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「浅田家!」 二宮和也が「家族写真」を撮り続けるユニークなカメラマンを熱演

(2020年10月3日15:30)

「浅田家!」 二宮和也が「家族写真」を撮り続けるユニークなカメラマンを熱演
「浅田家!」(新宿ピカデリー)

家族で消防士、バンドマン、レーサーなどに扮したユニークな写真を撮り続けた写真集「浅田家」で、写真界の芥川賞といわれる第34回木村伊兵衛写真賞(2008年度)を受賞。その後、家族がなりたかったものや家族でやってみたいものをテーマに様々な家族の写真を撮り続ける写真家・浅田政志氏の活動と東日本大震災(2011年3月11日)の現地で体験した感動的な実話に基づいて、「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年)で数多くの映画賞を受賞した中野量太監督がオリジナルストーリーとして映画化した。主人公のカメラマン・浅田政志を「母と暮らせば」(2015年)で第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞など、「検察側の罪人」(2018年)で同最優秀助演男優賞などを受賞している若手実力派俳優の二宮和也が演じているほか、政志の父親に平田満、母親に風吹ジュン、兄に妻夫木聡、政志の幼馴染に黒木華、ボランティアの男性に菅田将暉などが脇を固めている。

■ストーリー

幼い時に写真好きの父親(平田満)からカメラをもらった主人公の政志(二宮)は、写真を撮り続けていた。成人した政志は母親(風吹)や兄(妻夫木)を巻き込んで、本物の消防車や消防服を借りて一家で消防士に扮したり、レーサーになったり、ヤクザの一家、泥棒家族に扮したユーモラスでユニークな家族写真を撮り、出版社「赤々舎」の社長(池谷のぶえ)に注目されて写真集「浅田家」を出版。最初は全く売れなかったが、木村伊兵衛写真賞を受賞して名前が知られるようになり、家族写真の制作を募集すると全国から依頼が集まり、「浅田家」のようなユニークな家族写真を撮影し続けていた。そうしたなか、東日本大震災が起こり、かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった現地で、がれきの中に残された大量の泥にまみれた写真を洗浄して家族に届けるボランティアを行っている若者(菅田)に遭遇し、手伝ううちにある少女から「私の家族写真を撮ってほしい」と依頼される。

■見どころ

主人公の政志が一家を巻き込んでさまざまなコスプレをして写真を撮り続けるユーモラスな家族のドラマが繰り広げられる前半と、東日本大震災が起きた後に現地を訪れ、震災以前に撮影した家族を探すうちに出会った写真を洗浄するボランティア活動に参加しながら、様々な家族の写真と、亡くなった家族の写真を探す残された被災者に遭遇していくシリアスな後半が対照的で、写真を通して家族のドラマが多面的に深く描かれている。まるで被災地の現場にいるようにリアルでスクリーンに引き込まれる。二宮が「家族写真」を撮り続けるカマラマンを前半はユーモラスに、そして後半ではシリアスに熱演。政志の父親役の平田満、母親役の風吹ジュン、兄役の妻夫木聡、幼馴染で彼を応援し続ける若奈役の黒木華、ボランティア青年役の菅田将暉ら演技派が確かな演技で存在感を見せドラマを盛り上げている。そして東日本大震災後の現地で自然発生的に起こったという写真洗浄と大規模な展示で、亡くなった家族の写真を発見していく被災者たちとボランティアたちや政志の喪失と再生のドラマには心を打たれる。(2020年10月2日公開)