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映画
3月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
(2024年3月10日)
文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が3月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。今回は3月4日の放送で「ARGYLLE/アーガイル」「52ヘルツのクジラたち」「コールド・ボーイ」が紹介された。
上地 上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。
映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。よろしくお願いします!
3月といえば、アカデミー賞じゃないですか?
東 もう間もなくですね。来週ですね、荒木さん?
荒木 はい。今年はどうですか?
東 今年はどうですかね~。ほぼほぼ、私と荒木さんは『オッペンハイマー』。
クリストファー・ノーラン監督の新作で3時間超えの、原爆を作った男の人のお話なんですけど。これなんじゃないかな~?って。今ね、最多数部門のノミネートですしね。
荒木 たぶん順当にいけばこれでしょうね。
上地 『オッペンハイマー』?
荒木 そう。私みたいにね、当てっこして恥をかくこともない…。(笑)
上地 昔ね、3人で当てっこして予想し合って、はずれた人がすごいメイクをするっていうやつでね…。
東 そうそう。映画業界の私と荒木さんだけがボロ負けして、由真さんが勝つ、っていうね、予想に(笑)そんなことがありましたね。
上地 ありましたね~(笑)
東 あれ、どうですか?日本からは注目の作品…。
荒木 そうですね。『君たちはどう生きるか』あと『PERFECT DAYS』なんかはね、日本の作品なんですけど、このあたり注目ですよね。
上地 はい、ぜひ注目していきたいと思います。3月公開の映画の中から、
私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。ではまず、さゆみんからお願いします。
東 はい。私がご紹介するのは、現在公開中の『ARGYLLE/アーガイル』です。
あらすじは、有名作家のエリー・コンウェイという女性が主人公です。
彼女が書いている本は凄腕エージェントのアーガイルが活躍する人気小説なんですね。
彼女はこの「アーガイル」というシリーズの執筆活動に葛藤していました。
ある時、飼っている猫のアルフィーを連れて列車で移動中、突如見知らぬ男たちに襲われ、同じ車両に乗り合わせていたエイダンと名乗るスパイに助けられるのですが、その後も彼女はどんどん命を狙われていくんですよ。そこでわかるんです、なんと彼女が書いた小説が本物のスパイ組織の行動と一致していたことを・・・わかって来るんですね。果たしてスパイと共に行動することになったエリーの人生はどうなるのでしょうか?…というお話なんですけど。
要するに自分が書いた小説と本物のスパイ組織がやっていることが一緒だから狙われちゃうんですよね~。ちょっとおかしなお話なんですけど、これはね、ネタバレを猫にもするなと配給会社から…猫が出てくるからね(笑)さんざん言われておりまして。本当にいってしまえば一言のお話なんですけど。それをね~、本当に豪華なキャストで最初から最後まで華々しく見せてくれて。久々にこういう豪華な洋画を観ているな~って思いながら観ていて。本当に華やかな映画だったんですけど。結構女性が楽しめる要素が多いです。というのはスパイ映画なんだけど、恋愛の要素もあったり。あとね、『マイ・フェア・レディ』とか『プラダを着た悪魔』とかまではいかないけど前半と後半で女性のドレスアップした姿ですとか変身する要素があったりとかして、ちょっとウキウキするポイントが多いんですよ。これ、荒木さんと語りたいんですけど、やっぱり映画好きは絶対に抑えたい、このマシュー・ヴォーン監督。『キングスマン』とか…。
上地 あ~、好き!
東 そう!『キングスマン』の監督なんですけど。この監督の新作ということで、この作品はね、『キングスマン』と比較すると、『キングスマン』って知的で静かでエレガンスなイギリス紳士のイメージがあったけど、こっちは豪華で大胆でダイナミックな演出。だから裏と表みたいなスパイ映画になっていて。しかもこの2作、もしかしたらユニバースになっていくんじゃないかな、みたいなところを感じ取れる作品になっていて面白かったですけど。マシュー・ヴォーン、印象どうですか、荒木さん?
荒木 マシュー・ヴォーン監督って本当に癖のある監督なんですよ。
私は『キック・アス』が好きなんですけども、普通のヒーロー映画、それから『スーパーマン』的なスーパーヒーロー映画とか全部新機軸を加えてくれる人なんですよ。
だからこの人が何か作るっていうと、何か変わったことやってくれるな、っていうことで癖強いの全開で二転三転、四転五転、六転七転八転ぐらいしますかね。
東 アクションも全部見たことがないようなアクションで。
荒木 スパイ映画なんだけど、コメディも入っているから楽しいというか、観たことないな、っていう感じですよね。
東 観たことないな、でいうと由真さんがこれからこの『ARGYLLE/アーガイル』を観るにあたって注目してほしいのは、マシュー・ヴォーン監督のアクション、本当に唯一無二の独創的なものなんですけど、基本的に真ん中で全部展開されるんです、画面の。
上地 真ん中で?
東 そう。スクリーンのど真ん中で展開する。さっき好きって言ってくれた『キングスマン』も教会でコリン・ファースが戦うシーンって、基本真ん中でぐるぐるぐるぐる動いているんですね。
上地 たしかに。
東 中央でやれるアクションが多いから、スクリーンで観るとグーって画面に引き寄せられている感じが、これぞスクリーンアクションという感じなんですけど。面白いですよね。
荒木 そうですね。本当にそういうところだとか、あと今ね、美術の話をね、衣装の話もしていた。音楽的にもね、ビートルズの最後の新曲というのかな?「ナウ・アンド・ゼン」という曲もきちんと流したりですね、音楽的にもすごいんですけども。由真さん、スパイっていうとスパイ映画の主人公、どんな方を思い浮かべますか?
上地 ああ!『ミッション:インポッシブル』シリーズのトム・クルーズ・・・
荒木 この『ARGYLLE/アーガイル』っていう主人公のスパイ、やっぱりかっこいいですよね。ちょっと変っていますけどね。頭が角刈りだったりして。
上地 えっ…?(笑)
東 ヘンリー・カビルっていって、スーパーマンやった方が今回、角刈りになって挑戦している。脚本を読むまで、監督にもう勝手に角刈りって決められていて、本人も知らなかったらしいんですけど(笑)すごいイケメンの角刈りスパイで。
上地 へえ~!
荒木 そうなんですよ。それは空想の中のスパイなんですけど。本当のスパイとして出てくるのが、サム・ロックウェル。これが本当のスパイ?っていうのが・・・
上地 スパイっぽくない?
荒木 スパイっぽくないですよね。
東 それが実はリアルなんじゃないか、っていって。
荒木 そう。実際のスパイって…あの『ブリッジ・オブ・スパイ』という有名な映画がありますが、そこに出てくるマーク・ライアンスというおじさんは本当に優秀なスパイだったんですけど、もう本当にうらびれて寂れてヨレヨレの、まあ私みたいな感じのおじいちゃん。
東 そう!(笑)
上地 イメージしやすい あはははは!
荒木 だいたいそういうのがね、本当のスパイだよね。
上地 目立っちゃダメですものね。
東 やる必要があったのかわからないんですけど、今回『ARGYLLE/アーガイル』で出てくるサム・ロックウェルは2年かけて髭と髪を伸ばしたらしい。
それ、かつらでよかったんじゃないかって思ったんですけど(笑)そのぐらい役作りもして、一般の世界に溶け込む、だらしないおじさんのスパイっていうのをやっていて。そのあたりもね、キャストの変化が面白いですよね。
荒木 はい。とんでもない飛躍っぷりというか、そういうものが魅力の映画ですよ。だから、とにかく逆をいえば物語の中盤以降は何も言えない。それこそネタバレが・・・
東 あとね、由真さん、猫好きじゃないですか?飼っているでしょ、
アルフィーっていうこなんだけど、今回の『ARGYLLE/アーガイル』の広告にもたくさん使われていて。これ監督の猫、縁故採用の猫ちゃんなんだけど。すっごい似ているの!由真さんちの猫に!
