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「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報

(2020年9月14日15:45)

映画評論家・荒木久文氏が、「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、9月8日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   だいぶ涼しくなりましたね。

荒木   そうですね。ちょっと過ごしやすくなってきましたね。頑張りたいと思います。 前に「怖い話特集」やりましたよね。もう一度やろうと言っていて今頃になってしまいましたが、怖いにもいろいろありますが、“ある意味”怖い話の作品を2本ご紹介します。

まず1本目は、怖いは怖いでも「怖い奥さん」のお話です。
『喜劇 愛妻物語』という9月11日公開の作品です。

「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報
「喜劇 愛妻物語」( ©2020『喜劇 愛妻物語』製作委員会)(2020年9月11日(金)より全国公開中))

鈴木   おお、出た出た!

荒木   ストーリーからご紹介します。
結婚して10年の倦怠期の夫婦、豪太とチカは6歳くらいの幼い娘アキちゃんとの3人暮らし。豪太は売れない脚本家で、なんとその年収は50万円。妻のチカは一生懸命働いて、家事も育児もというワンオペの孤軍奮闘生活です。当然夫はぞんざいに扱われ、毎日ののしられ続けの日々。当然のようにノーエッチ、つまりセックスレスです。それでも豪太は、なんとかそっちのほうに持ち込もうと日々妻の機嫌を取ろうとしますが、チカはろくな稼ぎがない夫に全く冷たい態度で、当然 言葉も態度もきつくなります。
そんなある日、久々に豪太のもとに仕事の話が舞い込みます。
四国の香川県に“ものすごい速さでうどんを打つ女子高生”がいるという話で、その話をドラマ化して映画の脚本にしないかというオファーです。
ただし実現の保証はなく、出来が良ければ企画は成立しますが、取材費・旅費などもなく全部自腹です。でも豪太はこの仕事を実現させ、あわよくば夫婦仲を取り戻そうと考え、香川への取材を兼ねた5日間の家族旅行を提案します。
四国にはチカの学生時代の友人も住んでいるということもあり、しぶしぶ豪太の旅行に付き合うことになるチカ。
四国で親子3人のお金を倹約しながらの珍道中が始まります。さあこの夫婦は旅行の中で倦怠期を乗り越え、ときめきを取り戻すことができるのか?

原作・監督・脚本は足立紳さん。もともと脚本家で、今回一人で作ったようなもんです。
2014年の映画『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞しています。
今回は、彼自身の夫婦生活を綴った自伝的小説を自ら脚本にして監督した作品です。
豪太とチカは監督ご自身と奥様がモデルということですが、絶句するぐらい赤裸々で身も蓋もないやりとり、妻の夫に対する罵倒の数々が描かれています。
出演者はうだつの上がらない脚本家のダメ夫を濱田岳さん、そして四六時中、夫に罵声を浴びせながら家計や子育てのために奮闘するいつも不機嫌な大の酒好きの恐妻チカを水川あさみさんが演じています。娘役は最近歌にも活躍の新津ちせさんが演じています。
ダイちゃん、今回観ましたよね?どうでした?
鈴木   観ました。いやー面白かったです。
僕、個人的に水川あさみさんは大好きな女優さんなんですよ。好みです。水川あさみさん演じるチカが、不満そうな顏をすればするほど恋をしてしまうので、そういう意味でもちょっといけない映画だなと思いました。水川あさみさんばっかりが罵倒する姿に余計、恋をしていくっていうどうしようもない現象になってしまいました。

荒木   水川さんの怒りっぷり、切れっぷり、鬼嫁っぷりが気持ちいいくらい痛快でしたよね。

鈴木   あとお尻向けて寝ているシーンとか、好きですね。

荒木   赤いパンツを履いてお尻だけ映るんですよね。
あとでちょっとお話しますけど、重要なアイテムとしての赤いパンツなんですけど、ラッキーを呼び込む赤いパンツということで、夫に対する愛情を示しているんですけど、古くなってヨレヨレになったパンツを履いて寝てるんですね。

鈴木   なんかそういうキャラクターもそうなんですけど、内容も「結婚10年目倦怠期」っていう流れも、意外にこういう夫婦って多いんじゃないのかなって思いますね。

荒木   濱田さんの下心の滲み出るニヤケ顔が心に残りますが、監督のお顔をお手本にしていたと言ってました。私も監督にお会いしたんですが、よく似ているんです。いつもニヤニヤしているんですよ。

