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「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏おすすめの映画3本のとっておき情報

(2020年8月16日12:50)

映画評論家・荒木久文氏が、この夏おすすめの映画「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」「ファヒム パリが見た奇跡」「グッバイ・リチャード!」の見どころやとっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、8月11日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏この夏おすすめの映画3本のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さーん!どうなんですか?お盆休みは。

荒木   うーん、休めるような休めないような変な気分ですね。今年は特にそうですよね。

鈴木   そうですね。

荒木   今日は3本ご紹介しようと思うんですが、タイトル並べてみたら『ジェクシー』、『ファヒム』そして『リチャード』みんな、「人の名前」なんですよ。 さあこの名前の人たちは、どんな人なのでしょうか?

では1本目、8月14日公開『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』という作品です。 この作品はこの夏最大のおバカ映画です。R指定のコメディで、お下品、おスケベ、大笑いというおバカ3要素が見事にそろっています。

「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏最大のおバカ映画3本のとっておき情報
「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」(公式HPから)

鈴木   最高ですねー。

荒木   ストーリーですが、主人公はフィル。ジャーナリスト志望なのですが、今は小さなニュースサイトで働いています。いい歳なのに恋人も友だちもいないオタク青年です。子どもの頃から強度のスマートフォンの依存症。
ある日、そんなフィルがスマホの機種変更をします。機種変更した最新式のスマホには、コーチング機能「ジェクシー」が搭載されていました。これは、フィルのすべての個人情報を把握し、それを分析して彼の生活すべてをより良い方向に誘導していくという、今の「Siri」とか「アレクサ」とかいわゆるAIの何千倍も頭のいい奴ですよ。
このAIの「ジェクシー」はやがて、うだつの上がらないフィルの生活のすべてをアグレッシブにリードして一方的にコーチングし始めます。食事から通勤まですべて指示するジェクシーにフィルは振り回されますが、やがてジェクシーのおかげで生活は劇的に変化し、彼は変わっていきます。そして念願の恋人もできたのですが、その時、ジェクシーに異変が起こります。スマホのジェクシーは、人間のフィルに恋をしてしまったんです。ジェクシーは恋人に夢中で、自分に振り向いてくれないフィルに逆切れします。フィルの彼女に「フィルは私の男よ!」とケンカを売ったり、上司へ暴言メールを送信したり、フィルの恥ずかしい写真を拡散したり、銀行口座からお金を勝手に下ろしたり…。嫉妬に狂い、豹変したジェクシーに壊されていくフィルの人生は一体どうなるのか…。

お下品でおスケベなお笑い作品、こういうの嫌いな人いるでしょうけど、私たちは大好きですよね。

鈴木   大好きですね。こういうのはね。

荒木   人気コメディアンのアダム・ディバインがフィル役を演じています。
ジェクシーの声を担当するのが、この間ご紹介した『15年後のラブソング』にも出演していたローズ・バーンという女優さんです。とても物静かな品のある女優さんなんですが、抑揚のないしゃべり方はSiri みたいですよね。その口調で、頼んだことを「やらない」と拒否したり「バカすぎて、あなたのスマホであることが恥ずかしい」と突き放したり、とても上手でした。

監督、脚本は『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』という作品の脚本家コンビなんですけど、ダイちゃんこれは観てるよね?

鈴木   観てますね。面白いですよね。

荒木   おバカ映画の巨匠のジョン・ルーカスとスコット・ムーアという方たちです。おバカエッチアイデア満載です。私の口からは言えませんが、スマホのジェクシーがセックスするシーンがあるんですけど、「さすがおバカ映画、この手があったか!」と思いましたね。これがまた面白いです。

鈴木   振動しちゃうとか?まあ、そんなこと言えないよね。

荒木   その辺りは観ていただきたいと思います。

この作品にはネタ版というか、コンセプトを参考にしている作品があると言われています。それが『her/世界でひとつの彼女』という作品です。これは、人間がコンピューターに恋をするというお話ですが、今回は逆でAIが人間に恋をする、しかも暴走しちゃう…。
そもそもAIやコンピューターが暴走するという作品は昔からあります。直ぐ思いつくのは、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』ですね。反乱を起こすコンピューターの名は「HAL」でした。最近の日本映画でも直接的なのがありました。今年1月に公開された『AI崩壊』もコンピューターが制御不能になる作品でしたが、これも怖かったですね。このAIの名前は「のぞみ」でした。女性っぽい名前が目立ちますが、この伝で行くと「いずみ」とか「みか」とか「ゆみこ」とかね、ちょっと怖い名前ですよね。

鈴木   うちの嫁さんとかディレクターさんの名前が出たような出ないような感じするんですけど。

荒木   いやいやいや、これはあくまでも、コントロール不能になって暴走するコンピューターの話ですから。

鈴木   「ゆみこ」もコンピューターの話ですよね?

