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青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報

(2020年9月1日17:00)

映画評論家・荒木久文氏が、青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、8月25日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   夏バテとかしてないかな?荒木さーん!

荒木   はい、荒木です。

鈴木   元気じゃないですか!

荒木   はい、元気ですよ。気力を振り絞ってやってますよ。

鈴木   8月も最終週になって、朝晩は涼しくなってきちゃって、あれだけ暑かった夏がやだやだと言ってたのに寂しい気持ちなんですけど。
荒木   そうですね。ダイちゃんは夏男ですもんね。私はそこまで寂しくはなくて、涼しくなってよかったなぁという感じです。

鈴木   そうですよね。

荒木   もう歳だからね。そんな感じですけど、この時期、8月の終わりはうら寂しいというのはありますよね。

鈴木   ちょっとおセンチになりますよね。

荒木   そうですよね。特にいつもと違って今年は不完全燃焼で、夏らしい夏を過ごせなかったっていう人が多いからね。

鈴木   おっしゃる通りでございます。

青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報
「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」 (TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

荒木   ということで、そんな人のために、日本は夏休み明けですが、欧米などは新学期が始まるということで入学の季節でもあります。
逆に入学のシーズンは5月6月なんですよね。

今日一本目は8月21日から公開中の作品『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』という作品です。
タイトルの英語、ブックスマートという意味は、一般的には、学識や知識はあるが常識がない人、この場合は「がり勉」という意味です。つまり「がり勉の卒業の前の夜の初めてのパーティー」というような意味ですね。

鈴木   ははは。青春、青春!

荒木   そうですね。
ストーリーですが、ブックスマートと呼ばれる女の子、モリーちゃん。生徒会長で、がり勉。かわいいのですが、ちょっとぽっちゃりでイケてるとは言えないかな?という感じです。いつもつるんでいる友達はエイミー、いわゆる、バディですね。彼女はレズビアンですが、二人はカップルじゃなくて相棒。二人は高校生活中、がりがり勉強して名門大学への進学も揃って決まり、明日は卒業式という日です。
ところがこの二人、ふと気づくと周りの年中遊んでばっかりいたはずのクラスメイトたちも一流大学や、有名企業へのハイレベルな進路を歩むことを知ります。
わたしたちは遊びもしないであんなに一生懸命勉強して、やっと大学合格したのに…あいつら遊んでばかりだったのに…と2人は自信喪失してしまいます。
むしろ、自分たちが見下してきた同級生たちの方か充実した高校生活を送ってきたわけですよね。モリーたちは大ショックです。

鈴木   あららら、痛いなぁ…。

荒木   卒業前夜に自分たちにとってはとても理不尽な現実を突きつけられたわけですね。プライドをへし折られ、焦るモリーは親友のエイミーと4年分の青春を取り戻そうと考えます。
後れを取った高校時代の「遊び」を一晩で取り戻そうとエイミーを誘って、呼ばれてもいないクラスの人気者が選ぶ「卒業パーティー」に強引に押しかけようとします。
せめてそこで大騒ぎして憂さを晴らそうというわけです。
ところが、招かれてもいないのでそもそもパーティー会場がわからず、あっちへ行ってみたり、こっちへ行ってみたり。超迷走してやっと会場に辿りついた彼女たちに待ち受けていたのは、怒涛のようなそして超デンジャラスな夜だったんです…。

鈴木   面白そうじゃないですか!

荒木   面白そうでしょ。
主演は俳優ジョナ・ヒルの妹としても知られる『レディ・バード』のビーニー・フェルドスタインと、『ショート・ターム』のケイトリン・デバー。新人さんたちです。
監督は『リチャード・ジュエル』等の女優オリヴィア・ワイルドです。狐顔の非常にきれいな美人で、賢そうな印象がある女優さんです。

鈴木   ちょっときつい感じですよね。

荒木   そうそう。

コメディからシリアスなものまで幅の広い芸域の人ですよね。彼女が、この作品で長編劇場映画監督デビューを飾りました。グレタ・ガーウィングと言いい、ここのところアメリカでは女優さんを兼ねる監督が元気いいですね。

スクールものというと深刻な作品もあるんですが、これは全くの明るい青春映画です。暗いところは描かれていません。イケてるグループと、そうじゃないグループの対比とかは、スクールカーストになりがちなんですけど、サラーッと描かれていて、クラスメイト達はマイナス面の人種的偏見や差別もなく、邪魔者扱いするような人はいなくてみんな互いに認め合うパターンです。

