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「TOVE/トーベ」ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの激動の恋愛と創作秘話

(2021年9月29日13:50)

「TOVE/トーベ」ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの激動の恋愛と創作秘話
「TOVE/トーベ」 (© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved) (10 月 1 日(金) 新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか 全国ロードショー) (配給:クロックワークス)

世界的に有名な「ムーミン」シリーズの作者として知られるフィンランドのアーティスト、トーベ・ヤンソンの波乱に富んだ恋愛と創作の秘密を描いた映画。トーベにフィンランド出身の女優アルマ・ポウスティ、トーベの恋人になる舞台演出家ヴィヴィカ・バンドラーにフィンランド出身の女優でドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画「ブレードランナー 2049」(2017年)などに出演しているクリスタ・コソネン。トーベの交際相手で良き理解者になる社会民主党の国会議員で哲学者のアトス・ヴィルタネンにスウェーデンを代表する俳優でラース・フォン・トリアー監督の「ニンフォマニアックVol.2」(13年)やイーサン・ホーク主演の「ストックホルム・ケース」〈18年〉などに出演しているシャンティ・ローニー。トーベの生涯のパートナーになるグラフィックアーティスト、トゥーリッキ・ビエティラにフィンランド出身の女優ヨアンナ・ハールッティなどのキャスト。監督はフィンランド出身で「僕はラスト・カウボーイ」〈09年〉、「グッド・サン」(11年)、「マイアミ」(17年)などで知られるザイダ・バリルート。
本国フィンランドで公開から約2か月半にわたって週間観客動員数1位のロングラン大ヒットになり、第93回アカデミー賞国際映画賞部門でフィンランド代表に選ばれた。

■ストーリー

第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキ。激しい戦火の中、画家トーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)は「本業の合間の気分転換」で「ムーミントロール」の物語を書き始める。やがて戦争が終わり、爆撃で廃墟のようになった部屋をアトリエ兼自宅として借りて、本業の絵画制作に打ち込むが、著名な彫刻家の厳格な父親ヴィクトル・ヤンソン(ロベルト・エンケル)との確執や保守的な美術界との葛藤があった。そうしたなかパーティーで出会った妻帯者の国会議員アトス・ヴィルタネン(シャンティ・ローニー)に惹かれ、2人はその日のうちに情熱的に求めあい関係を続けるようになる。一方、トーベの絵画の個展を見に来た市長の娘で美貌の舞台演出家ヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)から父親の誕生パーティーの招待状のイラストを頼まれ引き受けると、そのパーティーに招かれ、2人はテラスで踊るなど盛り上がり、激しい恋に落ちる。ヴィヴィカはムーミンの物語を舞台にすることを提案し、舞台版のムーミンが子供たちから大人までに大人気になりトーベの人生も大きく変わって行く。

「TOVE/トーベ」ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの激動の恋愛と創作秘話
「TOVE/トーベ」のトーベとヴィヴィカ㊨ (© 2020 Helsinki-filmi, all rights reserved)

■見どころ

油彩画家、フレスコ画家、イラストレーター、風刺画家、児童文学作家、漫画家、絵本作家、作詞家、舞台美術家、商業デザイナー、映像作家、そして小説家と多彩な才能で知られるトーベの情熱溢れエネルギッシュで自由奔放な生き方や、苦悩、恋愛など波乱の半生をアルマ・ポウスティが魅力的に情熱的に演じて存在感を見せている。「ムーミン」の誕生や制作秘話も興味深いが、妻帯者の国会議員アトスと夫がいる舞台演出家のヴィヴィカとの2つの恋愛を中心にドラマが展開する。トーベはアトスにヴィヴィカと関係したことを告白して「男はあなただけ。女はヴィヴィカだけ」という。だがヴィヴィカを「息をのむほど華麗な竜が舞い降りたようだった」などと表現して深くのめりこんでいく。ヴィヴィカはほかにも若い女の恋人を作り奔放な”魔性“にトーベは振り回されるのだが、同性愛が禁じられていた時代に奔放な恋愛に走るトーベの情熱的で自由な疾走感に圧倒される。トーベとヴィヴィカのラブシーンや、トーベが音楽に合わせて独創的に激しく踊るシーンなどで見せる情念の奔流は芸術家としてのトーベの創作活動を動かしていたものでもあったことが描かれている。

■ザイダ・バルリート監督のコメント

バルリート監督は公式サイトに次のようなコメントを寄せている。以下全文。

ムーミンの生みの親”として知られ、尊敬を集めるトーベ・ヤンソンについて、私はグレイヘアの、賢く、不自然なほどに落ち着いていて、どこか掴めない、そのような印象を持っています。彼女の人生を描いたこの作品の製作準備にあたりリサーチをしていくうちに最も驚かされたのは、彼女が持つ情熱とエネルギー、強い感情と表現力、そして彼女の型破りな考え方でした。
トーベは父親との関係のせいで心に傷を負っていましたが、持ち前のポジティブさと常に周囲を考え理解する力、さらに誰からも好かれた彼女の明るさに私も刺激と希望を与えられました。彼女の知られざる側面を可能な限り忠実に、そして繊細に描くことで、彼女がいかに情熱的な人物で自由を愛していたかを映画を観た方に知ってほしいのです。映画はトーベの人生を通し、勇気と独立心を讃えています。
本作ではトーベの人生の30代から40代前半までを中心に、第2次世界大戦のさなかから彼女が人生をかけて愛したトゥーリッキとの出会いまでを描いています。この作品は、彼女がアートとムーミンを創作する過程で苦悩し、アーティストとしての自分を見つめ直す姿と、アトス・ヴィルタネンとヴィヴィカ・バンドラーとの情熱的な恋愛を主に描くことで、世界的に知られるムーミンのキャラクターに影響を与えたクールかつ自由奔放な「アーティストとしての人生」を物語っています。
私の初期の作品では家族やアイデンティティについてを中心に描いており、主人公も飾り気のない変わった人が多かったのですが、今作でもそれを踏襲し、そして幅広いトーベの交友関係を中心に描きました。彼女の人生にはどうしようもなく傷ついた時期もありましたが、彼女の世界や人々への美しい見識は失われませんでした。私の母は画家で、幼少期から彼女のスタジオに一日中入り浸り、アーティストに囲まれて育ってきたので、トーベの人生を描くうえで自分の経験を活かすことができるのが楽しみです。世界に大きな影響を与えた非常に才能のある女性アーティストの物語をお伝えできることもすごく楽しみです。