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「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報

(2020年9月20日11:30)

映画評論家・荒木久文氏が、「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、9月15日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   お呼びしましょう。久文さ~ん!

荒木   あら、ファーストネームで呼ばれちゃった。

鈴木   呼んでしまいました。なんかドキドキしますね。ファーストネームで呼ぶと。

荒木   ちょっと私が今日ご紹介する作品の方向に行ったような感じがします。

鈴木   お!久文さんで?

荒木   はい。 本日ご紹介する映画は2本とも同じ傾向の映画です。
見る人を選ぶ作品と言ったらいいのか、絶対に観に行くという人と、ちょっとパスかな?という人に別れるんじゃないかと思います。

鈴木   ホラーとかスプラッター系ですか?

荒木   いや、そうじゃなくて、男同士でファーストネームで呼び合うような…ズバリ 男同士の「恋愛」ですね。

鈴木   あらららら…。

荒木   まあBLという言葉ももうメジャーになっているのでご存知でしょうね。

鈴木   もちろんです。

荒木   BL,正式にはボーイズラブといいますが、このジャンルを好む女の子たちのことを「腐った女子」と書いて「腐女子(ふじょし)」とか、「高貴な腐った人」と書いて「貴腐人(きふじん)」とか、最近は腐女子の最終進化系の「汚超腐人(おちょうふじん)」とか言うらしいんですが、この人たちが大喜びのお品です。
ダイちゃんの周りにそういう人はいますか?

鈴木   二人くらい知ってますね。

荒木   そうですか。

ではまず1本目ですが、現在公開中の『窮鼠はチーズの夢を見る』というR-15指定の作品です。
窮鼠(きゅうそ)は、ことわざの「窮鼠猫を噛む」の窮鼠で、「追い詰められて逃げ場を失った鼠」のことですね。
しかもジャニーズ事務所のタレントさんが出演ということで超話題になっている作品です。

「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報
「窮鼠はチーズの夢を見る」(TOHOシネマズ六本木ヒルズ)

ストーリーですが、そうそうイメージしやすいように役名じゃなくて俳優名でお話ししますね。
都会の一流広告代理店勤務の恭一くん(あの関ジャニ∞の大倉忠義さんが演じています)。身長・ルックスから始まって何もかもがトップクラス。仕事も出来るし、人当たりもいいし非の打ち所がない青年ですが、ただ、優柔不断な性格。モテモテなんですが、今までは受け身の恋愛ばかりしてきました。
結婚しているのですが、女性から迫られちゃうと、そのたび受け入れちゃうんです。
ですから女性関係は奔放で割合節操がなくずっと不倫を重ねてきました。
ある日、大学卒業以来会う機会のなかった後輩の今ヶ瀬くん(あの成田凌くんが演じています)が彼の前に現れます。
実は成田くんは興信所に勤めていて、大倉くんの奥さんから浮気調査を依頼され、調査員として彼の不倫を調べていたんです。不倫の証拠を突きつけられた大倉くんは「どうか妻に言わないでくれ」と哀願します。
それに対して、浮気不倫を奥さんに言わない条件として成田くんが出したのは「君のカラダと引き換えに」という、大倉くんには耳を疑う驚くべきものでした。
同性愛者でない大倉くんは当然拒否しますが、7年間もの間一途に大倉くんを思い続けてきたという、ゲイである成田くんは拒絶されても引き下がらず、どんどん、がんがんアプローチしてきます。
もともと優柔不断な大倉くんは、成田くんのペースに乗せられてしまいます。
そして、2人はとうとう越えてはいけない一線を越え、一緒に暮らし始めます。
ひたむきな成田くんに大倉くんの心も開かれていきますが、そこに昔の恋人の女性が現れ、二人の関係はぎくしゃくし始めていきます。

鈴木   なんかすごいことになってるな、こりゃ。

荒木   そうなんですよ。
原作は、水城せとなの人気漫画『窮鼠はチーズの夢を見る』と『俎上の鯉は二度跳ねる』をミックスさせたものです。監督は、この番組でもご紹介した『劇場』の行定勲監督です。

主人公の大伴恭一役を「関ジャニ∞」の大倉忠義さん、恭一に思いを寄せる今ヶ瀬渉役を成田凌さんが演じています。まあ、この二人彼らが放つオーラと圧倒的存在感がすごいですよ。
図式としては、年下甘えんぼ成田×年上モテ男大倉ですが、彫刻みたいに綺麗な二人です。
まずベッドシーン…濡れ場なんて暈した言葉じゃ生ぬるいくらい性行為の描写が激しめで凄かったです。

鈴木   まじですか!?そこまでですか?

荒木   「ここまでやるとは…」とだれしも思うでしょう。

鈴木   ここまでってどこまでなんですか!?

荒木   全部は言えないんですけど、お尻にオイルを垂らしたり、その時の効果音もぐちゃぐちゃとハードですごいエグですよ。

鈴木   私は女性相手にもオイル垂らしたことないですよ!

