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映画「金子文子 何が私をこうさせたか」 虚無主義者、無政府主義者の反逆の人生
(2026年2月25日10:30)

大正初期の虚無主義者で無政府主義者の金子文子(1903‐1926)の反逆の人生を描いた映画「金子文子 何が私をこうさせたか」(浜野佐知監督)が28日から公開になる。
1923年9月、朝鮮人の虚無主義者、民族主義者の朴烈とともに検挙され、1926年3月、大逆罪で死刑判決を受けた虚無主義者、無政府主義者の金子文子は恩赦で無期懲役に減刑され栃木女子刑務所に送られたが、同年7月23日、独房で23歳の若さで自死した。
本作は、残された生の声を伝える短歌をもとに、これまで空白だった死刑判決から自死に至る121日間の、たった一人の金子の闘いを描く。







金子文子に2005年、映画『YUMENO』(鎌田義孝監督)で初主演し、本格的に女優デビュー。瀬々敬久監督の『ヘヴンズ ストーリー』、『64』などの話題作に出演している菜葉菜。
虚無主義者の朴烈に22年、自身が中心となり映像プロジェクト集団【STUDIO NAYURA】を設立し、舞台「象」(22)の演出を務め、企画・プロデュースを手掛けたオムニバス映画『無情の世界』(23)、ピエール瀧主演映画『水平線』で監督デビューの小林且弥。
予審判事の立松に『ケイコ目を澄ませて』(22/三宅唱監督)、『霧の淵』(24/村瀬大智監督)、『大いなる不在』(24/近浦啓監督)、『雪風 YUKIKAZE』などの三浦誠己、金子の朝鮮の祖母に吉行和子、女囚の香月トヨに大方斐紗子、市ヶ谷刑務所所長に菅田俊などのキャスト。
監督は浜野佐知。ピンク映画を経て1971年に監督デビュー。1985年旦々舎設立。以後、監督・プロデューサーを兼任し、300本を超える作品を発表。1998年から一般映画の制作・配給も手がける。主な作品に『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』(98)、『百合祭』(01)、『こほろぎ嬢』(06)、『百合子、ダスヴィダーニヤ』(11)、『雪子さんの足音』(19)など。2000年第4回女性文化賞受賞。
■浜野佐知監督のコメント
「私が金子文子と出会ったのは、文子が獄中で残した自伝『金子文子 何が私をこうさせたか』でした。
読み進むうちに時代も年齢も違うのに、文子の魂が私の中で蘇ったかのような感覚を覚えました。
日本という国からの、あらゆる差別に猛然と反発した文子、その怒りを、私は自分の怒りとして受け止めたのです。無籍者として存在を消され、一時期奴隷同然の生活を強いられた文子とは比べ物にもなりませんが、私もまた、女は映画監督になれないと門を閉ざした日本映画界で、映画監督への道を歩み、生き抜いてきたからです。
100年後の 「今」 という時代にこそ、権力に抗い、たった一人で国家に戦いを挑んだ 「文子」という爆弾を投げ込みたい。その私の願いが、まるで文子が乗り移ったかのような菜葉菜さんという役者を得て、今作品で結実しました。ぜひ一人でも多くの人に見ていただけることを願っています。」
【ストーリー】
父が出生届を出さず「無籍者」として育ち、9歳の時に日本の植民地だった朝鮮に住む祖母の家に引き取られる。奴隷同然の虐待を受け、13歳で自殺を決意するが、思いとどまる。
16歳で内地に戻され、その後東京で苦学し、キリスト教、社会主義、無政府主義とたどって、権力や生物の絶滅を謳う虚無主義に行き着いた。そして朴烈と出会う。彼は朝鮮で独立運動に参加し、日本に逃れてきた虚無主義者だった。
二人は不逞社を組織して、日本の帝国主義、植民地主義を批判する活動を開始する。しかし、関東大震災の際に検束され、官民による朝鮮人虐殺を正当化するための、皇太子を狙った爆弾犯としてフレームアップ(でっちあげ)される。
文子も朴烈も冤罪を主張するのではなく、「大逆罪」(天皇や皇族に対して危害を加えた、あるいは加えようとした罪)を引き受け、日本の国家と対峙して思想的な闘いを展開した。大審院で死刑判決が下されるが、恩赦で無期懲役に減刑された。文子は減刑状を破り捨てる。
栃木女子刑務所に送られた文子は、恩赦に感謝し、皇室に恭順の意を示すよう強要されるが、一貫して拒絶する。1926年7月23日、独房で自ら縊死した。23歳だった。これまで空白だった死刑判決から死に至る、金子文子の最後の闘いを、残された数少ない短歌と共に描く。
【見どころ+】
金子文子の反逆の人生がリアルに、痛烈にに描かれている。幼少時代の朝鮮での過酷な体験と16歳で日本に戻ってから、キリスト教、社会主義、無政府主義から、権力や生物の絶滅を謳う虚無主義に行き着く金子の思想的バックボーンや、爆弾犯にフレームアップされて死刑判決を受ける。そして刑務所で最期を迎えるまでの想像を絶する過酷で数奇な人生が浮き彫りになる。そして菜葉菜が反逆の女闘士然とした硬派な演技で金子を熱演している。金子が朝鮮人の朴烈とともに検挙されたのは関東大震災の2日後だったという。震災直後の混乱に乗じて朝鮮人の虐殺事件が起きたり、アナキスト(無政府主義者)の大杉栄ら3人が連行され憲兵大尉甘粕正彦らに殺害された甘粕事件が起きており、そうした時代背景の中で金子検挙があったという権力側の暴挙の歴史の問題も提起している作品になっている。それは現代に通じる様々な問題をはらんでいるように思える。例えばスパイ防止法(国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案)は日弁連が人権侵害の危険が極めて大きいなどの問題を指摘して反対の決議をしたことや大幅な軍備拡大などがそうだろう。
【クレジット】
出演:菜 葉 菜
小林且弥/三浦誠己/洞口依子/白川和子/結城貴史/和田光沙/鳥居しのぶ
咲耶/佐藤五郎/足立智充/贈人/浅野寛介/森了蔵/関根大学/巣山優菜/草野康太
伊藤雄太/紫木風太/小水たいが/藤本タケ/宝井誠明/荒木太郎/柳東史
大方斐紗子/菅田俊/吉行和子
監督:浜野佐知
企画:鈴木佐知子 脚本:山﨑邦紀 撮影監督:髙間賢治(JSC)
音楽監督:吉岡しげ美 照明:上保正道 録音:山口勉 美術:佐々木記貴
セットデザイン:中嶋義明 製作:森満康巳 助監督:永関勇 衣裳:青木茂
ヘアメイク:小堺なな 編集:目見田健
製作・配給|旦々舎
日本|121分|映倫レイティング|PG12
©旦々舎
2026年2月28日(土)より ユーロスペースほか全国順次公開