鈴木   そうなんですか!こんな感じなんですか。

荒木   こんな感じです。
役者さんたち皆さんよかったですよね。大久保佳代子さんや夏帆さんなど。大久保さんすごくエロかったですね。

鈴木   胸元強調してましたね。

荒木   そうですね。夏帆さんも色気があったしね。
子供役のちせちゃんの少しぼーっとしたところや心配そうな表情もよかったですね。

夫と妻の二人の掛け合いが生々しくてとてもリアルなんですが、うちのかみさんがセリフ作ったんじゃないか?みたいな場面いっぱい出てきましたよ。

鈴木   荒木さんの奥様って結婚されてすぐぐらいからこういう感じなんですか?

荒木   初めからこういう感じですね。

鈴木   そうなんですか。

荒木   ダイちゃんはそんなことなかったの?

鈴木   意外にこんな感じですね。

荒木   こんな感じでしょ?たぶん観た人も一度は自分と同じように共感する瞬間があったと思います。

…. 鈴木   共感して反発したい気持ちもありながら、ちょっと愛らしいなと思えちゃったりして。

荒木   そうそうそう。
奥さんの方は恐ろしい妻、恐妻ですね。奥さんを怖い人をまあ俗に恐妻家と言いますが、ダイちゃんのところはそんな感じなのかな?周りにそういう人いますかね?

鈴木   意外に上手くいっている夫婦の方が、恐妻家と言われている人多いのかな。

荒木   あー、そうかもしれないです。

鈴木   実際はそうじゃないんだろうけど、周りから見ると恐妻家って茶化されてる人の方が上手くいってるなって感じしますね。

荒木   そうですよね。昔で言う、源頼朝と北条政子とかね。今で言うと、峰竜太と海老名美どりとかですね。

鈴木   あー!!

荒木   ちょっと余計な話になりますが、山の神という言葉があります。今は駅伝で山に登るのが早い人の代名詞になっていますが、本来は駅伝の神さまじゃなくて、山に宿る神様 文字通り山の神です。山の神は女神様で、恐ろしいものの代表的存在であり山の天気が変わりやすいということからも、やかましい妻の呼称の一つとして「山の神」と言いました。
奥さんのことを表しているんです。「かみさん」という呼び方もそこからきてますよね。 もともと山の神は祟り神(たたりがみ)なんですよ。祟り神とは、名前の通り、人に災いをもたらす神のことです。粗末に扱えば恐ろしい祟りがある。しかし、手厚く祀れば逆に心強い守護神になるとされているんですね。
かみさんも同じなので、何もしないと祟られちゃいますから祟られないように信仰するんですよ。たまにお世辞を言ったり、ちょっとお気に入りのものを買ってきたり、記念日・誕生日には気を使うと、祟りは少なくなるもんです。
経験上です。修行と思えば何でもないです。
でも、もともとわけのわかんないことで怒り出すのが祟り神です。

鈴木   なるほど。なんかすごく腑に落ちた。

荒木   でしょ?何が気に入らないのかわからなくて、ただ怒ることがあるんですね、祟り神ですから・・・。だから私たちは、基本的に祟られるんだなと承知していれば、 多少の罵詈雑言は神の怒りであると考え、ひたすら身を低くして嵐が収まるのを待つんですね・・・あはは 完全な恐妻家の発想ですね。

鈴木   荒木さん、今回人生相談のコーナーみたいになってますね。いいですね。

荒木   ははは。余計なことでしたが…。
映画の話に戻りますが、この映画、見逃せないのが、小ネタと小道具、そしてセリフやシュールに近い笑いですよね。
例えば先ほども話した、7年も前にゲンを担ぐために巣鴨で買ったラッキーアイテムだという赤いパンツ。よれよれになっても今でも履き続ける、妻の言葉に表さない気持ちが伝わりますね。

それから、大久保佳代子さんだったらするだろうな、なんて思わせるセクシープレイ。
下ネタもところどころに入れてきているのですが、独特でとても面白いですよね。

役所広司プレイや佐藤浩市プレイってどういうものなのかわかりませんが、これも使えるなと思いましたよ。
それにしても足立監督ですが、自伝的小説とか、自伝的作家と言いますが、どれだけ自分の恥をさらけ出せるか、そしてそれを映像や文字にして見せられるように普遍化加工するテクニックが素晴らしいですよね。
そしてさすが、脚本家です。脚本構成も巧みですよね。始めコミカルに大笑いしているうちに段々と夫婦の映画、家族の映画になってくるんですね。
監督は、どんな家族もドラマになるとおっしゃっていましたが、本当にその通りだと思います。だからダイちゃんのうちもドラマになりますね。

