Plusalphatodayツイッター




「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」のとっておき情報

(2020年10月21日11:45)

映画評論家・荒木久文氏が、「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、10月13日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   荒木さん、こんにちは。お願いいたします。

荒木   はい、よろしくお願いします。

鈴木   体調は大丈夫ですか?

荒木   大丈夫です。寒くなってきましたので、ダイちゃんも気を付けてくださいね。

「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」のとっておき情報
「スパイの妻」(新宿ピカデリー)

まず  10月16日公開の作品『スパイの妻』です。今話題になっていますね。
黒沢清監督の作品で、第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞しました。

黒沢清監督の作品ってたくさんあるんですけど、ダイちゃんは観たことありますか?

鈴木   あまりないんだけど、『岸辺の旅』は有名ですよね。

荒木   そうですよね。死者との旅ですとか、ちょっとホラーっぽい作品が多いよね。 『ドッペルゲンガー』とか『散歩する侵略者』とかね。
最近では『旅のおわり世界のはじまり』とか、色々ありますね。

今回の『スパイの妻』は、舞台が1940年。戦争の気配が日本に漂ってきた頃。
神戸の高級住宅地の贅沢な洋館に住む福原夫婦。夫は貿易会社を営む福原優作(高橋一生)と妻の聡子(蒼井優)は使用人もいて、何不自由ない満ち足りた生活を送っていました。 ある日、優作は物資を求めて満州(中国東北部)へ渡り、そのために訪れた先で偶然、 日本軍の衝撃的な国家機密を目にしてしまいます。
彼は現地で得た証拠と共にその事実を世界中に知らしめる準備を秘密裏に進めます。
一方で、何も知らない妻の聡子は、幼馴染でもある神戸憲兵分隊本部の分隊長・津森泰治(東出昌大)に呼び出され、夫が反逆者でスパイではないかと疑われていることを伝えられます。聡子には今まで通りの穏やかで幸福な生活が崩れていく不安が生まれます。 夫の優作が隠していることとはどんな事なのか?妻・聡子はある決意を胸に、行動に出ます…。

元々はNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演のドラマをスクリーンサイズや色調を新たに劇場版として制作されたものです。
メインは蒼井さん、高橋君、東出君のほぼ3人劇のような感じです。
昔の女優さんのようなセリフ回し。
独特なセリフの言い回しで、演劇好きな人には舞台演劇を思い出させます。
蒼井優さんが特有の声の抑揚やトーンなど、あえて昔の舞台女優風で素晴らしいし、ミステリアスな高橋一生さんの演技もよかったんですが、私は気持ちの悪い不気味な東出君が想像以上によかったです。段々と良い方向にいくといいですね。

鈴木   少し性格が俳優じみてきましたよね。

荒木   そうですね。まあ色んな人生で苦労しているからね。
注目の黒沢監督の演出ですが、印象的なのは顔を真正面から捉えたカットが多いこと。 よく知られている光の使い方、いわゆる影と日向の使い方に気が付くと思います。
セピアが基調なんですが、地味な色味と柔らかい光をうまく使っています。非常に印象的です。また舞台の時代を表す服装や、建築物など、時代背景を表した装飾が大正ロマン〜昭和レトロという感じでとてもよかった。
つまり、映像、芝居、美術と全体的に漂うクラシックがとても印象的です。

全体的に薄気味悪さと長台詞と長回しも目立ち、過去に黒沢監督の作品をたくさん見てると楽しめると思いますが、ベネチアの賞を取った映画ってどんなに面白いんだろうと、ハリウッド的な映画を想像して行って見ると、そうでもないって感じる方もいるかもしれません。その辺りは注意して観に行ってみてください。

ということで、10月16日公開の『スパイの妻』という作品のご紹介でした。

「スパイの妻」と「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない」のとっておき情報
「わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺していない」(© Backstory, LLC. All Rights Reserved./ 配給:ツイン)(10月10日(土)~シアター・イメージフォーラムほかにてロードショー)

荒木 続いては10月10日公開の『わたしは金正男(キム・ジョンナム)を殺してない』というドキュメンタリー映画です。
3年前の2017年2月、マレーシアのクアラルンプール国際空港で起こった例の事件。覚えてますか?

鈴木   衝撃でしたよ!

荒木   北朝鮮の最高指導者、金正恩(キム・ジョンウン)の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)が、大勢の利用者でごったがえすロビーで殺害された事件です。いつの間にかニュースでも取り上げられることもなくなり、世間から消えてしまいました。

あの時殺人犯として逮捕されたのは二人の若い女性でしたが、どうなったと思います? 鈴木   裁判をして釈放されたんじゃなかった?