荒木   あー、うちのかみさんの名前と似てますね。

鈴木   似てますよねぇ。
スマホが持ち主に背いて、大暴走して攻撃を仕掛けてきたらアウトですよね。

鈴木   アウトですよ。怖いなぁ。

荒木   あんな秘密、こんなメール、ばらまかれたら生きていけないですよね?

鈴木   それは生きていけないね。やばいね。

荒木   私だけではないですよね。
そういう意味でもめちゃくちゃスリラーでもあります。

ということで、『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』という8月14日公開の作品でした。

鈴木   これ絶対面白いよ。

荒木   はい、面白いのでぜひ観てください。

「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏最大のおバカ映画3本のとっておき情報
「ファヒム パリが見た奇跡」(恵比寿ガーデンシネマ)

続いてですが、最近は将棋の藤井聡太棋聖が話題に上がることが多いですね。ダイちゃんは将棋とか碁とか、そういうものはやりますか?

鈴木   全然ダメですね。

荒木   私もダメです。麻雀とかはやったりするんですけど。

鈴木   荒木さん将棋とかはやられないんですか?

荒木   全然やらない。ゲーム大体やらないね。もう「人生ゲーム」に敗れてるからゲームあんまり好きじゃないんだよ。
それはともかく次は「ファヒム」という、日本語で西洋将棋、チェスの天才少年のお話です。
『ファヒム パリが見た奇跡』というタイトルの8月14日公開の作品です。

ファヒム君というのは、バングラデシュの8歳の男の子の名前です。ファヒム君、バングラデシュの地元では天才チェス少年として名が知れていたのですが、彼と父親は国を脱出することになります。父親が現政府に反対していたので、妹やお母さんを残してフランス・パリへと逃げてきました。政治難民ですね。父親はパリで強制送還されるかもしれないという恐怖の中で、亡命者として保護・滞在保障を求める活動を開始します。
そんな中、ファヒム少年はチェスのトップ・コーチであるシルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)と知り合い、彼のチェス教室に入ることになります。このシルヴァン先生はかつて、チェスの天才プレーヤーでした。二人はぶつかり合いながらも信頼関係を築いていき、チェスの大会出場を目指すようになります。
ファヒム君、頭いいので全く分からなかったフランス語もすぐ上達し、通訳もできるぐらいになります。一方、政治難民の申請をフランスから拒否されたファヒムの父親は、フランス語が全く上達せず、不法滞在者となり、ファヒムとともにフランスからの強制送還されることになります。ファヒムが参加するチェスのフランス国内大会が開催されて、そこで優勝すると強制送還が免れるんじゃないかということになります。
秀でたところがあると滞在が認められるというのは、よくあることらしいですね。
そんな環境でファヒムはチェスのフランス王者になることができるのか?…というこれは事実をもとに作られた作品です。国籍・国境を越えた子弟の絆や親子の愛、友情などが描かれているのですが…ただこのファヒム君チェスがすごく強くて天才少年ではあるのですが、向かうところ敵なしという訳ではないんです。結構ライバルに敗れたりもします。他にも強い子たくさんいるんですで。でもその中で一生懸命努力して、立ちはだかる数々の敵を次々と打破しながら、自身の力と努力で未来を掴んでいくわけです。

鈴木   藤井君に似てるじゃないですか。

荒木   似てますよね。

先ほども言ったように、特殊な才能があると在留許可が出るという国は実はたくさんあるんですね。この映画は特にフランスにおける、というか、ヨーロッパにおける難民や不法侵入者がどういう現状に置かれているかが描かれています。ある意味そういったヨーロッパやフランス社会の課題を垣間見るということですね。我々日本人には遠く感じる難民や移民の現実をきちんとみせてくれますね。なかなかいい映画です。
『ファヒム パリが見た奇跡』8月14日公開の作品です。