鈴木   いやいや。さらけ出すかぁ…。

荒木   そういうのは大変ですよね。
こういう夫婦じゃなきゃいけないってことはないし、みんな違ってみんないいってことですね。

鈴木   だけどなんだかんだ言って、恐妻家だ祟り神だとか言っておきながら、荒木さんと奥様も仲いいよね。なんだかんだ言って一緒に旅行したりとか、よく話に出るもんね。

荒木   最近、旅行なんて修行だよね。

鈴木   だけど修行が好きな方って結構いるじゃない。滝に打たれちゃったりとか。

荒木   この歳になってまで修行したくないよ。

鈴木   そう言っておきながらね。

荒木   ということで、『喜劇 愛妻物語』9月11日公開です。

ホラー映画特集、最後は洋画の『カウントダウン』という作品です。こちらも9月11日公開です。これはスマートフォンアプリをテーマにしたホラーです。

最近スマートフォンアプリは色々なものがありますよね。ダイちゃんはわりかし使ってますか?

「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報
「カウントダウン」(©2020 STX FINANCING,LLC.ALL RIGHTS RESERVED.)(2020年9月11日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)

鈴木   僕は色々なアプリ入れてはアンインストールしてを繰り返してますね。

荒木   そうですか。スマホアプリ、200万本くらいあるらしいですね。

この映画は、自分の残り寿命、つまり「余命がわかるスマホアプリ」の「カウントダウン」という名前のアプリをダウンロードしたことから、逃れられない死の恐怖に直面する若者たちを描いたホラーです。

きっかけはあるパーティーの席上で、若者たちが見つけたあるアプリです。
自分の余命時間を伝えるというそのアプリをスマホにダウンロードし、自分たちの余命年数で盛り上がっていました。
そんな中、ある女の子にそのアプリから「あなたの余命はあと3時間です。」という通知が届きます。
不安に襲われたその女の子は、恋人が車で送るというのを断り1人でうちに帰ります。
すると彼女が乗らなかった恋人の車は事故を起こしてしまいます。
彼女は事故に遭うことはなかったのですが、アプリのカウントダウンが「0」になったとき、彼女を想像を絶する恐怖が襲います。
そして緊急入院した恋人もアプリの通知の時間通りに謎の死を遂げます。
さあお話はここからです。
亡くなった女の子の恋人が緊急入院した病院の看護師クインさんは、彼の死に疑問を持ちます。すぐ亡くなるようなケガではなかったのに…と考えます。
クインさんは、生前彼が話していたその「カウントダウン」のアプリの話を思い出し、何気なく自分のスマホにダウンロードしてしまいます。するとなんと、彼女の余命は3日と告げられたのです。さあどうなるのか…ということで、最後は意外な結末が…。
一体何者が何の目的で、このアプリを拡散させたのか?

最後、え、こういう展開?と意外に思うでしょうね。
その手があったか!という感じでした。逆に言えば、スマートフォンという科学の粋を集めた現代社会の必需品なのに、というようなあまりネタバレできませんが。

鈴木   本当の霊とかオカルトの方ではないってことですか?

荒木   まあそっちにも関わってたり、色々面白い要素が入ってるので観ていただくと分かると思います。
9月11日公開の『カウントダウン』、怖い話なのですが、最近本当に怖いものいっぱいありますね。私は最近はコロナと坂道が怖いんですけど。

鈴木   坂道ってどういうこと?上り坂?下り?

荒木   下り。ちょっと転びそうになるので怖いです。

鈴木   ははは。

荒木   ダイちゃんはどんなものが怖いですか?

鈴木   坂っていうわけじゃないんですけど、やっぱり生身の人間が一番怖いなぁと思うことがありますね。

荒木   そうですよね。人間以外怖いものはないですよね。

鈴木   『愛妻物語』観ても、笑いながらもやっぱり人間って怖いなと思うし、人が一番怖いなぁ。

荒木   僕は落語風に言うとですね、怖いのはお金と女性ですけどね。落語の『まんじゅうこわい』ですけど。

鈴木   なるほど…でも確かにお金と女性が怖いというのは逆にリアルだなぁ。

荒木   ということで、本日は怖い映画2本ご紹介しました。

鈴木   荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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