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映 画

「アマチュア」「プロフェッショナル」「ゴーストキラー」のとっておき情報
(2025年4月21日9:00)
映画評論家・荒木久文氏が、「アマチュア」「プロフェッショナル」「ゴーストキラー」のとっておき情報を紹介した。トークの内容はFM Fuji「Bumpy」(月曜午後3時、4月14日放送)の映画コーナー「アラキンのムービー・ワンダーランド」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。
鈴木 よろしくお願いします。
荒木 春のアクション映画特集ということで集めてみました。大丈夫ですか?春のハクションは?
鈴木 花粉症酷いんですよ。
荒木 そうだろうねぇ、気をつけて。
鈴木 気をつけられないんですけど(笑)。お願いします。
荒木 まずは先週から公開のアクション映画「アマチュア」です。
プロ、アマチュアのアマチュア、しろうとって事ですよ。おもしろいタイトルです。
主演はあの「ボヘミアン・ラプソディ」でアカデミー賞を受賞したラミ・マレックです。

鈴木 おおー!
荒木 「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」も悪い役をやってました。
主人公はチャーリー・ヘラー。ラミ・マレック。彼はスパイの総本山、CIA本部でサイバー捜査官として働いています。具体的には「情報分析のプロフェッショナル」なんですよ。暗号解析などを専門にやっているんです。いわゆるCIAのスパイとは全く無縁で、銃も打たなければ格闘や暗殺の経験もないという、朝出勤して夕方には家に帰る、いわば一般事務職ですね。
鈴木 9to5な人なんですね。
荒木 そうそう デスクワーカーです。普通のサラリーマン。
会社員ですね。それにチャーリーは内気で人見知りの性格で愛妻家なんです。
だからCIAに勤務している以外はほんとに一般市民として平平凡凡な生活をしているんです。
鈴木 アクション映画なんですか?それ。
荒木 はいもちろん。ところがある日、ロンドンに海外出張していた奥さんが無差別テロ事件にあって死亡しちゃうんです。このことで彼の人生は変わるんですよ。
チャーリーは妻を殺した犯人を見つけ出し、自分の手で殺すと決意するんですね。
頼み込んでCIAの特殊任務部門、いわゆるスパイ部門で銃や格闘技の訓練を受けるのですが、フィジカルな戦いなどとは今まで全く無縁で経験もないチャーリーなので、教官からは「お前には能力がない。おばあちゃんと腕相撲やっても負けるよ」と言われる程ひ弱なんです。「精神的にも、とても人は殺せないからあきらめろ」と諭されます。
こうしてCIAの協力も得られないまま孤立したチャーリーですが、誰にも頼らず自分だけで自分なりにかたき討ちをすることを誓うんです。彼ならではの方法、具体的には高い知能指数・分析能力を駆使してテロリストたちを追い詰めていきます。
さあ、彼はいかにして復讐を実行するか?という、そういうお話です。
鈴木 ネット関連でいろいろサイバー系とかねぇ。
荒木 そうなんですよ。
鈴木 考えられるのは、そっちですよね?
荒木 「アマチュア」という意味分かりますよね。CIAのプロフェッショナルであってもジェームス・ボンドやイーサン・ハントのようないわゆる「スパイ」じゃないんですよね。プロのスパイとは違う全くのアマチュアなんです。それでも不可能と思われるような計画に取り組んでいくという。ま、アマチュア・スパイと言ったらいいのかな。大体、ラミ・マレックって貧相ですよね。
鈴木 変な話、ハリウッド映画俳優って感じじゃないですもん。
荒木 そうですよね。多分、身長も170㎝そこそこでしょうね。やせっぽっちだから、運動神経もそんなにないタイプだよね。ダイちゃんの方がよっぽどスパイ体型ですよね。
鈴木 あはははは。実は私、あまり言えないんですけど、スパイなんですよね。
荒木 あ…そうですか。やっぱり(笑)。でもね、普通のスパイ映画とはちょっと違ってるんですけど、アクションシーン、カーアクションシーンは沢山ありますよ。
鈴木 あるんですか?
荒木 あります、あります。爆発シーンもいっぱいあるし。
鈴木 爆発シーン1発目で死んじゃうとかじゃないんですよね?
