「いつかの君にもわかること」余命宣告を受けたシングルファーザーの決断と葛藤

(2023年2月16日18:10)

「いつかの君にもわかること」余命宣告を受けたシングルファーザーの決断と葛藤
「いつかの君にもわかること」(© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.)

余命宣告を受けたシングルファーザーが、死ぬ前に幼い息子と養子縁組をしてくれる家族を探し求めて数々の家族候補と会いながら葛藤するヒューマンドラマ。監督は、ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門監督賞を含む4冠を獲得し、日本でも安部サダヲ主演の「アイ・アム・まきもと」(2022年)としてリメイクされた「おみおくりの作法」(2013年)のウベルト・パゾリーニ。実際に目にした記事から着想した作品で「生」と「死」や「家族」などのテーマをエモーショナルに描く。ヴェネチア国際映画祭をはじめ世界中で共感を呼び、米映画レビューサイトRotten Tomatoesでは100%フレッシュ!を記録した。

「いつかの君にもわかること」余命宣告を受けたシングルファーザーの決断と葛藤
「いつかの君にもわかること」(© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.)

父親のジョン役に「フラットライナーズ」(17)、「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」(19)、「赤い闇 スターリンの冷たい大地」(19)などの映画や英BBCの超大作ドラマ「戦争と平和」(16)などで活躍し、次期「007」ジェームズ・ボンドの有力候補として名前が挙がる英俳優ジェームズ・ノートン。息子マイケルに、オーデイションで100人の候補者の中からパゾリーニ監督に見いだされたダニエル・ラモント。ジョンの世話をするソーシャルワーカーのショーナに、「ブルックリン」(15)でハリウッド映画スターの仲間入りを果たし、「ふたりの女王メアリーとエリザベス」(19)、「彼女たちの革命前夜」(22)などで活躍する北アイルランド緒出身の女優アイリーン・オヒギンズ。
2020年/イタリア・ルーマニア・イギリス/英語/95分/原題:Nowhere Special/字幕翻訳:渡邊貴子/提供:木下グループ/配給:キノフィルムズ

「いつかの君にもわかること」余命宣告を受けたシングルファーザーの決断と葛藤
「いつかの君にもわかること」(© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.)

■ストーリー

窓拭き清掃員として働く33歳のジョン(ジェームズ・ノートン)は、妻が絵を出て行ってしまいシングルファーザーとして4歳のマイケル(ダニエル・ラモント)を育てていたが、不治の病で余命わずかと宣告される。養子縁組の手続きを行い、親身になって世話をするソーシャルワーカーのショーナ(アイリーン・オヒギンズ)が探してきた家族と会うが、断られたり、ふさわしくないと感じたり、息子にふさわしい家族を求めて、何組もの家族候補と面会をして、息子にとって最良の未来を選択しようとして奔走する。

■見どころ

最愛の幼い息子マイケルとの残された時間を大切に過ごしながら、自身の死後に残される息子の幸せを願い、養子として迎えてくれる家族を探すジョンの生き様が繊細に丁寧に描かれていて観る者の胸を打つ。養子を迎えようとしている何組かの家族のそれぞれの思惑や、ジョンが抱く違和感や、自身の死期が迫っていることや母親のことを息子に伝えるべきかなど葛藤する姿を描くことで、生と死や家族について考えさせられる作品になっている。次第に体が弱っていく中で、息子の将来に悩み続けるシングルファーザーをジェームズ・ノートンが抑制した演技で繊細に演じ存在感を見せている。そして、マイケル役のダニエル・ラモントがなんともかわいらしく、父親に甘えたり反発したり、疑問をぶつけたり、素晴らしい演技を見せてドラマを盛り上げている。息子にふさわしい家族を見つけることができれば思い残すことはないジョンと、事態をよく呑み込めていないマイケルのコンビが繰り広げるドラマはリアルで、そしてエモーショナルなラストシーンが待ち受ける。
(2023年2 月17日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開)