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「HOKUSAI」江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の波乱の生涯を柳楽優弥と田中泯が熱演

(2021年5月29日11:50)

「HOKUSAI」江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の波乱の生涯を柳楽優弥と田中泯が熱演
「HOKUSAI」(TOHOシネマズ川崎)

「富嶽三十六景」などで知られる江戸時代の天才絵師・葛飾北斎の波乱の90年の生涯を描いた話題作。青年期と壮年期の北斎を柳楽優弥が演じ、老年期と晩年を田中泯が演じている。ほかに喜多川歌麿に玉木宏、東洲斎写楽に浦上晟周、浮世絵版元の蔦屋重三郎に阿部寛、戯作者・柳亭種彦に永山瑛大、北斎の妻に瀧本美織などのキャストで、「探偵はBRAにいる」(2011年、13年)シリーズや「臨場」(12年)、「相棒 劇場版Ⅳ」(17年)、「劇場版 シグナル 長期未解決事件捜査班」(21年)などの橋本一監督がメガホンを取った。

■ストーリー

腕はいいが売れずに食うことさえままならない生活を送っていた若き日の北斎(柳楽優弥)に、人気浮世絵版元(プロデュ―サー)の蔦屋重三郎(阿部寛)が目をつけるが、なかなか認められず反抗して時流に乗れなかった。吉原に入り浸って美人画を書く売れっ子の歌麿(玉木宏)や独特の歌舞伎役者の浮世絵などが人気を呼んで若くして頭角を現していた写楽(浦上晟周)に先を越されて、もがき苦しんで生死の境をさまよい大自然の中で自分らしさに気が付き重三郎の後押しで独創性を手にする。ある日、北斎は戯作者・柳亭種彦(永山瑛大)と運命的な出会いをして、武士でありながらご禁制の戯作を生み出し続ける種彦に共鳴して良きパートナーになってゆく。70歳を迎えた北斎(田中泯)はある日、脳卒中で倒れ一命をとりとめるが右手にしびれが残るなど再起不能かとみられたが、「世の中とまだ勝負したい」と単身旅に出て雄大な富士山を見て触発され、旅から帰ってから有名な富岳三十六景を書き上げる。そうしたなか、反骨の戯作者・種彦が幕府に斬首されたという知らせが届く。怒りに震える北斎だったが「こんな日だから絵を描く」と筆をとる。

■見どころ

葛飾北斎(1760年~1849年)は「東海道五拾三次(狂歌入り東海道)」、「富嶽三十六景」などで知られる世界的にも著名な画家で3万点近い作品を残し、ゴッホやモネなどに影響を与えたといわれる。遠景の小さな富士山をのみ込みそうな巨大な波にもまれる3艘の船を描いた劇的な構図の「富嶽三十六景」の「神奈川沖浪裏」は誰もが一度は見たことがある世界的に有名な作品だ。1999年、米誌「ライフ」の「この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人」で、日本人として唯一86位にランクインした。門人の数は孫弟子も含めて200人に近いといわれる。
若き日の北斎に関する資料はほとんど残されてなく、その人生は謎も多いといわれるが、本作は歴史的資料を徹底的に調べて残された事実をつなぎ合わせたオリジナルストーリーで描いているという。今までほとんど語られることがなかった青年時代の北斎が描かれているのも見どころの一つになっている。その青年期を柳楽優弥が熱演。阿部寛演じる蔦屋重三郎がお膳立てして、玉木演じる流行絵師の歌麿が吉原の遊郭で人気芸者を侍らせ美人画を描き、宴席には浦上晟周演じる若き写楽も同席する中で、まだ売れない北斎が2人に嚙みつくシーンなどは当時の3人の絵師のエピソードをうかがわせて興味深い。本物を求めて周囲に怒りをぶつけ、もがく青年期の反骨の北斎を柳楽が熱演している。そして代表作の「富嶽百景」を描き上げた老年期と晩年の北斎の狂気さえ感じさせる孤高の天才画家の生き様を迫真の演技で田中泯が演じている。国際的ダンサーとして知られる田中は、追い求めていた藍色を手に入れ、雨が降りしきる庭に出て喜びを爆発させるシーンで、舞踏を取り入れた独特な演技で北斎の内面を表現している。幕府が表現を制限する中90歳まで絵を描き続けた江戸時代の反骨の世界的アーティストがスクリーンによみがえる。
(2021年5月28日公開)