荒木 うーん 大丈夫です。生きてます。彼は、頭がいいんで爆薬を学んで爆薬のプロになるんです。キャラ的には地味なんですけど、頭と知識と情報を駆使して、今や世界中で防犯カメラ設置されていて、そこに侵入して犯人を割り出したりしてゆくんですね。だから、アクションと頭脳戦のミックスの映画ですね。
鈴木 面白そうじゃないですか、それ。
荒木 面白いですよ。これは小説「チャーリー・ヘラーの復讐」と言うタイトルの原作があって今回2度目の映画化なんだそうです。
鈴木 前回もラミ・マレックだったんですか?
荒木 違います。1981年のカナダ映画だそうです。「ザ・アマチュア」と言うタイトルなんですけど。見比べてみると面白いと思うんでちょっとやってみたいと思います。今と状況が違いますからね、インターネット環境とか。
鈴木 画像とかも違ったんじゃないんですか。
荒木 そうそう。非常に、そういう意味で面白い作品なんで。
公開中「アマチュア」です。
今のは「アマチュア」次は「プロ」。正反対のタイトルで、「アマチュア」に対して「プロフェッショナル」。現在公開中です。

鈴木 うまい具合に対比になってるね、時期が。
荒木 重なっているんですよ。ダイちゃんも大ファンのリーアム・ニーソンが主演を務める1970年代の北アイルランド紛争を背景にした映画。公開中の「プロフェッショナル」です。舞台は1974年北アイルランド。わかりますよね。紛争のあったアイルランドの北ですよ。フィンバーという主人公、ダイちゃんも大好きなリーアム・ニーソン。
彼は田舎町で古本屋を営んで静かな暮らしを送っていました。しかし彼は裏では長年にわたり殺し屋として暗躍してきた男だったんです。
鈴木 そういう役、似合うよね。
荒木 もうそろそろ歳なので裏家業は引退しようと思っています。が、
そんな時に首都ベルファストで爆破テロ事件を起こしたアイルランド共和軍、例のIRAですよね。この過激派グループがその町に逃げ込んでパブの店主の家に隠れ住むという事件が起こるんです。そのテロリストのひとりがその家の少女を虐待していると知ったフィンバーは少女を助けるために動き出すんです。が、その男は結局別の男に殺されるんですけど、テロリストたちは仲間を殺したのはフィンバーだと思って攻撃してくるんです。
で、後戻りできない状況に追い込まれたフィンバーは命懸けの戦いに身を投じて行くというお話なんですよ。ま、いつものパターンです。
鈴木 いつものパターンですよね(笑)。
荒木 この人は6唯々強いんですよ。スパイアクションも「アマチュア」と違って板についているし、さすがに最近は歳で認知症のスパイも演じたりしていますから(笑)。でも72歳、192㎝ありますから立派な老人なのにプロっぽいですよ、本当に。
鈴木 ラミ・マレックと全然違うじゃないですか。
荒木 全く違う!対照的ですね。この人、映画の舞台の北アイルランド生まれなんです。つまりアイルランド人なんですよ。アクション映画専門俳優と思われているのですが、本当は演技派なんです。
鈴木 シンドラーとかあったもんね。
荒木 そうそう。今までもアイルランドに関わる作品に多く出演してきました。まず96年に演じたのはイギリスからアイルランドが独立した時の英雄「マイケル・コリンズ」、これも演じましたし。これでベネチアの男優賞を取っているのかな。
他にも2009年の「レクイエム」では北アイルランド紛争のさなかにカトリック信者を殺してしまった男の30年後を見事に演じていましたね。
今回の映画はアメリカ映画なんですね。「プロフェッショナル」という英語タイトルで。
でも、キャストもスタッフもアイルランド人がほぼほぼなんですよ。脚本も。ロケ地も当然アイルランドですね。私は行ったことないけどダイちゃんは行ったことありますか?
鈴木 行ったことないんですけど、昔、アメリカのロスに住んでいる時にね、アイルランドの祝日の「セント・パトリックス・デイ」っていう、みんなが緑を着て町中を練り歩くっていうところに出くわして。その日、アイルランド出身のU2がボストンでライブをやるっていう凄い熱気になっていて、まるでデモを行っているような行進を普通にアイルランド人が町に繰り出してやってましたよ。
荒木 へぇー、アイルランド人というと気が荒いって言うイメージですけど、本当は自虐ネタを交えつつも品のあるウィットが特徴で親しみやすい人たちだそうですね。
鈴木 ロイ・キーンなんかそういうイメージですよ。なんかちょっと。
荒木 そうですね。作家だとオスカー・ワイルドやジョージ・バーナード・ショー。女優さんだとシアーシャ・ローナン。それから子孫ですけどジョン・F・ケネディね、先祖がアイルランドからの移民ですね。エンヤなんかもいますね。話、それてしまいましたが「プロフェッショナル」。現在公開中ですのでいきいきと本来のアイルランド人を演じているリーアム・ニーソンを見てください。
鈴木 午前中は「アマチュア」見て午後は「プロフェッショナル」という流れもいいですね。
荒木 面白いですね。
最後は日本の映画です。現在公開中「ゴーストキラー」。
殺し屋幽霊とでも言いますか。この番組でも過去に取り上げた「ベイビーわるきゅーれ」シリーズ、覚えてますか?