鈴木   理想的じゃないですかぁ。

荒木   そうですよね。

この二人、モリーもエイミーもイケてるグループではないし、一人はレズビアン、片方は太っちょなんだけど、どんなに意地悪なクラスメイトもそこを突っ込みません。二人はお互いを「最高だ」ってめちゃくちゃ褒め合うし、少しでも自分を卑下しようものなら、「私の親友の悪口を言うのは許さない」と言い切るのもいいですね。
プロムの話にありがちな、過剰に青春を崇拝することがなく、乾いていてひたすらポップで良かったです。
いかにもアメリカ的な学園青春コメディですので、とにかく登場人物一人一人が超個性的で、まともな人を探すのが難しいですが、それが驚きと爽快感があってとても心地いいですね。
ダイちゃん、卒業前夜を描いたアメリカ映画というと何が思い浮かびますか?

鈴木   アメグラでしょ!『アメリカン・グラフィティ』でしょうね。

荒木   そうですよね。60年近く前ですよね。ジョージ・ルーカス、それからこの世界の神様のような人、ウルフマン・ジャックも出てましたよね。

鈴木   うん、その通りですね。

荒木   公開当時ご覧になりました?

鈴木   いや、公開当時じゃないですね。73年の映画だったと思うので、僕は中学生くらいのときに、ある意味「10年前の名作」みたいな形で初めて観たんです。

荒木   そうですか。

鈴木   そう。そしたらちょうどケネディ大統領が亡くなる前のアメリカを描いていて…。

荒木   そうなんですよね。大統領暗殺やベトナム戦争前の本当にいいときのね。

鈴木   そうそうそう。最後の青春という感じで本当に感動しましたね。

荒木   その時代の『アメリカン・グラフィティ』と比べると、社会的な背景を取り入れてると思うんですけど、女性同士の会話に下ネタやセックス用語がめちゃくちゃ多いんです。そしてLGBTが大したことじゃなくなっている、つまりレズビアンやゲイが常識になっているんですね。いつの時代も青春映画があって、社会の背景を取り入れているんだなぁと思いました。リズムもあってあまり七面倒なことを考えずに、いい意味でノリで見られる作品ですね。欲求不満的な夏を過ごした方には少し刺激にはなりますかね。

ということで、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』という作品でした。

鈴木   荒木さん、卒業前夜とかって何か大騒ぎしたんですか?

荒木   いや覚えてないけど、ほとんどしてないですよ。地味にあの頃はね。ダイちゃんは?

鈴木   起きたら卒業式だったっていう感じですよ。

荒木   そうだよね。就職だとか次の仕事のことで頭がいっぱいで。

鈴木   そうですよね。

荒木   私は卒業式出なかったな、たぶん。

鈴木   何してたんですか?寝てたんですか?

荒木   よくわからない。遠ーい昔のことだから。

鈴木   ははは。そうですよね。

青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報
「ソワレ」(テアトル新宿、テアトル梅田、シネ・リーブル神戸ほか全国公開中 © 2020ソワレフィルムパートナーズ)

荒木   もう1本行きましょう。
こちらは夏の日の逃避行といった感じの作品です。『ソワレ』という作品です。
“ソワレ”(soiree)はフランス語で、夕方、日が暮れた後の時間のことを言います。対義語は朝・午前を表わす“マチネ(matinee)”です。興業界では、特にミュージカル、バレエ、オーケストラの公演などでよく使用される言葉で、劇場では昼公演をマチネ、夜公演をソワレと言います。だからこの映画は「夕方」という感じかな。

ストーリーですが、役者を目指して和歌山から上京した翔太君(村上虹郎)は、一生懸命役者の道に進もうとしているのですが、何をやっても上手くいかず、今ではオレオレ詐欺などに加担して何とか生活をしている状態で自分を見失いそうな日常の中にいました。
そんな折、ある年の夏、彼の所属する小さな劇団が演劇を通してのレクリエーション活動を頼まれて、翔太君も地方に向かいます。向かった先は、偶然自分の故郷の和歌山の老人養護施設でした。そこで彼はその施設に住む老人たちの面倒を見ている、自分と変わらぬ年若いタカラちゃん(芋生悠)という女性に会います。
彼女は暗くていつも口数少なく、人生を諦めたようにそこで働いていました。
数日後、一緒に祭りに行こうと誘ったタカラちゃんを迎えに行った翔太君は、そこでタカラちゃんが事件を起こしたのを目撃してしまします。翔太君はとっさにタカラちゃんの手を取りその場から駆け出し、とっさに電車に飛び乗ります。そして翔太とタカラは「かけおち」とも呼べる目的地のない、逃避行の旅を始めることになり…二人はどうなるのか?