3本目のお名前は「リチャード」です。
8月21日公開『グッバイ・リチャード!』というジョニー・デップ主演のユーモラスな人間ドラマ作品です。

ジョニー・デップ扮する大学教授リチャードは、学者としてはもちろん、誰もがうらやむ美しい妻と素直な娘という家族を持ち、本人もエレガントな紳士としての堅実な人生を送っていました。そんな彼に ある日突然のガン宣告をされます。そして生きられるのは残り180日間です、という余命宣告までされてしまいます。
そこへ追い打ちをかけるように、妻と自分の上司の不倫が判明、そのうえ娘はジェンダー関連をカミングアウトし、彼の日常はどんどん狂い始めます。そんなこともあり、死を目前にしてもう怖いものなしになったリチャードは、残りの人生を自分のために謳歌しようと好き勝手に生きることを決心します。
不躾、遠慮なくストレートにものを言い、大学の講義中に酒やマリファナをやり始める始末。それまでのまじめな生き方の反動もあり、ルールや立場に縛られない新しい無鉄砲な生き方を始めたリチャードは、これまでにない大きな喜びを感じるようになります。
そんな彼の破天荒な言動は次第に周囲にも影響を与えていきます。
しかし、リチャードの“終わりの日”は着実に近づいてきて…というストーリーです。
怪物俳優と呼ばれる、ジョニー・デップがまともな役というと失礼ですが、常識人を演じているのがまず新鮮でしたね。 鈴木   そうですよね。あんまりないですよね。

荒木   そうなんですよ。
シリアスになりがちな人生の終わりというテーマをユーモラスに描いています。難病物や終活物は、内容からして暗くシリアスになりがちですが、酒、ドラッグ、ナンパ、不倫、下ネタまでたくさんぶっこんでいるこの作品はあまり“重苦しさ”はなくて、笑い飛ばすようなユーモアや優しさが目立ちますね。

余命宣告された人が残りの人生をどう歩むかという映画は、昔からたくさんありますが、最近個人的には、こういった映画が刺さるようになりましたよ。

鈴木   やっぱりそういう映画は染みます?

荒木   そうだね。歳のせいか、あと何回ウナギが食えるんだろうかとか、あと何回桜を見られるのかとかよく考えるようになりました。ダイちゃんはまだそんな歳じゃないよね。

鈴木   考えないなぁ。もし病気とかしていたら考えるんでしょうけどね。まだお陰様で元気だし、考えてないですね。

荒木   私ぐらいになると段々考えるようになるんですよ。
若い人でも、いざ死を覚悟した人間ほど怖いもの知らずといわれますけど、この映画のように実際はなるのかな。私は自分が余命宣告されてもこんなに破天荒にはきっとなれないだろうなぁと思います。

鈴木   僕もできないと思います。

荒木   気の小さい自分を恨むだろうなと想像します。
そういう意味で、みんなちらっとは考えるけど本気で考えることはないんです。でも本気でよく考えて、どういう風に生きるのかというのは必要なことかもしれませんね。
終活系のヒューマンドラマというのはどれもそうですが、結局は毎日悔いのないよう生きなきゃいけないっていうことなんですよね。まあそうは言われてもなかなかそういかないよね。

鈴木   人生って、結局「毎日をどう生きるか」がどう死んでいくかにある意味繋がることなんでしょうね。たぶん。

荒木   そうなんでしょうね。

鈴木   どう死ぬかばっかりを考えていてもしょうがないなっていうね。

荒木   そういうことなんですよね。色々考えさせられる作品です。

ジョニー・デップ、相変わらずいい味出してますので、そんなことも含めて是非ご覧になってください。
8月21日公開の『グッバイ・リチャード!』でした。

今日は名前で大変失礼な発言もございましたけど、関係者の皆様お許しください。決して悪意ある発言ではありませんので。

鈴木   荒木さん、ゆみこさんにもよろしくお伝えください。

荒木   あ、はい…はい…。何をよろしく伝えたらいいかよくわかりませんが。

鈴木   ではまたお願いします。ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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