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2020年の興行収入ベスト10と「私のベスト映画3」

(2021年1月9日20:30)

映画評論家・荒木久文氏が、2020年の映画界を振り返って「興行収入ベスト10」と「私のベスト映画3」を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、12月29日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

2020年の興行収入ベスト10と「私のベスト映画3」
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   今年ラストの登場だ!荒木さーん!

荒木   はい、荒木です。

鈴木   ラストですね、今年。

荒木   年が押し詰まったんですが、鼻も押し詰まっていて…。

鈴木   鼻声ではないよね?気を付けて。

荒木   はい。よろしくお願いします。

今年も例年と同じように映画業界の一年を振り返ってみようと思います。
他の業界同様、コロナのおかげで振り返るようなことがないというか…すっかり風景が昨年と打って変わってしまいましたね。
音楽業界もそうですよね?

鈴木   そうですよ。同じですよ。

荒木   そんな中でも映画ファン、自粛期間2ヶ月以上映画館も閉じてしまっていましたが、小さな映画館を救おうとするクラウドファンディングの「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」は目標の3倍もの資金が集まったんです。だから逆に言えば、ファンの善意や愛情がはっきり見えた年だと言えるかもしれません。

それから家で映画を見るパターン…オンラインでの視聴形式が増えましたね。NetflixやAmazonプライム、Huluなどなど。どんどん増えていってこういうものに適した映画開発が進んでいくんでしょうね。

イベント面でも、代表的な「東京国際映画祭」も規模縮小ですし、海外の映画祭もほとんど中止でした。報知映画賞など映画賞も選考のみで表彰式なしがほとんどでしたね。寂しいですね。どこの業界もですが、そんな感じになりました。

例年のごとく今年の興行収入ランキングですが、昨日(12月28日)辺りのニュースでご存知だと思いますが…。

鈴木   鬼滅か?鬼滅か?

荒木   そうですね。1位は分かってるので興味ないかもしれませんが、10位からいきたいと思います。
10位は『カイジ ファイナルゲーム』という作品でした。
9位は『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』、アニメーション作品です。
8位に『糸』です。
7位は『事故物件 恐い間取り』が意外に入りました。
6位は洋画『TENET テネット』。話題になりましたね。
5位が『ドラえもん のび太の新恐竜』
4位に『コンフィデンスマンJP プリンセス編』
3位は『パラサイト 半地下の家族』で、約48億円です。
2位はなんと意外にもヤンキー映画というかヤンキーコメディですね。『今日から俺は!!劇場版』です。

鈴木   あー!ブームになりましたからね!

荒木   そうなんですよ。54億円です。
そして1位が言わずもがなの『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』です。12月28日の時点で、324.7億円です。

2020年の興行収入ベスト10と「私のベスト映画3」
「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」(TOHOシネマズ 六本木ヒルズ)

鈴木   1位と2位の差がありすぎじゃないですか!

荒木   すごいですよね。とうとう日本国内での興行収入第一位になりましたね。
10月16日からの70日強の公開で、今までの『千と千尋の神隠し』316億円を抜いたそうです。19年ぶりに記録を塗り替えたとのことです。『千と千尋の神隠し』は8ヶ月で300億円突破しましたが、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は2ヶ月です。

鈴木   これコロナの影響とかはどうなっちゃってるんですかね?

荒木   コロナの影響で映画館の上映枠が空いてるときにポーンと入ったんですよ。
そうするとわりかし人が入りやすいから、「俺も俺も」というようにスクリーンが鬼滅一色になっていったんですよ。特に洋画の大作が相次いで公開延期になったので…。

鈴木   そうですよね。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』とかみんなそうですもんね。

荒木   そういう中で有利になったんです。そのおかげで逆に言えば、他の映画が鬼滅にスクリーンを独占されちゃって入っていけなかったという状況もあるようです。あるシネコンでは一日30回以上回したなんていう話も聞きました。

鈴木   ええ!30回!?

荒木   そうなんですよ。スクリーンがいっぱいありますから6つあれば1つのスクリーンで5回回したということですよね。

鈴木   そういうことかぁ。

荒木   鬼滅は2ヶ月で300億円いっちゃったんで、下手したら500億円くらいいくかもしれません。どうですか?ダイちゃん。

鈴木   いやー、俺400億円は堅いと思ってます。

荒木   まぁそれは堅いよね。

鈴木   堅いやっぱり!?

荒木   堅いでしょう。400はいくと思いますよ。

鈴木   いやーすげー!!今後抜く作品がないんじゃないですか?

荒木   そうですね。『千と千尋の神隠し』を抜くまで19年かかってますから。どうですかね。鬼滅なんか出てきたときは「なんだこれ?」と思いましたからね。

鈴木   すごいことになってるよ、これ…。

荒木   そうなんですよ。全体の売上だと今年は1,350億円、そのうち約四分の一くらいが鬼滅なんですけど。去年は3,300億円でしたから半分以下です。
そういう意味で、トップ10の中に洋画はほとんど入っていないんです。2本だけですね。元々日本の映画はガラパゴス化と言われていまして、日本映画やアニメーション作品が多かったんですけど、今年はこういう状況なので象徴的に言えますね。

ということで、海外・北米で公開された映画の興行収入ランキングTop10ですが、ちょっとはっきりしていなので、年が明けて3月くらいにまたご紹介します。
北米では、3位が『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』。2位が『ドクター・ドリトル』、1位が『バッドボーイズ フォー・ライフ』ということですが、これもどうなるのか。

そして年末恒例のダイちゃんと私の「わたしのベスト映画3」です。

鈴木   出た!!