ほとんどこの若い俳優、村上虹郎さんと芋生悠(いもうはるか)さんの2人で進んでいくドラマです。といっても台詞が少なく、視覚的アプローチがほとんどです。

鈴木   淡々といく感じですか?

荒木   淡々といきますね。
翔太からと、タカラからの視線が大きなポイントですね。視野が変わることで言葉なくとも登場人物たちの気持ちが伝わってきます。切なく、儚く、苦しいシーンが多く、不快でもありますが、どんどん引き込まれるんですよ。
いやミスという言葉がありますが、そんな感じの個性的な作品です。
最近はいろいろな作品に出演が多い村上君。全体的に暗くて重い雰囲気ですが、目が離せません。今回も安定の演技です。
そして新人女優の芋生さんも、オーディションで多くの候補者から選ばれたということで とてもいいですね。何度も繰り返されるタカラのフラッシュバックとその映像表現が辛く、救いようがないほど綺麗でした。
少女時代の自分と出会う夜のシーンとか、とても難しい演技を要求されることが多かったと思うのですがなかなかの演技でした。

監督は、39歳の外山文治さんという人。2013年に『燦燦』という作品でデビューしています。これは夫を亡くし孤独に生きる77歳の女性が、人生最後のパートナーを求め婚活をスタートさせるという人間ドラマでしたが、これは本当に印象的な作品で面白かったです。 今回の『ソワレ』はそれ以来の作品です。

この作品の話題となっているのが、あの元アイドル、キョンキョンこと小泉今日子さんと俳優の豊原功補さんが、この映画の監督外山文治さんと“より純度の高い映像作品を追究したい”として設立した「新世界合同会社」という映画制作会社の第一回プロデュース作品なんです。この作品にはプロデューサー:豊原功補、アソシエイトプロデューサー:小泉今日子とクレジットされています。
今まで演じる側でキャリアを重ねてきたお二人が、今度は作る方にまわってどんなパワーを発揮してくれるのか、どんな人たちを発掘するのか、こちらも興味が湧きますね。

鈴木   楽しみですよね。そちらも。

荒木   楽しみです。
ということで、『ソワレ』8月28日公開の夏の逃避行ものでした。

鈴木   「ソワレ」という時間帯を考えると、淡々と進むというのが合っているんだろうなと感じますね。

荒木   そうですよね。逃避行というから、色んなしがらみから逃げて新しい自分に変わりたいという思いは誰しもあると思いますけど、そういうのも夏の夕方が多かったですよね。

そんなことで今日は2本ご紹介しました。

鈴木   荒木さん、夏がこうやって去っていきますけど、夏というのはすごく活動的でエネルギッシュである一方、なんかこう切ない余韻がありますよね。これはなんなんですかね。

荒木   そうですね。夏は、特に終わりの今頃は、加山雄三さんの歌にもあるように「湘南ひき潮」で本当に寂しい、夏休みが終わってみんな日常に戻っていくということなんでしょうね。今年はちょっとそういう気持ちはしないんですけど、だらだらとした感じでそういう意味であんまりいい夏ではなかったですね。でも思い出に残る夏ではありますね。

鈴木   そう、思い出には残るけど、いつもの日常はなかった夏だなぁという感じがしますね。特別な夏がこうやって終わっていくんだなと思いますけどね。 荒木   そうですね。私はあと何回迎えられるかわかんないので、寂しいです。

鈴木   ははは。荒木さん、そう言い続けてるの相当昔から知ってますよ。

荒木   まあ、ぼやいてばっかりいますから。

鈴木   また、夏の終わりか秋の始めにお会いしたいなと思います。

荒木   是非ね。まだこんなことでお会いできてなくて本当にもどかしいです。早く顏を見ながら喋りたい。

鈴木   そうですね。それでは本日もありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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