジャクソン（テイラー・キッチュ）はワイナリーに隠されていた数キロのコカインを盗む仕事を請け負うが、そこには300キロを超すとみられる大量のコカインが隠されていた。話が違うと思ったが、そこに数人の警官がやってきて銃撃戦になり、警官8人を殺して２人は車で真夜中のニューヨークの街を猛スピードで車を走らせ逃走する。その直後に現場にやってきたニューヨーク市警殺人課のアンドレ・デイビス刑事（チャドウィック・ボーズマン）は、85分署のマッケナ署長（J・K・シモンズ）から捜査に当たるよう命じられ、シングルマザーの麻薬取締班のフランキー・バーンズ刑事（シエナ・ミラー）とコンビを組まされて捜査を開始する。アンドレはマンハッタン島にかかる21の橋を全て封鎖して2人組の警官殺しの強盗を追い詰める大胆な作戦を提案して午前5時までの期限付きで許可を取る。夜明けまで犯人を逮捕するために奔走するうちにとんでもない陰謀が浮上する。

■みどころ

ボーズマンさんが犯人を追って真夜中のニューヨークの街を走り、犯人と銃撃戦を繰り広げる熱血刑事を熱演。アクションシーンや銃撃シーンはリアルで迫力がある上に、警察内部の複雑な人間関係など緊迫した展開が続き最後まで目が離せない圧巻のクライム・サスペンス・エンターテインメントになっている。ジーン・ハックマン主演の「フレンチ・コネクション」（1971年）やアル・パチーノ主演「クルージング」（1980年）、ケヴィン・スペイシー、ラッセル・クロウの「L.A.コンフィデンシャル」(1997年)などハリウッドの刑事が主役のクライム・サスペンスの名作は枚挙にいとまがないが、そうした流れを継承する作品といえそうだ。命がけで犯人に立ち向かいニューヨークの闇に正義を貫こうとするNYPD殺人課のアンドレ刑事の活躍はボーズマンさんの新たなシリーズになる可能性があっただけに早逝が惜しまれる。ボーズマンさんは2016年に大腸がんのステージ3と診断されたが、公表せず映画に出演し続けた。ゴールデングローブ賞、全米映画俳優組合賞（SAG)の主演男優賞を受賞し、アカデミー賞（現地時間4月25日授賞式）にも主演男優賞にノミネートされている遺作の「マ・レイニーのブラックボトム」（Netflixで配信中）ではさすがに少しやせた感じがして長台詞を繰り広げ鬼気迫る演技を見せているが、「２１ブリッジ」では全くがんと闘病中であることは感じさせず全速力で走ったり激しいアクションを見せるなど勇姿をスクリーンに焼き付けている。（2021年4月9日公開）