荒木   そうですよね。
色々えぐいものをたくさん見てきているダイちゃんでも私でも、ちょっとこれはえぐいなぁと思いますね。16~17歳くらいの女子高校生が観るんでしょうけど大丈夫なのかな?と思いました。R-18じゃないので。男同士は今回はR15でOKなんでしょうかね?
ジャニーズ所属の大倉くん、本当によくこの仕事を受けたなと思いますよね。こんなセクシーシーンは事務所が絶対許さないと思ったのですが、最近は変わってきてるんですね。

鈴木   確かに変わってきてますね。

荒木   行定勲監督自身もよく受けてくれたと仰っていました。 二人の演技、注目すべきはベッドシーンだけではありません。演技、特に目の演技に注目してほしいですね。まず成田凌くんの艶のある濡れた目。今にも泣き出してしまいそうな瞳がとても印象的です。

作り物なんじゃないかと思うくらいずーっと目がうるうるしているんです。
切なそうに愛おしそうに、大倉君を見ているんです。
恋する瞳で愛しいものを見る眼差しと、目がいわゆる恋する乙女なんだよね。とろーんとしてて、これがひたすらに素晴らしいですね。これを見るだけでも価値があります。

鈴木   私が荒木さんを見るような目っていうことですね。

荒木   またまた。それ乾いた目だよ。

鈴木   あはは。

荒木   大倉くんは、最初はどこか遠くを眺めているようなちょっとうつろな目をしているんですが、それがずっと流されつつ拒否していた相手の気持ちを徐々に受け入れるにつれて、大倉くんの目の表情が変化していくんですよ。
セリフよりも仕草や佇まいで表されているシーンが多いんですが、例えば、成田くんがプレゼントされたワインボトルを抱きしめるシーンや、大倉くんのパーカーを素肌に着ちゃってる姿とかね。

物語自体は基本的に普通の恋愛映画です。いやむしろ、女と男の話だったらありふれていすぎてお話として持たないと思います。でもこれが男同士だからお話になるわけです。
今時代的にLGBTQ+が割と受け入れられる時代になったからこそ、このような形で世に出た作品でしょう。10年前であれば論議を呼ぶでしょうね。
女の子たちで劇場激混みらしいですよ。

鈴木   私はその女の子たちに会いたいですよね。

荒木   そうだよね。
一生懸命観て、感情移入しすぎて疲れちゃって、腑抜けみたいにぼーっとして映画館を出てくる女の子たちが多いようですよ。

鈴木   いいな、なんか。

荒木   現在公開中の『窮鼠はチーズの夢を見る』という作品でした。

「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報
「マティアス&マキシム」(公式サイトから)

続いて2本目、こちらも男同士の恋を描いた作品です。
映画『たかが世界の終わり』などで知られるカナダの若い監督グザヴィエ・ドランの、 友情と恋心の狭間で揺れる青年二人の葛藤を描いた青春ラブストーリーです。
タイトルが『マティアス&マキシム』という9月25日公開の作品です。

ストーリーですが、30歳を迎えるマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)とマキシム(グザヴィエ・ドラン監督自身です)は幼馴染同士の男性。子供のころからずっと親しくしていて、その日も一緒に友達のパーティーに出かけます。

そこで彼らは友達の妹からあるお願いをされます。
彼女の撮る短編映画に出演して、そこで二人でキスシーンを演じてほしいということでした。そしてカメラの前でキスすることになった二人だったのですが、その時の男同士のキスをきっかけに、お互いに秘めて心に押し込めていた相手を好きだという気持ちに気が付き始めます。
マティアスは美しい、もちろん女性の婚約者がいるのですが、今まで考えもしなかった男のマキシムへの恋の感情と、そしてその衝動に戸惑います。一方、マキシムはこれまでの二人の友情が壊れてしまうことを恐れ、マティアスへの想いを告げずに遠いオーストラリアへと旅立つ準備をしていました。

鈴木   切ないね。

荒木   迫る別れの日を目前に、二人は抑えることのできない本当の恋心・想いを確かめようとします…。

ドラン監督自身が『トム・アット・ザ・ファーム』という作品以来、8年ぶりに自身の監督作に出演し、主人公の1人マキシムを演じました。

グザヴィエ・ドランはカナダの俳優兼映画監督です。
2009年、19歳にして『マイ・マザー』で初監督を務め、主演と脚本家も兼ね天才現れると注目されました。
そして26歳の2016年『たかが世界の終わり』で第69回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、早熟の天才と言われる人で今年ようやく31歳。
これまでは同性愛テーマの作品もありにはあったのですが、彼の作品は母親と息子の関係がテーマの映画が多かったんです。今回は初の恋愛映画ですね。

グザヴィエ・ドランは、この番組でもご紹介した、イタリアを舞台にした美少年と青年の恋を描いた『君の名前で僕を呼んで』に感銘を受けて制作したと話しています。

この監督の特徴は、美しい背景や音楽の良さ、独特のカメラワークです。上から、下から、後ろから、遠くから、様々な角度や距離で撮り、そして光の加減やカメラの切り替わるタイミング、ちょっと外すことがあるんですよ。これが思いを残しているんだなーという感じを与えてくれます。不思議ですよね。

こちらはあまりえぐいというか激しいセックス描写はそんなにありません。 いや、ちょっとはあるかな。でも『窮鼠はチーズの夢を見る』よりはだいぶおとなしめですね。

グザヴィエ・ドランの作品はほぼ毎回ゲイが登場するけど、ゲイの恋をメインに描いたのは何気に今回が初めてです。
監督自身もゲイということを公言していますし、作りとセンスある選曲、情緒的な会話劇は相変わらず素晴らしいです。全編に響き渡るピアノの旋律と柔らかな色彩と光で織りなす眩い映像が、登場人物たちの言葉にできない気持ちを物語っていますね。

男同士の恋愛を描いた『マティアス&マキシム』、9月25日から公開です。興味のある方は是非観に行ってみてください。

鈴木   荒木さん、本日もありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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