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「テーラー 人生の仕立て屋」ウェディングドレスで苦境を脱出した仕立て屋のドラマ

(2021年9月2日10:50)

「テーラー 人生の仕立て屋」ウェディングドレスで苦境を脱出した仕立て屋のドラマ
「テーラー 人生の仕立て屋」(© 2020 Argonauts S.A. Elemag Pictures Made in Germany Iota Production ERT S.A.)

ギリシャ最大のテッサロニキ国際映画祭でギリシャ国営放送協会賞など3冠に輝いた話題作。手作りの屋台で移動式テーラーを始め、ウェディングドレスの制作に挑戦して奮闘する仕立て屋の波乱に富んだドラマを描いた作品。ギリシャのベテラン俳優ディミトリス・イメロスが主演し、監督は本作が長編映画デビューとなった新鋭の女性監督ソニア・リザ・ケンターマン。2020年製作、101分。ギリシャ・ドイツ・ベルギー合作。原題「Tailor」 後援:駐日ギリシャ大使館 配給:松竹。

■ストーリー

ギリシャのアテネで36年間、高級紳士服の仕立て店を父親と営んできた主人公のニコス(ディミトリス・イメロス)は、不況がギリシャを襲う中、業績不振で店が銀行に差し押さえられてしまい、父親はショックで倒れ苦境に立たされる。ニコスは手作りの移動式屋台で市街に出かけてセールスするが高級スーツは全く売れなかった。そうしたなか、思いがけないウェディングドレスの注文があり、ニコスは思い切ってオーダーメイドのドレスづくりを始めることを決意。隣に住むオルガ(タミラ・クリエヴァ)と彼女の娘の活発な少女ヴィクトリアに手伝ってもらい3人で力を合わせてカラフルで斬新なデザインのウェディングドレスを制作したところ人気を呼び行列ができるほどの評判になるが、意外な展開が待ち受ける。

■見どころ

スリーピースのスーツをピシッと着こなし、ミシンを踏み、縫い目にも完璧を求める寡黙で真面目な仕立て屋ニコスを、ギリシャで活躍するベテラン俳優のディミトリ・イメロスが個性的な演技で繊細にまた時にはユーモラスに演じて存在感を見せている。そして伝統的な高級テイラー店を飛び出して、移動式屋台で注文を取り、オルガと取り組んだカラフルで斬新なデザインの華麗なウェディングドレスの数々がスクリーンに繰り広げられるシーンは圧巻。さらには父と息子の関係、オルガとニコスのドレスに賭ける情熱とその先に生まれる恋愛感情のドラマ、ニコスとオルガの娘の心温まる交流など、厳しい社会情勢の中で懸命に生き運命を切り開いてゆく姿が感動を誘う。

■ソニア・リザ・ケンターマン監督のコメント

「私の映画に最も影響を与えているメインテーマは“はみだし者たち”です。社会や家族からも負け組というレッテルを貼られた人々が、様々な障壁に苦戦しつつも最後には突破口を見出し、危機を乗り越えていく様に私は深く魅了されます。そのようにしてこの物語は生まれました。ごく普通の男がとても勝ち目のない賭けに出なければならない、ある意味、現代を舞台にした寓話です。職人としての自分の技術を活かすため、そして自分の人生を蘇らせるため、経済的に行き詰った彼は思い切って自身を変える戦いに出ます。何もかも失いそうになった時、かれは何も持たない市井の人々と出会い、自分の将来を切りひらくのです。本作はユーモアもあれば感動もあります。笑いと勇気に満ちた、個人的な物語なのです。」 (2021年9月3日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開)