鈴木 覚えてます。
荒木 ここから生まれた作品なんですね。この作品のアクション監督として知られる園村健介さんがメガホンで「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで監督を務めていた阪元裕吾さんが脚本で、髙石あかりさんが単独主演を務めたアクション作品です。
ストーリーです。女子大生のふみかちゃん、もちろん髙石あかりさんなんですけど、
彼女は或る日道端に転がっていた一発の弾丸、ピストルの薬莢を見つけるんです。
その弾丸を持ち帰った彼女は部屋で自分にしか見えない男を見て、パニックに陥ります。元殺し屋だという工藤という男の幽霊だったんです。何者かに殺され成仏出来ずに彷徨っていたのですが、ふみかちゃんに拾われとり憑くんです。彼女は工藤の手に触れると彼女に彼が乗り移るわけです。身体に同居するわけです。同時に生きていた時の工藤の身体能力も、殺し屋ですから格闘技や拳銃やナイフ技術も同時に乗り移るんです。
だから外見はふみかだけど能力は工藤というわけですよ。そういう設定でふたりは、殺された工藤の無念を晴らすために復讐へと動き出すというわけです。
鈴木 じゃあ、ふみかちゃんと工藤は手を組むわけですね。
荒木 そういう事です。喧嘩しながらね。だから「ヴェノム」みたいなパターンですね。
鈴木 なるほど、わかるわかる。
荒木 殺し屋は三元雅芸さんが工藤役なんですけど、この人もなかなか面白いですね。交互に体の中で会話するんです。工藤の口調になったり、ふみかの口調になったり、それもころころ変わるんです。しかもアクションしながらですからね。これ大変ですよ、凄いですよ。
鈴木 大変でしたね、多分ね(笑)。
荒木 キャーとかわいい悲鳴あげたり、どすの利いたセリフを吐いたり、髙石あかりさん、演技賞ものです。アクションはキレッキレですし。なんせ「ベイビーわるきゅーれ」ですから。
鈴木 アクションもふき替えなしでやってるのかな?
荒木 ふき替えなしでやってます。彼女、アクション女優でもありますからね。これが交互に入れ替わっていくんですよ、男と女と。だから男が映る場合と彼女が映る場合もあるし両方映る場合もあるし…。
鈴木 僕もシャーリーズ・セロンと同居したいですね、体の中で。
荒木 みんなそうだよ。
鈴木 みんなそうだよ…、ごめんなさい。
荒木 あはははは、みんなそう。私も髙石あかりさんと…。巻き込まれものというか、乗り移られものですね。海外リメイクも決定しているようですね。
それにしても髙石あかりさんいいですね。あのはっきりした顔立ち。悪役でも十分通用すると思います。映画「私の幸せな結婚」での敵役やっていまして、つい先日までテレビドラマでも活躍していましたけど、10月からかな、NHKの朝ドラ「ばけばけ」の小泉八雲の妻役らしいんですけどヒロインですから、楽しみですよね。しかも『2025年ネクストブレイクランキング』の女性俳優部門1位ですって。
鈴木 じゃあ、将来有望間違いなしだね。
荒木 今年ブレイクでしょう!この人。そういう意味でも注目ですね。
現在公開中の「ゴーストキラー」でした。今週、アクション多いんですよ。
鈴木 なんでだろう、ちょっとウキウキな?
荒木 そうかもしれないですね。「サイレントナイト」とか「アンジェントルメン」とかもありますので、お好きな方は是非見ていただきたいと思います。
気軽にコーラとポップコーン楽しみながら。
鈴木 僕は、昔2日間ぐらいアクション映画ばかり見ていたんですね。
そしたら知らないうちに体に力が入っていたようで、何もしてないのに2日後に筋肉痛になってましたよ。首とか腕とか。なんかぐーってやって行け―!とかやっていたみたいで。
荒木 それ、乗り移っちゃったんじゃないの?
鈴木 そうかもしれないですね。
荒木 やっぱり見ると力入りますからね。
鈴木 ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年生まれ。長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。
■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。