市川猿之助被告、懲役3年 執行猶予5年の判決

(2023年11月17日16:00)

市川猿之助被告、懲役2年執行猶予3年の判決
市川猿之助㊧の判決公判が行われた東京地裁

両親に向精神薬を服用させて自殺を助けた罪に問われた歌舞伎俳優・市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦)被告(41)、の判決公判が17日午後3時、東京地裁で行われ、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)が言い渡された。

猿之助被告は今年5月、都内の自宅で父親の市川段四郎さん(76)と、母親の喜熨斗延子さん(75)に向精神薬を服用させて自殺を手助けしたとして自殺ほう助の罪に問われた。

裁判官は、「自身に関する週刊誌の記事を読んだことをきっかけに自殺を考えた。両親が当初思いとどまるように言ったものの、猿之助被告の意志が固く一緒に自殺を決意した」と指摘。「短絡的というほかなく酌むべき事情が多いとは言えない。刑事責任は軽視することはできない」としたうえで「反省しており、前科、前歴がない」などとして懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を下した。

猿之助被告は黒いスーツに白いシャツ、青のネクタイにマスク姿で出廷。猿之助が発言することはなく裁判官の説諭もなく5分程度で終了し、傍聴席、裁判官に向かって頭を下げもう一度頭を下げて退廷した。

判決について法曹関係者は「執行猶予はついたが、検察側の求刑3年はそのままで、執行猶予の最長の5年としたところに2人が死亡している事件の重さが反映された」と指摘した。

10月20日に行われた初公判で、猿之助被告は、事件後にいろんな人と話すうちに「自分には歌舞伎しかない。許されるのであれば、舞台に立ちたい。歌舞伎で償っていきたい」と供述していたことが明らかにされた。このことから、一定の謹慎生活を経て歌舞伎俳優として復帰する可能性があるとみられるが、芸能プロ関係者は「執行猶予中に舞台に立つことは可能だが、復帰にあたっては、まずは週刊誌で報じられたセクハラ・パワハラについて、向き合い、あったのかなかったのか、事実関係について納得のある説明をする必要がある」(芸能プロ関係者)と指摘した。

猿之助被告は東京・目黒区の自宅で今年の5月17日から18日午前に、父親で歌舞伎俳優の市川段四郎(本名・喜熨斗弘之=当時76)さんと母親の喜熨斗延子さん(当時75)に睡眠薬を服用させるなどして、自殺を手助けした罪に問われた。


5月18日に猿之助被告のパワハラやセクハラ疑惑を週刊誌が報じており、猿之助被告は「私に関する記事が週刊誌に掲載されることを両親に話したところ、家族3人で次の世界へ行こうとなった」、「両親が自殺する手助けをしたのは間違いない。私も両親の後を追って自殺するつもりだった」と供述し、一家心中を図ったとみられていた。

■市川猿之助コメント全文「生かされた自分に、 これから何ができるか考えていきます」

判決を受けて松竹が猿之助のコメントを発表した。以下全文。

本日、裁判所から、懲役3年執行猶予5年の判決の言い渡しを受けました。失意のどん底で決意したこととはいえ、常に自分を見守ってくれた父と母を巻き込んでしまったこと、そして、歌舞伎界を含め、多くの皆様に治癒し難い傷を負わせてしまったことに対し、言い表せない罪を感じています。

自分の記事が世に出るとき、そのこと自体により、四代目猿之助を継承した自分が「猿之助」 という名前のみならず歌舞伎界という大きな伝統と文化に対し深い傷を与えてしまうこと、また成長を歩み続けている猿之助一門のみんなを暗闇の中に放り出すこと、その現実の大きさから自死を選んでしまいました。どん底の中で生き長らえることを選ばなかった自分の弱さを責めるしかありません。たとえ生活の場を失ったとしても、次の日を信じて静かに待つべきでした。生きることを諦める気持ちになったとき、 自死を成し遂げることだけを考えていました。
自分の精神状態の異常性すら理解できない状況に陥っていました。
「あなただけ行かせるわけにはいかない。」という両親の言葉も自然に受け止めてしまっていました。来世に向かう両親の身支度をし、そして、自分の終止符へと向かいました。

自分一人で抱え込まず、周囲の人に自分の不安や絶望を相談するべきでした。ただ、当時の自分は、自分の立場もあり、他の人には自分の気持ちは理解できないだろうと考え、また、周囲に弱みを見せることもできませんでした。

