映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇

(2023年3月7日10:30)

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾のキャストと、アンシュル・チョウハン監督登壇
登壇した(左から)アンシュル・チョウハン監督、MEGUMI、尚玄、松浦りょう、藤森慎吾(6日、都内)

映画「赦し」(3月18日公開)の完成披露試写会が6日、都内で行われ、尚玄(44)、MEGUMI(41)、松浦りょう(27)、藤森慎吾(39)、アンシュル・チョウハン監督が登壇した。

同作は、娘を殺された元夫婦と、犯行時に未成年だった加害者の女性の癒やしようのない苦しみや葛藤、魂の救済、赦しという深遠なテーマに真っ向から挑んだ問題作。

7年前に高校生だった娘の恵未をクラスメートに殺害されて以来、酒に溺れ現実逃避を重ねてきた樋口克(尚玄)のもとに、裁判所からの通知が届く。懲役20年の刑に服している加害者の福田夏奈(松浦りょう)に再審の機会が与えられたという。ひとり娘の命を奪った夏奈を憎み続けている克は、元妻の澄子(MEGUMI)とともに法廷に赴く。しかし夏奈の釈放を阻止するために証言台に立つ克と、つらい過去に見切りをつけたい澄子の感情はすれ違っていく。やがて法廷では夏奈の口から彼女が殺人に至ったショッキングな動機が明かされるという内容。日本在住の気鋭のインド人監督アンシュル・チョウハンの最新作で、法廷の内外での激しくも揺れ動く3人を尚玄、MEGUMI、松浦りょうが迫真の演技を見せている。

■尚玄「俳優20年の中でも一番つらい役どころでした」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
尚玄

娘を殺された父親の樋口克を演じた尚玄は「まず僕自身がアンシュル監督の1本目の『東京不穏詩』から2本目の『コントラ』、そして監督のファンになったので、いつか一緒に映画出来たらいいなっていう話があって。ようやくこの話を頂いて、念願の監督との作品ということですね。今回テーマが未成年の犯罪を描いた作品で、しかも娘を殺された父親という、僕は20年ほど俳優をやってるんですけど、20年の中でも一番つらい役どころでした」と語った。
ひげを生やしたのは「実は監督が勝手にフォトショップをして、こういう風貌にしてくれといって。僕その前は、『義足のボクサー』っていう映画でボクサー役で終わった後もずーとボクシングをやっていたんですね。太らなきゃいけなかったので、監督にアルコール依存症の方って、ご飯も食べず細めの人もいるじゃないですか。監督にそれでどうなのかと言ったら絶対にこのビジュアルでということで、10ぃロ以上太る羽目になりました」と撮影のエピソードを明かした。



■MEGUMI「人を赦すということについてすごく考えました」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
MEGUMI

被害者の母親の樋口澄子を演じたMEGUMIも「きつかったですよ。私も同じく今までやった役の中で一番きつい役だったのかなあと思います」と話した。そして「今回のタイトルでもありますけど、人を赦すということについてすごく考えました。理不尽なことに私たちは時に直面しますけど、その時にどのように自分が感じて乗り越えて成長していくのかみたいなことを、本当に毎日、監督も外国の方ですし、スタッフのクルーの方もほとんどが外国の方でだったので、いろんな文化とか概念が全然違う人たちと、こういうテーマについて考えられたというのは、苦しかったけど、私の人間としての人生の中でも本当に濃い時間でした。すごいいい時間を与えてもらいました」と振り返った。
監督やスタッフとの英語でのコミュニケーションについては「私もそんなに英語ができないんですけど、英語で何とか取ろうと思って。皆さんが通訳してしてくださったりもあるんですけど、だんだんなんか、何を考えているのかが、お互いすごく注目してるからわかるようになったりとかして、それもすごいエモーショナルな体験でした」という。

■松浦りょう「尚玄さんに本当に嫌われていると思っていた」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
松浦りょう

女子高生の時にクラスメートの女子生徒を殺害して服役する福田夏奈をオーデイションで勝ち取り演じた松浦は「私はというか皆さんもそうですけど、人を殺めたことはありませんし、刑務所に入ったこともないし、それを役作りとはいえ経験できることではなかたので、殺人を犯してしまった人のインタビューだとか、あとは刑務所での生活をできるだけネットで調べて、近い環境に身を置くことで役を作り上げていきました」と振り返った。
「役作りしている間はすごく苦しかったんですけど、修行だと思って、絶対に負けないと思って頑張りました」という。
尚玄との対決シーンについては「とてもきつかったですし、現場で尚玄さんがずっと口をきいてくれなくて、本当に嫌われていると思っていて。でも私は性格的にしつこいので、何度もあきらめずにあいさつしました」。

尚玄は「毎朝挨拶してくれるんですよ」と笑いながらも「おはようございますって来るんだけど、どうしてもあまりいい子なので、あまり心を許してしまうと芝居に影響するとよくないと思って、ずーっと話してなかったんです」と松浦演じる加害者を激しく憎む役なので心を鬼にしたという。

「それで最後、一番最後に芝居が終わった後にハグをしに行ったら『嫌われていると思ってました』って」と語った。
松浦は「尚玄さんがそうやって下さったおかげで、すごくいいシーンが撮れたので感謝でいっぱいです」と感謝の言葉を述べた。

■藤森慎吾「MEGUMIさんが役になり切っていた」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
藤森慎吾

尚玄演じる被害者の父親と離婚した母親(MEGUMI)の再婚相手の岡崎直樹を演じた藤森は、その役を「勝ち取ってやりました」と笑わせ、「僕とMEGUMIさん(妻役)は割と平穏な生活していた中で、ある日突然妻が深刻な精神状態になってしまうというところからなんですけど、スタッフ、監督の空気はすごくいいんですけど、やっぱりちょっと重たい感じの、特に結構家の中でMEGUMIさんと2人きりでいるシーンが多くて、ずっとMEGUMIさんが辛そうだったので」というとMEGUMIが「つらかったあ」と笑いながら話し、藤森は「本当にすごいなと思いました。MEGUMIさんは何度もご一緒したことはあって、バラエティで一緒になることが多かったんですけど、ここまで女優MEGUMIさんが、役になり切ってというか本当に澄ちゃんそのものになって演じていたので、休憩時間も目がちょっと腫れぼったいような状況でいらっしゃるのが印象的だったので、ちょっとでもと思って、元気になって頂ければと思って、毎回どんな差し入れ入れたら元気になってもらえるかなと思って」を差し入れをしていたという。

MEGUMIは「いっぱいお菓子とかカレーをウーバーしてくれたりとか、皆に物を与えてくれましたねと明かした。
藤森は「雰囲気が悪かったわけじゃないんですよ。それぐらい緊張感がある場だったんだなあって今思い出してきました」と振り返った。

尚玄が「僕にはくれなかったですね」と突っ込みを入れると「尚玄さんとは敵なので、さっきの松浦さんじゃないですけど口もきかないような」と、澄子が裁判にのめり込む中で元夫と過ごし朝帰りするなど役柄上敵対関係にあったことに言及し「本当にこういう作品に携われて貴重な経験をさせてもらえた」と語った。

■アンシュル・チョウハン監督「この映画はインド人が作った映画ではなくて日本映画として見ていただければ」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
アンシュル・チョウハン監督

アンシュル監督は「皆さんのおかげですごく撮影に集中できました。役者さんと関わりながら撮影していくことがとても好きなんですけど、そこで信頼というのが大事だと思っていて、個人個人と信頼を築きながら撮影ができたのは本当に嬉しく思っています。尚玄さんとはもともと友人で知り合いだったんです。松浦りょうさんに関しては『コントラ』の上映に来てくださったところからすごく印象に残っていて、いつか一緒にやりたいと思ってました。MEGUMIさんは尚玄さんに紹介いただき、MEGUMIさんから藤森さんを紹介していただき、素晴らしいキャストに恵まれました」とキャスティングについて明かした。

MEGUMIは「スタッフもすごく少ないんですよ。スタッフ5人と私たちだけだった」といい「ものすごく濃厚な、ディテールの細かい作業を積み上げていったという初めての体験でした。逃げ場がなかった」と笑った。

アンシュル監督は同作を製作したいきさつなどについて「原作は(監督の最初の長編『東京不穏詩』からライターとして関わっている)カナダ人のランド・コルターさんが4,5年前に書いてくださった脚本なんですが、当時はあまり映画化しようとは思えなかった」という。「そのあとコロナ禍が始まって、皆さんが家の中に閉じこもるという状況になったときに、調べる時間があったので脚本を読み直して、気持ちが変わったというかすごくコネクションがあると思った。昔の学校時代の思い出とか。コロナで亡くなっていく人たちを見たときに、映画化する必要があると思ったのがきっかけでした」という。そして「登場人物たちのヒューマンドラマを軸におきたかったのでそこを一番大切にしてきた」と語った。

法廷で手錠をかけられた松浦が振り向く顔のアップの写真を使った印象的なポスターのビジュアルついて聞かれ、「12テイク目のものなんですけど、最後の方のとても大切なシーンで、12テイクということできっと松浦さんは自分のこと嫌っていたと思います」と明かした。松浦は「映画見るまでこのシーンがどんな風になっているのかわからなかったので、不安でいっぱいだったんですけど、映画見た時にさすがアンシュルさんだな、頭上がんないなと思いました」と語った。

最後に各人が映画に込めた想いやメッセージを語った。

尚玄「戦争が起こってますし、そういった負の連鎖を止めるためには、どこかのある時点で赦しということが大切なんじゃないか。今回樋口克役を演じて、本当の意味で人を赦すということは本当に難しいなと思ったんです。まずは赦す赦さないの前に、相手の立場になって物事を考えてみる。そして相手の気持ちを慮って、そういうことから前に進むことがあると思います。皆さんの心に何か問いかけるものがあればいいなと思います」

MEGUMI 「ダイバーシティとか多様性とか、そういう言葉がすごくあるけれども、なかなか私たちの心はついて行けてないというのが現状だと思います。アンシュルはインド人で,私たちは日本人で、ノルウェーの人とかアメリカの方とか、いろんな国の仲間たちと、人を赦すというテーマに向き合えて、すごく意味のある企画、作品だったと思います」

松浦りょう「この作品は生きている、置かれている環境、境遇によってとらえ方が大きく異なる映画だと思います。皆さんそれぞれ素直に受け取って頂けたら嬉しいです」

藤森慎吾「本当にお楽しみいただける作品になっていると思います。監督の前の作品の『コントラ』をン見たときにものすごく興奮して、すごく魅了されて。その監督がどんな映像を撮るんだろうという期待と興奮で出来上がったものを見たんですけれども、テーマ自体はちょっと重たく深く考えるような作品なんですけど、僕は美しい映像が沢山散りばめられている奈という印象も持ちました。すばらしい監督と素晴らしいキャストの皆さんと一緒にできたことは光栄です。ぜひご覧いただいてお楽しみ下さい」

アンシュル・チョウハン監督「インタビューでインド人として日本映画を作るのはどういう気持ちですかというご質問をよくいただくんですけども、私は日本に住んで10年以上過ぎていまして、自分自身でも日本人化しているんじゃないかと思うくらい、自分は日本人だと感じる事が多くなっています。ぜひこの映画はインド人が作った映画ではなくて日本映画として皆さんに見ていただければと思っています」

映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
「赦し」の松浦りょう(©2022 December Production Committee. All rights reserved)
映画「赦し」完成披露試写会 尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督登壇
「赦し」のMEGUMI(前列左)と尚玄(右隣り)(©2022 December Production Committee. All rights reserved)

【STORY】
かつて17歳の少女だった夏奈(松浦りょう)は、同級生の少女を殺害した。あれから7年、20年の刑を受けた夏奈に再審の機会が与えられ、釈放される可能性があると連絡を受けた被害者の父・克(尚玄)と、別れた元妻・澄子(MEGUMI)。二人はともに法廷に赴き裁判の経過を見守ることになるが…。当時の裁判では殺害にいたる経緯を話すことなく、検察の請求のままに刑が確定した夏奈。再審請求は、被害者の親二人の心を大きく揺さぶっていく。7年が経っても決して薄れることのない彼女への怒りと憎しみは、周りを巻き込みながら大きく変転をしていくのだった。加害者の夏奈だけではなく、まるで囚人のように「娘を殺されたこと」への怒りから逃れることのできない、かつての親たち。そこから人はどうやって一歩進んでいくのか?

■アンシュル・チョウハン監督

長編1作目の「東京不穏詩」(2018年)がベルギーのブリュッセル・インデペンデント映画祭で最優秀賞を受賞。2作目の「コントラ」(2019年)が、エストニアのタリン・ブラックナイト映画祭でグランプリ、北米最大の日本映画祭ジャパン・カッツで第1回大林賞を受賞したインド出身の気鋭監督。

2022年/日本/日本語/カラー/98分/原題(英語題):DECEMBER/助成:文化庁/製作プロダクション:KOWATANDA FILMS、YAMAN FILMS/配給:彩プロ
 (3月18日(土)より、ユーロスペース, アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開)