「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェーン・カンピオン監督、批評家協会賞監督賞のスピーチで”炎上“ それでもアカデミー賞監督賞は大丈夫!?

(2022年3月25日21:50)

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェーン・カンピオン監督、批評家協会賞監督賞のスピーチで”炎上“ それでもアカデミー賞監督賞は大丈夫!?
ジェーン・カンピオン監督(Instagram@thepowerr4)

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェーン・カンピオン監督(67)が第27回放送映画批評家協会賞の授賞式で監督賞を受賞し、スピーチでテニスのスーパースター、ウィリアムズ姉妹についてコメントした内容が波紋を”炎上“して謝罪する事態に追い込まれた。27日(日本時間28日)に迫ったアカデミー賞の監督賞は大丈夫なのか?騒動の舞台裏を米メディアが報じた。濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」は外国語映画賞を受賞した。

米紙ニューヨーク・ポスト(電子版)によると、カンピオン監督は13日(現地時間)、ロサンゼルスで開催された放送映画批評家協会賞の授賞式でのスピーチで、テニスのビヴィーナス・ウイリアムズとセリーナ・ウィリアムズの姉妹に言及して「あなたたちはとても素晴らしい。でもあなたたちは、私のように男性と対戦することはなかった」とコメント。

この発言が波紋を広げ、女優ジョディ・ターナー=スミスはツイッターで「ジェーンは監督賞の受賞スピーチで2人の黒人女性に対して、自分の方がもっと抑圧されているといったのは、白人のフェミニズムの極み」と批判した。
コメディアンのライアン・ケンは「女性差別について指摘しようとして、最初に黒人女性の問題を最小化することに考えが及ぶのはとても意義深い。マイクに向かって、彼女たちの顔を見て、微笑みながら。これこそ、白人女性に拍手する仕事のために何年も待たねばならなかった理由だ」とカンピオン監督が12年ぶりに今作で監督したことを皮肉交じりに言及して批判した。

あまりの反響に、カンピオン監督は翌日、米誌「The Hollywood Reporter」を通じて謝罪する事態に。「私が映画界で行っていることと、セリーナ・ウィリアムズとヴィーナス・ウィリアムズが成し遂げたことと同一視する、思慮に欠けたコメントをしました。2人の伝説的な黒人女性として、また世界的なアスリートとしての価値を下げる意図はありませんでした」と謝罪した。

ウィリアムズ姉妹と父親をモデルにした「ドリームプラン」は父親役を演じたウイル・スミスが同省の主演男優賞を受賞。アカデミー賞主演男優賞の有力候補といわれている。ウィリアムズ姉妹は同作のプロヂューサーを務めた。ちなみに作品賞も「パワー・オブ・ザ・ドッグ」が受賞した。

「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェーン・カンピオン監督、批評家協会賞監督賞のスピーチで”炎上“ アカデミー賞監督賞は大丈夫か?
「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(Instagram/@netflixjp)

思わぬ”失言“でカンピオン監督のアカデミー賞監督賞はピンチかと思われた。今年の賞の投票は3月22日に締め切られた。
だが、ある内部関係者は、「映画芸術科学アカデミーが女性に賞を与えることを決定しているため、カンピオンは日曜日にオスカーを受賞するだろう」と語ったという。
カンピオン監督は、英国アカデミー賞、批評家協会賞、全米監督協会賞でも監督賞を獲得している。1925年を舞台にした権力と復讐の西部劇は、今年のアカデミー賞で最多ノミネート作品(12部門)であり、歴代のオスカー候補作のなかでも多数のノミネート作品である。(「イヴの総て」、「タイタニック」、「ラ・ラ・ランド」がそれぞれ14部門)。
「ジェーン・カンピオンは、俳優から素晴らしい演技を引き出した歴史があります。ホリー・ハンターとアンナ・パキンは、(カンピオンの1993年の映画)「ピアノ・レッスン」で受賞しています。彼女は大規模なリハーサルにこだわります。俳優たちは彼女を気に入っています」と関係者は語る。


あるアカデミー賞投票者は「(ノミネートされた)5人の監督のうち、唯一の女性監督に賞を与えないのは、もっと大きな政治的妥当性を欠く発表になる」と指摘した。一方で「おそらく彼女は監督賞を取るだろうが、作品賞は『コーダ あいのうた』が取るだろう。それが、ジェーンの報いかもしれない。アカデミー会員全員(約9000人)が投票する。きっとその中には怒っている連中もいるに違いない」という意見も。
もしカンピオンが監督賞を獲得すれば、キャスリン・ビグロー(「ハートロッカー」2008年)、昨年のクロエ・ジャオ(「ノマドランド」)に続いて女性監督の3人目となる。ちなみに監督賞には彼女のほかにケネス・ブラナー(「ベルファスト」)、スティーヴン・スピルバーグ(「ウエスト・サイド・ストーリー」)、ポール・トーマス・アンダーソン(「リコリス・ピザ」)、そして日本の濱口竜介(「ドライブ・マイ・カー」)がノミネートされている。はたして当日名前を読み上げられるのは誰なのか注目される。