「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきのが特別ゲストで登壇

(2023年4月10日22:45)

「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきのが特別ゲストで登壇
シャーロット・ウェルズ監督㊧に花束を渡す岸井ゆきの (10日、東京・渋谷区のヒューマントラストシネマ渋谷で)

映画「aftersun/アフターサン」(5月26日公開)のシャーロット・ウェルズ監督(36)が来日して10日、都内で行われたプレミア試写会で舞台挨拶を行った。また女優の岸井ゆきの(31)が特別ゲストとして登壇した。

ウェルズ監督は自身初の長編作品となる同作で、英国アカデミー賞英国新人賞を受賞し、さらには主演のポール・メスカル(27)が第95回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるなど国際的に注目された。

11 歳のソフィ(フランキー・コリオ)が父親のカラム(ポール・メスカル)とふたりきりで過ごした夏休みを、その 20 年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で綴る同作は、2022 年カンヌ国際映画祭・批評家週間での上映を皮切りに評判を呼び、話題作を次々と手がけるスタジオ A24 が北米配給権を獲得。昨年末には複数の海外メディアが「ベストムービー」に挙げ、毎年映画ファンが注目するオバマ元大統領のお気に入り映画にも選出されるなど、本年度を代表する 1 本となった。

■ウェルズ監督「自分が考えていたよりもはるか遠くまで届いた作品」

「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきが特別ゲストで登壇
シャーロット・ウェルズ監督

同作の脚本・監督を手がけて長編映画デビューを飾った、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ監督は「今回は初めての来日で、この作品をこうやって皆さんと分かち合えることはとても嬉しく思ってます」と第一声。 折しも、舞台挨拶が行われた東京渋谷区のヒューマントラストシネマ渋谷では「シャンタル・アケルマン映画祭2023」と題して、ウェルズ監督が敬愛するシャンタル・アケルマン監督の特集上映が行われている。イギリス映画協会が10年ごとに選出する「史上最高の映画100」でアケルマン監督の代表作「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」が1位に選ばれている。(2位はヒッチコック監督の「めまい」、3位はオーソン・ウェルズの「市民ケーン」)。

司会がそのことを話すと、ウェルズ監督は「ポスターを見ました。実はこの作品にも少しインスピレーションになっているところがあるので、お話しできたらと思っています」と言及してから、自作について「この作品はプレミアが去年のカンヌ(カンヌ国際映画祭)でしたので、ほぼ11か月くらい前になります。この映画について、こうして皆さんに紹介するのはこれが最後になると思います」と語った。同作は昨年10月に全米で、11月にイギリスで公開された。

そして世界各国で高く評価されたことについて「自分が考えていたよりもはるか遠くまで届いた作品になりました。フィクションで滋賀、自分の個人的なことや、自分の人生、少女時代の具体的なことが入っている作品でもあるんですが、いろんな方と繋がっている作品でもあります。皆さんがどんな風にこの作品と繋がるのか楽しみにしています」と語った。

■岸井「この作品は、いろんな人が見て自分の物語になる作品」

「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきが特別ゲストで登壇
岸井ゆきの

その後、昨年主演した「ケイコ 目を澄ませて」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など数多くの賞を受賞した岸井ゆきのが、この作品を気に入り、監督と話をしたいと特別ゲストとしてサプライズで登場して監督に花束を贈呈した。

岸井は「この作品は、いろんな人が見て自分の物語になる作品だなと思いました」と感想を述べた。「公開が決まったときから見たいなと思っているときに、このお話を頂いて拝見しました。『aftersun/アフターサン』は父親と娘の話なんですけど、父親が多くを語らない。だからこそ自分の過去だったりとか、生きてきたことでしかわかることができない映画だなと思いました。父親の姿から感じる不安なのか、何か感じるもがあったんですけど、それはセリフというより、呼吸だったりとか、後ろ姿とか、そういうところから伝わってきて、素晴らしい映画だなと思いました」と同作を絶賛した。

監督は「嬉しい言葉をありがとうございます」と感謝して「観客の方に映画に入れる余地をもたせるということは、短編映画を作る中で学んだことでもあります。今回は短編よりも時間がある中で、観客の方にどれくらいのスペースがあれば正しいんだろうと考えながら作った作品でもあります。岸井さんにいっていただいたように、皆さん自身のことをどこかで持ってきていただける作品になっているかなと思います。いろいろ見て聞いて感じる作品だったら嬉しいです」と語った。

司会から監督に聞きたいことはと水を向けられ、岸井は「すごく親子の関係が自然というか、2人においての自然というのがすごく感じられたんですけど、そういうことに関しての演出はどうふうに話をしていくのかなというのが気になります」と質問。

監督は前出のシャンタル・アケルマン監督について言及し「アケルマンが自分の作品ついて語っていることですが、足音が大事だと語っていて、足音が聞こえるだけで観客にとっては物語を肉付けしたり、何が起きているかを感じさせたりする。だから大事なんだと語っていていることにすごく興味を持ち、今回の作品は、まさに岸さんに言って頂いたように、呼吸でいろいろなものを表現したいと思った」と明かした。そして「演技においては自然であるということを、私はとても好みます。役者さんは本当に素晴らしい方で、私を信頼してくれて、とても仕事を楽しむことができました。自分の解釈をお伝えして、彼自身の解釈であったり、息を吹き込んでしただき、本当に素晴らしい役者さんで、見事に表現して頂きました」と語った。

岸井は最後に「私はこの作品を見て、この作品の空気を感じて、自分にとっての正体というのは何なんだろうと考えて。いくつか自分思ってる不安は何なのか、自分で解答を出したんですけど、これを見て自分を見ることができました。自分の物語になるような作品なのでぜひ楽しんで見てください」と観客に呼びかけた。

「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきが特別ゲストで登壇
シャーロット・ウェルズ監督と岸井ゆきの

ウェルズ監督は「岸井さん今日来てくださってありがとうございました。作品を応援して下さていることはとても大きな意味があります」と岸に感謝の言葉を述べたうえで「この作品自体は、そのまま見ていただいた方がいい作品だと思っています。オープンな気持ちで見ていただければと思います。才能あふれる方々と作ることができて、彼らや彼女たちのおかげで私はここに立っています。できれば映画館で見ていただき、光が美しくスクリーンに投影される空間で見るのがいい作品だと思います」と締めくくった。

■「aftersun/アフターサン」作品情報

「aftersun/アフターサン」のシャーロット・ウェルズ監督来日記念舞台挨拶 岸井ゆきが特別ゲストで登壇
「aftersun/アフターサン」(© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022)

【STORY】思春期真っただ中のソフィ(フランキー・コリオ)は、離れて暮らす若き父・カラム(ポール・メスカル)とトルコのひなびたリゾート地にやってきた。輝く太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、親密な時間をともにする。20年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、ローファイな映像のなかに大好きだった父の、当時は知らなかった一面を見出してゆく…。

監督・脚本:シャーロット・ウェルズ(初長編監督作品)
出演:ポール・メスカル(ドラマ「ノーマル・ピープル」『ロスト・ドーター』)、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール
プロデューサー:バリー・ジェンキンス(『ムーンライト』)ほか
原題:aftersun/2022年/イギリス・アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/101分/映倫:G/字幕翻訳:松浦美奈
後援:ブリティッシュ・カウンシル 配給:ハピネットファントム・スタジオ
(2023年5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開)