「パリ13区」現代のパリ象徴する13区を舞台に繰り広げられる独創的ラブストーリー

(2022年4月24日9:30)

「パリ13区」現代のパリ象徴する13区を舞台に繰り広げられる独創的ラブストーリー
「パリ13区」(公式サイトから)

カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した「ディーパンの闘い」(2015年)などで知られるフランス映画界の名匠ジャック・オディアール監督の最新作。「燃ゆる女の肖像」(2019年)のセリーヌ・シアマ監督と若手の監督・脚本家レア・シミウスと共同で脚本を手掛け、斬新な男女のドラマ展開やモノクロの映像美で新しいパリのラブストーリーに仕上げた作品。北米のグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネの3つの短編小説が原作で、本作でスクリーンデビューしセザール賞有望若手女優賞、リュミエール賞新人女優賞にノミネートされたルーシー・チャン、同セザール賞有望若手男優賞、リュミエール賞新人俳優賞にノミネートされたマキタ・サンバ、そして「燃ゆる女の肖像」でリュミエール賞主演女優賞を受賞し、セザール賞主演女優賞、ヨーロッパ映画賞主演女優賞ノミネートほか、数多くの賞に輝いたノエミ・メルラン、ロンドン出身の4人組ポスト・パンクバンド、サヴェージズのボーカルで女優のジェニー・ベスら個性あふれる俳優らのキャストで映画化した。2021年・フランス。105分。

■ストーリー

コールセンターでオペレーターとして働く台湾系フランス人のエミリー(ルーシー・チャン)の自宅マンションで、アフリカ系フランス人の高校教師カミーユ(マキタ・サンバ)がルームシェアするようになる。2人は求めあうが、それ以外はルームメイトとしてお互いを束縛することもなく、カミーユは恋人と同棲するようになりエミリーは彼を追い出してしまう。同じころ、法律を学ぶためにソルボンヌ大学に復学したノラ(ノエミ・メルラン)は、年下のクラスメートに溶け込めずにいた。そんななか、金髪のウイッグをかぶって学生が企画するパーティに参加したのがきっかけで、元ポルノスターでカムガール(ウェブカメラを使ったセックスワーカー)のアンバー・スウィート(ジェニー・ベス)と勘違いされて、SNSで2人が同一人物だとして画像が拡散されて大学にいられなくなり、不動産会社に勤めることになる。そのオフィスには高校教師を辞めて一時的に勤めていたカミーユがいて、やがて2人は関係を持つようになる。そして、エミリー、カミーユ、ノラ、スウィートの波乱を含みながら絡み合う男女のドラマが繰り広げられる。

■見どころ

映画の舞台になったパリ13区は、高層住宅が連なる再開発地区で、アジア系移民も多く暮らしていて、古都パリのイメージとは全く違う独創的で活気に満ちた現代のパリを象徴するエリアとされる。そのイメージにマッチした男女の既成の概念にとらわれないフリーでいて、しかも愛の真実を求めて悩み傷ついたりしながら前に進もうとするエミリーとノラとカミーユの恋愛模様が繊細に大胆に描かれていく。4人の個性的な俳優の演技にも注目だ。モノクロームの映像が美しく、エミリーとカミーユ、カミーユとノラなどのセックスシーンは官能的で美しい。フランスのヌーベルバーグのテイストも感じさせるが、台湾系、アフリカ系、白人、そしてレズ関係もありとダイバーシティにあふれ、あくまで現代フランスの「男と女」のフリーでありながらセンシティブでもある独創的ラブストーリーになっている。
(2022年4月22日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー)