「TITANE/チタン」予測不能の破壊的な展開と独創的な描写のカンヌ最高賞映画

(2022年4月3日13:15)

「TITANE/チタン」予測不能の破壊的な展開と独創的な描写のカンヌ最高賞映画
「TITANE/チタン」(東京・渋谷区のシネクイント)

交通事故にあい頭にチタンプレートを埋め込まれた少女が成人してカーショーの踊り子になるが、連続殺人を犯すなど予測不能の独創的な展開と衝撃的な描写の超異色のフランス・ベルギー合作映画。ヒロインのアレクシアに本作が長編映画デビューで初主演のアガド・ルセル。女優活動のほかジャーナリスト、モデル、写真家としても活躍する。アレクシアを失踪していた息子として迎える消防隊の隊長ヴァンサン役に「ティエリー・トグルドーの憂鬱」(2015年)でフランスのアカデミー賞、セザール賞の主演男優賞、カンヌ国際映画祭の男優賞を受賞したベテラン、ヴァンサン・ランドンなどのキャスト。
監督はデビュー作「RAW~少女のめざめ~」(2016年)でカンヌ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞を受賞し、長編2作目の今作で昨年の第74回カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したフランス映画界の鬼才ジュリア・デュクルノー。女性監督としては、ジェーン・カンピオン監督(「ピアノ・レッスン」1993年)に続く史上2人目のパルムドール受賞となった。

■ストーリー

幼い時に交通事故で重傷を負い頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア(アガド・ルセル)は、それ以来「車」に異常な執着心を抱くようになり、カーショーで踊るダンサーの仕事をするうちに、「車」とセックスしたり、ショーの帰りに待ち伏せしていたファンからサインを求められキスを迫られ、髪留めに使っていた箸のような細い棒で男を殺害。さらに彼女に好意を寄せる若い女性ダンサーの家で彼女を含め複数の同居者を殺害して連続殺人犯として指名手配される。逃亡中に10年前に失踪した男性の尋ね人のポスターを見て、その男性の顔に似せる細工をして、失踪中の男性の父親の消防士ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)の家に潜り込む。2人は奇妙な共同生活を始めるが、やがてアレクシアの秘密が隠しきれなくなり衝撃の展開を迎える。

■みどころ

アレクシスが尋ね人の男性に容姿を似せようとして、鼻を低くするためにトイレの洗面台の角に鼻をたたきつけるなんとも痛いシーンを始め、カーセックスではなく「車」そのものとセックスする怪シーン、しかも妊娠してしまうというありえない展開。また、なぜか消防士のヴァンサンの家に潜り込み彼との狂気じみた共同生活など、アガド・レセルがジェンダーを飛び越え、狂気をはらみ破壊的な演技を見せている。ヴァンサン・ランドンもアレクシアを息子と信じるよう自分に言い聞かせて次第に狂気をはらんでゆく消防士を怪演して存在感を見せている。破壊的で、衝撃的で、異形にして独創的なシーンの連続で最後まで目が離せない。
(2022年4月1日から全国公開中)