「ある役者達の風景」ベテラン俳優たちがコロナ禍のなかで集まり撮影した注目作

(2022年9月9日10:30)

「ある役者達の風景」ベテラン俳優たちがコロナ禍のなかで集まり撮影した注目作
「ある役者達の風景」(©2021「ある役者たちの風景」)

緊急事態宣言が解除された2020年5月末、多摩川の河川敷で撮影が行われた映画「ある役者達の風景」。中西良太を中心にベテラン俳優たちが集まり、撮影期間わずか半日、制作費0円、公開はYouTubeのみという異色の自主制作短編映画だったが、NHK「おはよう日本」で「役者としての“動きを止めない” ベテラン俳優の心意気」として特集され、一躍話題になった。その後、さらなる俳優たちの協力や長編化を望む声を受けて、脚本を再編・追加執筆し、劇場公開映画として製作され、9月17日からユーロスペースなどで公開される。

キャストは大谷亮介、草野とおる、中西良太、モロ師岡、半海一晃、マギー、余貴美子、高畑裕太、小野武彦、六角精児、勝村政信、鈴木一功、不破万作、渡辺哲、篠井英介、キムラ緑子、山田まりやなど個性派、実力派の俳優がそろった。監督は沖正人。原案:中西良太、脚本:沖正人、中西良太、秋庭亮、撮影:三本木久城。

■ストーリー

コロナ禍が徐々に現実のものとなり劇場には客足が遠のいていた。世間は賑わいを失い、生活に影を落とすなか、壮年の舞台俳優の大谷は、こんな時こそ演劇を楽しんでもらいたいと仲間たちに声をかけるが、これまで苦楽を共にした仲間たちも今回ばかりは経済的に耐えられないと役者をやめていく。
それでも賛同してくれた同じ劇団に所属する草野と中西。たった3人でも演劇として成立する”独劇”を練習してようやく本番を迎えるが、初日公演の当日、緊急事態宣言が発令される。
劇場は一時閉鎖を余儀なくされて、演劇の場を失ってしまった3人の役者は途方に暮れる。そうした中、役者仲間の一人が神社で演劇の練習をしていたところ、数人のお客さんが集まったという話を聞いた3人は、まだ演劇は必要とされていると信じて稽古を続ける。3人の役者たちは、宣言解除後、「密」を避けて「換気」も問題ない川原で、自然を舞台に見立てて観客の前で演劇を続けながら、これからもずっと必要とされる事を信じて役者を続けていくことを決意する。

■見どころ

客席は1つずつ空けて座り、役者はシールドマスクをするなど数々の制約が付いたなかでのコロナ禍での演劇の上演。客足が激減して採算が取れず休演になったり、挙句の果ては緊急事態宣言で劇場は閉鎖と苦難続きの状況が描かれる。そうした中、芝居をあきらめて役者仲間の集まりから去ってゆく役者も続出するなか、情熱を捨てずに様々なアイディアを出しながら演劇を続ける役者たち。そして「芝居は不要不急じゃない」と声を上げるベテラン俳優の奥さんなど、演劇を愛する人たちが起こす奇跡のようなドラマがリアルだ。コロナの感染拡大の影響を大きく受けている現在の演劇に限らず映画やドラマなどの現場で活動を続けている俳優やスタッフ、関係者にエールを送る内容になっている。 (2022年9月17日、ユーロスペース他全国の劇場にてロードショー)