荒木   そうなんですよ。二人の女性は、インドネシア人のシティ・アイシャと、ベトナム人のドアン・ティ・フォンという人で、捕まって死刑になりそうになったんですが、裁判で釈放されたという、その模様を記録したのが、この『わたしは金正男(キム・ジョンウン)を殺してない』というドキュメンタリー映画です。

容疑者のシティとドアンの二人と、その後ろで暗躍していた北朝鮮の工作員たちとの関係はどんなものだったのか、ということを綿密に調べて、マレーシアのほか、インドネシア、ベトナムで緻密な取材をし、弁護団やジャーナリストへのインタビュー、空港の監視カメラなど豊富な映像をもとにこの事件の真実を見せてくれます。

とても分かりやすいのは、暗殺計画の裏側を時系列(時間に沿って)克明に映し出していきます。ですのでとても分かりやすい。
はじめ、北朝鮮の工作員たちはミスターYやジェームズなどと名乗り、素性を隠しSNSを通して彼女たちそれぞれに接触しました。そして日本のTV向けの“イタズラ動画”への出演話を持ちかけ、恐ろしいほど巧妙かつ入念な手口で、無邪気な二人の女性を暗殺の実行犯へと仕立て上げていく、その様子が手に取るようにわかります。

シティとドアンの裁判の模様も、音声データやイラストを駆使して再現されています。 ニュース報道では伝えられなかった、いわば闇の中の真実が次々と出てくる驚愕の展開に戦慄を覚えずにいられません。

鈴木   そんな真実がまだ世の中には沢山あるんですね。

荒木   そうなんですよ。
結局、北朝鮮、マレーシア、ほかにも中国、アメリカなどの事情を絡めて解決の形になったのですが、その政治決着の様子もよく開示されています。本当に分かりやすい作品です。 それにしても、北朝鮮という国家の底知れない不気味さを認識できる作品ですね。

鈴木   長さはどのくらいなんですか?

荒木   そんなに長くなくてとても見やすいです。本当に分かりやすく作られています。 現在公開中の『わたしは金正男を殺してない』というドキュメンタリー映画のご紹介でした。

鈴木   犯人と言われた二人の女性ですけど、釈放された現在もきっと怖いですよね。

荒木   現在それぞれの国に帰ってそれぞれの生活をしているようですが、やっぱり心の傷とか含めて過去に怯えて暮らしているんでしょうね。

鈴木   今日の作品はどちらも一癖ある感じですね。

荒木   そうですね。癖のある作品ですね。

鈴木   ただ、ボーン!ドカーン!じゃないですもんね。

荒木   好みのものを選んで、是非映画館に行っていただきたいと思います。

鈴木   荒木さん、ありがとうございます!

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

【関連記事】
「82年生まれ、キム・ジヨン」と「本気のしるし」のとっておき情報
「ある画家の数奇な運命」と「小説の神様 君としか描けない物語」のとっておき情報
「ミッドナイトスワン」「蒲田前奏曲」「エマ、愛の罠」のとっておき情報
「窮鼠はチーズの夢を見る」と「マティアス&マキシム」のとっておき情報
「喜劇 愛妻物語」と「カウントダウン」のとっておき情報
「頑張る若者たち」を描いた「行き止まりの世界に生まれて」「田園ボーイズ」のとっておき情報
青春学園コメディ「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」と村上虹郎主演の「ソワレ」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ホラー映画特集―「メビウスの悪女 赤い部屋」「事故物件 恐い間取り」などのとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ジェクシー! スマホを変えただけなのに」などこの夏おすすめの映画3本のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/高校生を描いた青春映画「君が世界のはじまり」と「アルプススタンドのはしの方」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/海洋パニックホラー「海底47m 古代マヤの死の迷宮」など「海の映画特集」
アラキンのムービーキャッチャー/又吉直樹の小説を映画化した「劇場」と韓国映画「悪人伝」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/映画「透明人間」と「河童」と「お化け」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/今までにない長澤まさみ主演の「MOTHER マザー」と「のぼる小寺さん」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ランボー ラスト・ブラッド」と「悪の偶像」など注目映画のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」と「15年後のラブソング」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ドイツ映画「お名前はアドルフ?」と異色のドキュメント映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/「わたしの好きな映画・思い出の映画」:「世界残酷物語」と「八月の濡れた砂」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/ブラピ主演「ジョー・ブラックをよろしく」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/パンデミックムービー「コンテイジョン」と「ユージュアル・サスぺクツ」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/コロナ感染拡大でミニシアターの危機と救済&映画「スター誕生」のとっておき情報
アラキンのムービーキャッチャー/映画「レオン」と「水の旅人 侍KIDS」のとっておき情報