「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」ウクライナのロシアとの戦いの原点を記録したドキュメント

(2022年3月8日19:30)

「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」ウクライナのロシアとの戦いの原点を記録したドキュメント
「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」(Netflixの公式サイトから)

2013年11月、当時のウクライナのヤヌコーヴィチ大統領が、公約していたEU加盟を反故にしたことに怒った市民ら数千人がキエフの独立広場に集まり抗議デモを繰り広げ93日間にわたって警察の特殊部隊と激しい戦いを繰り広げ、最終的に大統領がロシアに逃亡した「マイダン革命」を記録した迫真のドキュメンタリー。自由を求めた命がけの市民らの戦いが現在のロシアの侵攻に対する徹底抗戦と重なる。ウクライナのロシアとの戦いの原点がここにある。
2015年に製作されたエフゲニー・アフィネフスキー監督のドキュメント映画。Netflixのオリジナルで「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」の邦題で現在も配信中だ。

「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」ウクライナのロシアとの戦いの原点を記録したドキュメント
「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」(Netflixの公式サイトから)

映画ではマイダン革命までのウクライナの歴史を振り返っている。1991年、旧ソビエト連邦から独立したウクライナは、2004年に親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチが大統領選に勝利する。だが不正選挙として国民は抗議デモを繰り広げ、再選挙でヤヌコーヴィチは敗北して「オレンジ革命」と呼ばれた。しかし2004年にヤヌコーヴィチが大統領に返り咲く。国民が望むEU加盟を公約したが、一方で密かにロシアとの関係を強化して、2013年11月20日、EUとの協定に署名する寸前に停止し、大規模な抗議デモが起きる。きっかけはムスタファと名乗る人物がフェイスブックで「午後10時半に独立広場で会おう」と投稿したことだった。これが拡散し、11月21日に数千人がキエフの独立広場に集まる。ある若者はカメラに向かって「僕がここに来たのは政府が国の未来と若者の夢を台無しにしたからだ。僕の将来だけでなく子供たちの未来を守りたい」と訴える。
広場を埋め尽くしたデモ隊は「(EU加盟に)署名か地獄だ」「ウクライナはヨーロッパの一部だ」「ウクライナに自由を」などと口々に連呼。「この国がヨーロッパの一部だと示して体制を変える」と訴えた。これに対して政府は「ベルクト」と呼ばれる警察の特殊部隊を投入してデモ隊に襲い掛かる。こん棒で激しく何度も殴打してデモ参加者が頭などから血を流す様子をカメラはとらえ続ける。警官隊のデモ弾圧はエスカレートし催涙弾、ゴム弾からついには実弾を撃ち込み多数の死者が出る。デモ隊はそれでも徹底抗戦を続け、ほどんど内乱のようになり市街にがれきと負傷者があふれる攻防をとらえ、デモ参加者や識者らのインタビューを続ける。大規模な抗議行動は93日間続き、死者125人、行方不明65人、負傷者1890人に上ったという。ヤヌコーヴィチ大統領はロシアに亡命してプーチン大統領が受け入れる。プーチン大統領はその後も親ロシア派を支援して2014年に3月にクリミア半島を一方的にロシアに併合。ウクライナ東部でも親ロシア派の勢力が拡大してウクライナ政府との武力闘争が激化。そしてプーチン大統領はウクライナ侵攻に踏み切ったのだが、このドキュメントには8年前にウクライナの国民がロシアに支配されることを拒否して命がけで最後まで戦った魂の戦いが記録されている。

ドキュメンタリーの製作でウクライナ侵攻が続くキエフに滞在して3月1日(現地時間)に歩いてポーランドに向かっているところをツイッターで報告した米俳優ショーン・ペンは、2月28日のツイッターで、「ウクライナに関心を持ちながらも、最近の歴史や人々についてあまり知らない人は、ぜひドキュメンタリー映画『ウィンター・オン・ファイヤー』を見てください」と推薦していた。
(Netflixで配信中)