事件の日から今日まで生きてきました。毎日、あの日のことを思い返してきました。私だけが生き延びてしまった、父と母に申し訳ない、そういったことを考えていました。事件後も、死んでしまいたい、明日命が終わっていないかと思うこともありました。しかし、周囲や病院関係者の助けのおかげで、事件のときほど真に迫った自死の思いが生じることはありませんでした。
「最後に何か言いたいことはありますか。」という裁判官の言葉に対し、「自分にできることがあればやらせていただきたい。」と答えました。

今後は、生かされた自分に、 これから何ができるか考えていきます。これからは、一人で抱え込まずに、自分の弱さも自覚し、周囲の方々に相談し、助けていただきながら、一日一日一生懸命に生きていこうと考えています。
本当にご迷惑をおかけしました。
四代 市川猿之助

■松竹のコメント

松竹は「市川猿之助に関しまして」と題してコメントを発表した。以下全文。

本日、市川猿之助に対し、東京地方裁判所より両親への自殺幇助事件に対し、懲役3年 執行猶予5年の判決が下されました。
控訴期間が設けられております為、判決は確定しておりませんが、まずは弊社といたしまして、これまで弊社の製作主催する歌舞伎公演に数多く出演してきた市川猿之助が人命に関わる事件によって有罪判決を受けましたことを極めて重く受け止める次第です。
お亡くなりになられました市川段四郎ご夫妻に改めて哀悼の念を表します。

事件後、当局による捜査や公判を通じ、今回の件に至る様々な経緯や背景が市川猿之助本人からも説明されましたが、如何なる事情があったとしても 市川猿之助が行った判断は決して許されるものではなく、大きな過ちであったことは申し上げるまでもありません。

市川猿之助は、今後、自らの関与によってご両親を失った現実と悔恨の念に向き合いながら生きていくこととなります。弊社としてはまずは一人の人間として、亡くなられたご両親の分までしっかりとこの後の人生を歩んで欲しいと考えます。

市川猿之助としての今後につきましては、現時点ではまったく白紙の状態でございます。
弊社としては市川猿之助のこれまでの歌舞伎界への貢献に照らせば、本人を是非支えて参りたいと存じますが、本日の判決をどのように受け止めるか、弊社としても本人と時間をかけて話し合い、また、今回の件が社会全体に与えた影響や責任からも目を逸らさず、皆さまからのご意見にも耳を傾けながら、進むべき道を共に模索して参りたいと思います。 なお、今回の件の発端とされている一部週刊誌の記事に関しては、弊社としても、あらゆるハラスメント行為は決して許されないものと考えており、各公演の製作現場をより健全で開かれた環境とすべく、ハラスメント事象の通報窓口の利用を弊社社員に加えてすべての舞台関係者を対象に拡大するなどの取り組みを進めております。
現時点では報道された記事について、弊社として事実認識はございませんが、今後も然るべく確認を行い、その結果に応じて必要な対応を行ってまいる所存です。

一連の件移管しましては、お客様をはじめ皆さまに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを改めて深くお詫び申し上げます。
皆様方におかれましては、市川猿之助の今後をどうかお見守りいただきたく存じます。

■主な相談窓口
・いのちの電話 
0120・783・556(午後4時~午後9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時)
・#いのちSOS
0120・061・338(月・火・金は24時間。そのほかの曜日は午前6時~翌日午前0時)
・あなたのいばしょ (オンライン相談) https://talkme.jp

  • 今週のイベント

    11月13日(月) 将棋の藤井聡太八冠の内閣総理大臣顕彰式
    11月14日(火) サッカー・U17W杯 日本×あり善陳(インドネシア)
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    11月16日(木)  米大リーグMVP発表 プロ野球アジア・チャンピオンシップ(東京ドーム、19日まで) ⛳男子ゴルフ・ダンロップ・フェニックス(~19日、宮崎・フェニックスCC)⛳女子ゴルフ・大王製紙エリエール・レディース(~19日、愛媛・エリエールGC松山)
    11月17日(金) 両親の自殺を手助けしたとして自殺ほう助罪に問われた歌舞伎俳優の市川猿之助(本名・喜熨斗孝彦)被告の判決(東京地裁) 出演者の逮捕などを理由に文化庁所管の独立行政法人「日本芸術文化振興会」が、映画「宮本から君へ」に対する助成金交付を取りやめたのは違法かが争われた訴訟の上告審判決(最高裁第2小法廷) フィギュアスケート・GPフィンランド大会(~19日、エスポー)
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