「スティール・レイン」米朝韓の平和協定をめぐる緊迫の軍事アクション大作

(2021年11月30日17:30)

「スティール・レイン」米朝韓の平和協定をめぐる緊迫の軍事アクション大作
「スティール・レイン」(© 2020 YWORKS ENTERTAINMENT & LOTTE ENTERTAINMENT & STUDIO GENIUS WOOJEUNG All Rights Reserved. ) (配給:ハーク)(配給協力:EACH TIME)

「弁護人」で監督デビューしたヤン・ウンソク監督が、ウェブコミック作家としての自身の作品で累計6000万回の閲覧を記録した大ヒットコミック「鋼鉄の雨」を原作に映画化した韓国映画の軍事アクション大作。米大統領、北朝鮮委員長、韓国大統領が北朝鮮で平和協定を締結するために3者会談を開催することをめぐって、北朝鮮の強硬派とその背後にうごめく中国、日本の財団が繰り広げる壮絶な闘いを描いている。韓国大統領ハン・キョンジェに「私の頭の中の消しゴム」(2004年)などのチョン・ウソン、北朝鮮委員長のチョ・ソンサに「愛を歌う花」(2016年)などのユ・ヨンソク、米大統領スムートに「レッド・ライン」(2007年)などのアンガス・マクファーデン、強硬派の北朝鮮護衛司令部総局長パク・ジヌに「KCIA 南山の部長たち」(2020年)などのクァク・ドウォンなどのキャスト。

■ストーリー

冒頭で日本の艦船を訪れた中国の軍関係者が日本の「過激思想の財団」のトップの森(白竜)に「中国と戦争する気か。中国に勝てると思っているのか」と詰め寄ると森は「日米同盟を甘く見るな」と言い返し、「竹島 影武者」作戦の計画書を見せ「場所は尖閣か竹島かどこがいいか」という。まずはそんな物騒な話から始まる。そして韓国では警備艦の艦長が自首して、在日韓国人を名乗る女性からカジノに誘われ数億ウォンの借金を背負ったところ女が金を貸し、返さなくていいから「日本の潜水艦が独島(竹島の韓国名)に近づいたら警告射撃なしで攻撃して」といわれたという。女は日本の過激団体を援助する前出の財団の職員だという。そして日本では財団の森が演説して米国を非難し、「中国と一戦を交えるふりをして日本の領土を取り返す」という。さらに中国から1億ドルの資金が同財団に流れていることが分かる>
そうしたことを背景に、風速90メートルを超える大型台風「スティール・レイン」が朝鮮半島に接近する中、これまでの「休戦」に終止符を打つ「平和協定締結」に向けて韓国大統領ハン(チョ・ウソン)、北朝鮮委員長チョ(ユ・ヨンソク)、米大統領ストーム(アンガス・マクファ―デン)の会談が北朝鮮で開催される。ところが米大統領が「署名はワシントンでしてもいいか」「核兵器の視察もまだなのに平和協定は早過ぎるといわれた」などと言い出し「私は核兵器を持ち帰り最高のショーをする」というと北朝鮮の委員長が「国交を結ばなければ核は渡さない」と米朝の意見が対立し、韓国大統領が間を取り持って何とか平和協定締結を実現しようとするが、そうしたなか強硬派の北朝鮮護衛司令部総局長パク・ジヌ(クァク・ドウォン)が中国と日本の財団をバックにクーデターを起こし、3人を拉致して北朝鮮の原子力潜水艦に監禁して、独島(竹島)で日本の巡視船に魚雷を発射して撃沈して「影武者作戦」を実行し日韓の戦争を引き起こし日本が勝利し、さらに日本と北朝鮮の利益のために韓国に核ミサイルを撃つことを計画していることが分かり一触即発の緊迫した局面を迎える。

■見どころ

フィクションでまさかという設定もあるが、あり得るかもしれないとも思わせる朝鮮半島を取り巻く国際情勢を舞台にしたエキサイティングなドラマになっている。架空の韓国大統領や北朝鮮委員長、米大統領を中心に繰り広げられるドラマは壮大なスケールで、3人の描き方も刺激的で思わず笑わせるシーンもあり面白い。北朝鮮委員長はかなり知的で米国に強硬な姿勢を見せるが柔軟なところも見せ、韓国大統領と次第に心を通わせていく。それに比べて米大統領はお調子者で北朝鮮委員長を下に見て「アメリカ・ファースト」とどこかで聞いた言葉をうそぶいたりコミカルに描かれている。大ヒットドラマ「愛の不時着」や、北朝鮮に潜入した実在の韓国のスパイを描いた「工作 黒金星と呼ばれた男」(2019年)もそうだが、韓国映画が韓国人と北朝鮮の人物が心を通わせていく描写が少なくないのは南北統一への思いがあるからではないだろうか。この映画でも北朝鮮のトップは、韓国にとってこうあってほしいという姿が描かれているように見えた。
一方で、3国の首脳が監禁された原子力潜水艦を舞台にした3人のそれぞれの思惑が絡み合う激論や、米国の副大統領ら首脳の対応、クーデターを起こした北朝鮮護衛司令部総局長パクと原潜の乗組員らの攻防など緊迫のシーンが続き見ごたえのある軍事アクション・エンターテインメントになっている。
(2021年12月3日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー)