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「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など注目映画のとっておき情報

(2020年6月28日23:40)

映画館がコロナ対策をして再開されたなか、映画評論家・荒木久文氏が現在上映中のシルベスター・スタローン主演の「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など注目の映画をピックアップ。その内容やとっておきのエピソードなどを解説した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、6月23日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など注目映画のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)





■シリーズ最終章「ランボー ラスト・ブラッド」

鈴木   今日はどんな作品ですか お願いします。

荒木   まずは、この夏にぴったりな「ランボー」です!

鈴木   最終作やるんですよね!?

荒木   そうなんです。
「ランボー ラスト・ブラッド」6月26日から公開です。

  シルベスター・スタローンのシリーズものと言いますと、「ロッキー」シリーズ、「エクスペンタブル」そして「ランボー」とありますが、今回はそのランボーシリーズの最終章と銘打ってあります。
そこで今回は、おそらく最後のランボーになるであろう「ランボー ラスト・ブラッド」公開を記念してシリーズを振り返ってみようと思います。

鈴木  おもしろそう…いいですね。

「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など短編映画のとっておき情報
「ランボー ラスト・ブラッド」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

荒木  ジョン・ランボーは、かつてアメリカ陸軍特殊部隊、通称グリーンベレーの兵士としてベトナム戦争を生き抜き、それからもいろいろなところで戦ってきました。ジョン・ランボー=シルベスター・スタローンの最高峰のシリーズと言われてきたので、振り返って総括してみようかなと思います。題してランボーフェス、ランボー祭ですかね。

もともと第1作目の1982年公開の「ランボー」はデイヴィッド・マレルの小説「一人だけの軍隊」が原作です。
ベトナム戦争から帰還したランボーが、ワシントン州の田舎町で警察から乱暴な迫害を受け、拷問のような対応に自らの身を守るために警察隊との戦いが始まるという筋書きです。いわゆるベトナム帰還兵物がスタートでした。

ダイちゃん観ていますか?

鈴木   3作目までは観てますね。

荒木   1作目は、アメリカンニューシネマっぽい暗い感じですね。

鈴木   ドラマみたいな雰囲気でしたね。

荒木   肌合いが違いましたね。

2作目は1985年の「ランボー/怒りの脱出」です。若き日のジェームズ・キャメロンが脚本を書いています。
刑務所で服役していたランボーが捕虜にされている米軍兵を救出するため、再びベトナムに侵入しあらゆる敵に囲まれながらも、たった1人のゲリラ戦で戦いに身を投じていく…というものでした。大ヒットしました。これがランボーの一番のイメージが強いですよね。

そして3作目は「ランボー3/怒りのアフガン」1988年公開です。

かつての上官がソ連軍に捕らえられたことを知ったランボーは、彼を救出するためアフガニスタンの要塞に潜入して最強の大ソ連軍師団にも怯まず、たった1人で戦いを挑むアクションでした。馬に乗ってましたよね。
現在になってみるとランボーがのちのアメリカの敵となるアルカイダと一緒に戦っているのがご愛敬でした。時代を感じますね。

鈴木  ここまでは確実に見てますね。

荒木   2008年は「ランボー 最後の戦場」です。
前作から20年の時を経てまさかの新作でした。一部では最高傑作とも言われています。 タイに住んでいたランボー、一方で隣国のミャンマーでは軍隊により少数民族のカレン族が迫害を受けていました。彼らに医療品を届けるボランティアグループがミャンマー軍に捕まってしまい、ランボーはボランティアを救出するため軍と戦うことになります。
今だとロヒンギャが連想されますよね。カレン族は本当にいるみたいです。ミャンマーには135民族がいるそうですからね。そういう中できちんとしたものを捉えて作られています。 鈴木   あれが4作目か…。 荒木  こうして見てくると、ランボーは色々活躍してきたんですけど本来は決して好戦的なタイプではありません。むしろ厭戦的なタイプですよね。できるだけ戦いは避けたいとか、世の中と関係のないところにいたいというような人です。

鈴木   そうですよね。人に背を向けていますもんね。

荒木   とにかく放っておいてほしいと常に願っている人ですね。
昔でいうと木枯し紋次郎。・・・・古すぎて誰も知りませんよね。「あっしには関わりのねえことでござんす」の。

そして今回最新作にして最終作品「ランボー ラスト・ブラッド」
70歳代になるランボーはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされながらも、今はアメリカに帰り、故郷アリゾナの牧場で古くからの友人マリア(アドリアナ・バラーサ)とその孫娘ガブリエラ(イヴェット・モンレアル)と“家族”として平穏に暮らしていました。ところが、娘ガブリエラが自分を捨てた、実の父親がメキシコにいると知り、ランボーやマリアの反対も聞かずに一人で危険な地に踏み込み、人身売買カルテルに拉致されてしまう。ランボーは最愛の“娘”同様にかわいがっていたガブリエルを救出し、一味への復讐を果たすため、元グリーンベレーのスキルを総動員し、想像を絶する戦闘準備を始めるというわけなんですが…73歳…。

この人ゲリラ戦が得意というか、正規戦はあまりできない人ですよね。
今回も大勢の敵を自分の牧場のアジトにおびき寄せ、そこで戦うためのいろいろな仕掛けを作ります。
その仕掛けがまた面白いのですが、クライマックス前の準備シーンが本当にワクワクします。この仕掛けがどう作動するんだろうとか。単純な落とし穴から引っかかると頭が吹っ飛ぶ仕掛けまでもうこれはゲリラ戦の天才であるランボーの、真骨頂、集大成です。
ラスト10分は大規模な「ホームアローン」だという人もいますね。血だらけの「ホーム・アローン」という感じ?

観るとスカッとしますが、今までのランボーの系譜から見るとちょっと違う路線ですかね。 観た人の意見は賛否両論で、やはり4で終わるべきだった、という声もあります。
まあ、ご覧になってから評価していただきたいと思います。
「ランボー ラスト・ブラッド」6月26日から公開です。
ということで、ダイちゃんとランボーフェスティバルやってたら時間がなくなっちゃいました。

鈴木   本当にランボー(乱暴)な時間の使い方してしまいましたね。

荒木   このあと短い映画をいくつかご紹介したいと思います。


■「悪の偶像」「あなたの顔」「さらばわが愛、北朝鮮」

「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など短編映画のとっておき情報
「悪の偶像」

まず、「悪の偶像」という6月26日公開の韓国のサスペンス映画です。
有力市会議員の政治家のミョンフェが主人公です。息子が飲酒運転し人をひき殺してしまいます。父親のミョンフェは揉み消しを画策します。現場に居合わせた被害者の妻が行方不明になっていて、ミョンフェと被害者の父がそれぞれ彼女を探すがことになりますが、それがさらなる悲劇を招き寄せていくことになる・・・という韓国の、第69回ベルリン国際映画祭パノラマセクション招待作品。イ・スジン監督という有名な監督による、韓国のサスペンス映画らしいぞーっとするような執念に満ちた映画です。

続いて、「あなたの顔」という6月27日公開の台湾映画です。ドキュメンタリーなんですが、タイトルに惹かれてフラッと映画館に入っちゃうと大変なことになる作品です。 衝撃を受け、釘付けになるか、お金はどうでもいいからすぐ帰ろうと席を立つか、たぶんどちらかになると思います。
画面に出てくるのは、顔、顔、顔・・・。有名人ではありません。その辺の普通の中国人のおばさんやおじさんの顔です。おじいさん、おばあさんかな。13人の顏がアップになって映っているだけなんです。

鈴木   ぐちゃぐちゃになったりとか笑ったりとかないんですか?

荒木   全然ないんですよ。ただ映ってるだけなんですよ。
黙って遠慮がちにカメラを見据える人、自然に身の上話を語る人、下手なハーモニカを吹く人、カメラを見ているうちにうたた寝をする人とかそういう人たちが映っているんです。

鈴木   荒木さん、それって何が楽しいんですか?

荒木   僕もそう思ったんですよ。

初めイライラするんです。何これと思います。しかしね、おじいさんたちの顔に刻まれた深い皺やまなざしから、彼らが生きてきた人生を考えるようになってくるんです。どんな少年時代を過ごしてきたのなか、海辺で育って漁師やってたのかなとか。説明は全くないけど空想するわけ。

鈴木   こっちの想像力任せじゃないですか。

荒木   そうなの。

時間そのものが浮かび上がってくるような気がします。鏡で自分の顔見ているのも嫌なのに、一人7,8分 じいちゃんばあちゃんの顔をジーと見ているって最初大変だな、と思いましたけど不思議な気持ちになってくるのは事実です。

鈴木  見切ったな という感じする?

荒木   ぼくはそう思いましたが、試写の途中で寝ようと思った人いたみたいですよ。
監督はかって「愛情萬歳」という作品でヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞、カンヌ、ベルリンの受賞歴を誇るツァイ・ミンリャンという人。5年ぶりに発表したドキュメンタリーですが、音楽を坂本龍一が担当しています。13の顔を大写しにし、顔に表れた各人の生きてきた時間を見つめようとする実験的映画ですね。最近見た中では一番変わった映画。
第75 回ヴェネツィア国際映画祭にてワールドプレミア。2019年台北電影節最優秀ドキュメンタリー賞・監督賞・音楽賞、2019年金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞受賞。第19回東京フィルメックス特別招待作品です。
最近観た中でも一番変わってる作品でした。覚悟して観に行かないと、時間を無駄にしたと思っちゃう人もいるかもしれません。

「あなたの顔」という台湾のドキュメンタリー映画でした。

最後は「さらばわが愛、北朝鮮」。6月27日公開の韓国とロシアの映画です。これもドキュメンタリーです。

1952年、今から68年前です。北朝鮮から8人の若者がソ連・モスクワ国立映画大学に留学しました。6年後の1958年、彼らは北朝鮮には帰らず当時の金日成首相を批判。エリートとしての約束された将来を捨てソ連に亡命しました。それから8人はどこでどう過ごしたのか?渋い映画です。
50年以上に渡り、カザフスタンをはじめとする中央アジアやユーラシアの各地で、映画監督や作家として活動した彼らのその後50年を追いかけた作品です。

鈴木   その8人って本当の話なんですか?

荒木   本当の話です。ドキュメンタリーです。
当時どのように考えてどんな活動をしたのか、彼らの生涯・真実に迫るドキュメンタリーです。先ほどの顏の映画に通ずるような、長い人生を見つめ直すという意味では共通する部分もありますね。非常に貴重な記録です。

ということで今日は「ランボー」から「顏」まで。

鈴木   前半のランボーでワクワクして頭の中に色んなシーンが浮かんだのに、後半の顏のお話で今日なんだったのかわけわからくなってしまいました。

荒木   個性的な映画をぶつけてしまいましたね。

鈴木   でも「あなたの顏」観てみたくなりました。

荒木  興味があったらね‥よく調べて行ってください。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。