荒木   ダイちゃんからお願いします。ダイちゃん今年は何本くらい観たんですか?あんまり見れなかったよね。

鈴木   25本くらいじゃないですかね。その中でも悩みながら気に入った映画ポンポン出してみたんですけど、同率というのも含めて3位が全部で6本あったんですよ。

荒木   3位が6本!?すごい。

鈴木   荒木さんとか興行収入ランキングと比べると、なんで鈴木ダイこんなに独自なんだろうと思うんですけど…。
3位は『TENET テネット』、『海底47m 古代マヤの死の迷宮』、『ランボー ラスト・ブラッド』です。
2位が音楽的なんですけど、『メイキング・オブ・モータウン』、『パヴァロッティ 太陽のテノール』です。
鈴木ダイの2020の映画第1位は『1917 命をかけた伝令』です。鬼滅も邦画もアニメもなんにもないんですよ。『海底47m 古代マヤの死の迷宮』を入れるんだったら鬼滅を入れるって自分でつっこんでますけど。

荒木   いや本当に特徴の出てるベスト3というかダイちゃんの今年の映画だと思います。『ランボー ラスト・ブラッド』も良かったですね。2位の音楽映画も確かに素晴らしいです。
いやーそっかぁ。もうちょっと派手目なのが入ってくると思ったけど。

鈴木   派手目なのが公開延期でなくなっちゃってるから。

荒木   そうですよね。『1917 命をかけた伝令』が1位ですか。

鈴木   荒木さんの解説もありながら手に汗握って観ましたね。

荒木   私も参考にさせていただきたいと思います。
私はそんなに観れなくて、例年400本くらい観るんですが半分の200本くらいでした。

鈴木   それでもすごい。まぁ仕事だから当たり前かぁ…。

荒木   そう、仕事だからね。
私は推理ものが好きなのでその中から良いものをざっと並べてみました。『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』というのがとても印象的でしたね。
他にも『ジョジョ・ラビット』、『はちどり』、日本映画だと『弥生、三月-君を愛した30年-』、『喜劇 愛妻物語』、『糸』が入ってますね。
3位、2位、1位は決めかねてるので、最もよかったものということで3位、2位、1位だと思って聞いてください。

3位は『パラサイト 半地下の家族』です。カンヌ、アカデミー賞を取ったポン・ジュノ監督のね。インパクトが強かったですよね。
それから2位というかそのうちの一つが『1917 命をかけた伝令』、ダイちゃんと同じですね。これもっと評価されていい映画だよね。

鈴木   あんまり騒がれてないですよね。実はそんなに。

荒木   そうなんですよ。『パラサイト 半地下の家族』と、かぶっちゃったとかタイミングもあるかもしれないです。1カットシーンとかリアル感とかいいと思うんですけどね。 そしてもう一つは『ある画家の数奇な運命』です。前にもお話しましたが、現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの伝記をもとにした映画ですけど、映画を観た後の感じが大編成のフルオーケストラのシンフォニーを聴いて感動したような感じです。

鈴木   上手いこと言うなぁ。

荒木   本当にそんな感じです。 とうことで、ダイちゃんの1位2位はDJっぽいですよね。

鈴木   そうですね。『海底47m 古代マヤの死の迷宮』も鈴木ダイっぽいなと思いますけどね。

荒木   あははは!!

鈴木   これは観終わった感想を荒木さんと同じように言うと、ポップコーンを食べすぎて気持ち悪くなってしまってクラクラして帰っている足取りという感じですね。

荒木   なるほど。コーラ1本じゃ足りなかった?

鈴木   足りなかったですね。

荒木   そんなベスト3でした。

女性監督の活躍もありましたね。この辺りもご紹介したいのですが時間がないので、また今後に回しますね。

最後に今年亡くなった方、振り返ってみたいと思います。

2020年の興行収入ベスト10と「私のベスト映画3」
(三浦春馬さん=インスタグラムから)

1月18日には日活の宍戸錠さん。
3月29日には志村けんが亡くなりましたね。来年公開予定の主演映画となるはずだった『キネマの神さま』は、沢田研二さんが主演で4月に公開されるそうですのでまたお話したいと思います。
4月10日には大林宣彦監督、4月23日には岡江久美子さん。
7月6日にはエンニオ・モリコーネ、『ニュー・シネマ・パラダイス』のテーマ曲を作曲した方ですね。
7月18日には三浦春馬さん。
8月10日には渡哲也さん。
9月4日には芦名星さん。
9月27日には竹内結子さんが40歳で亡くなりました。
10月6日にはエディ・ヴァン・ヘイレン。
10月31日にはショーン・コネリー。

鈴木   うわー。うーん…そうか…。

荒木   一時代の終わりという感じでした。

11月18日には岡田裕介さん。東映代表取締役会長でした。高校時代観ましたよ、『赤頭巾ちゃん気をつけて』。
個人的に11月25日、ディエゴ・マラドーナ。
12月7日、小松政夫さん。
最近の12月11日、キム・ギドク監督がね。皆さんのご冥福をお祈りいたします。

ということで、恒例のまとめだったんですけど、今年はなんとなく最後パーッといかなくてマスク越しで息苦しいような感じが続いたんですけど、来年の年末恒例は心の底から明るくいきたいですね。

鈴木   本当にそうですよ!

荒木   今年一年、色々ありましたけど、ダイちゃんお世話になりました。

鈴木   いやいや、荒木さん今年もありがとうございました。

荒木   来年はマスクなしの年末を迎えたいと思いますので、皆さん気を付けてください。

鈴木   荒木さん、よいお年をお迎えくださいまし。

荒木   ありがとうございます。

鈴木   ということでまた来週…って来週は来年なんだよね?

荒木   そうだよね。

鈴木   荒木さん、また来年お願いいたします。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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