上地 さゆみんのインスタグラム見て、似ているなって思った。うちのコタにね。似ているの。可愛いね~、あれ。
東 だからそういう意味でも・・・ちょっと一瞬 猫ちゃん、可哀想なシーンあるんだけど、基本は愛されています。観てほしいなと思っています。
荒木 本当にね、今まで観たこともないっていう感じ。誰にも予想できない物語なので、一生懸命考えてもね、すぐ裏切られるというパターンなので、まあ騙されに行ってください。この監督に騙されに行くつもりで大きなスクリーンで観ると本当に楽しめるスパイ映画です。
上地 楽しみ~。
東 はい。私がご紹介したのは現在公開中の『ARGYLLE/アーガイル』でした。
上地 続いては、映画評論家・荒木さんのおすすめ作品です。
荒木 はい。私は『52ヘルツのクジラたち』というタイトルの、今、公開中。
ネタバレ心配の第2弾ですね。3年前の本屋大賞を受賞した町田そのこさんの小説を映画化したヒューマンドラマです。
あんまりないことなんですけど、この作品、公式サイトで「本作にはフラッシュバックに繋がる、ショックの懸念のあるシーンが含まれています。鑑賞前にご確認ください。自死、自傷、DV、児童虐待等」と書いてあります。
ちょっと怖いですよね。観る気が削がれる気がします。
タバコのパッケージの表書きみたいなものですけども、実際に鑑賞してみると不幸というか、マイナス要因ばっかりの懐石料理みたいな感じなんですけども、しかし観終わって映画館を出る時にはですね、ラジオお聞きのみなさんも含めて、「ああ、観て良かったな」としみじみ心に感動の涙と共に抱いている人が多いと思いますよ。だからそんなに怖がらないでぜひ観ていただきたいと思うんですけども。いつも言っているように、あまり何も情報入れないで観る方がいいかもしれないですね、本当にね。前置きが長くなりましたけど、ストーリーです。
主人公は貴瑚さん、杉咲花さんが演じています。彼女は自分のこれまでの人生を家族によっていわば搾取され、苦しみの中で生きてきたんですね。東京からひなびた海辺の街の一軒家へ引っ越してきます。彼女はその街で母親から「ムシ」と呼ばれて虐待されて声が出せなくなってしまった少年と出会うんですね。彼女はその少年と交流を通じて、やがて自分の声なきSOSに気づいて彼女を助け出してくれたアンさんという人物との思い出に浸っていく・・・というストーリーというか、明らかにできるのは、ここまでなんですけども。本当になんというか、入り口は平凡な話なんですけど、ここからお話しできないストーリーが始まるんですね。
どうですか、見ていただいた、おふたりの感想?
上地 もうしんどくなるくらい泣きました。本当に泣いて。それって杉咲花さんの演技がとにかく素晴らし過ぎて、一気にぐっと引き込まれましたね。杉咲さんだけじゃないんですけど、志尊淳さんとかも、みなさん本当に素晴らしかったですね。
荒木 主人公の杉咲さんはじめね、アンさんという人物には志尊淳さん、それから初めての恋人になる会社の上司を宮沢氷魚さん、それから親友を小野花梨さんね。少年は映画初出演の桑名くんという男の子が演じているんですけども。東さんはいかがでした?
東 私も本当に泣きましたね。あとさすが本屋大賞が元になっているというだけあって、児童虐待ですとか毒親、あとDV、介護とかいろんな社会問題、現代的なテーマがここまでか?!っていうぐらいにひとりの人生を通して複雑に絡んでいく様子、すごく見ごたえがあって。ああ、これが現代の物語なんだなって思いましたし、やっぱりこうやってSNSとか繋がれる方法がいくらでもある世の中でも、苦しくて声を出せない人がいる、まだ声なき声を持つ人がたくさんいるんだな、って。ちょっと今一度振り返りたくなるような心に響く映画だったなと思いましたね。
荒木 タイトルがですね『52ヘルツのクジラたち』という作品をご紹介しているのですが、『52ヘルツのクジラたち』っていうのはちょっと変わったタイトルですけども、これはですねクジラが、基本的には音を出してコミュニケーションするというふうに言われていますよね。だいたい、10から39ヘルツの声で鳴くそうなんですけど。その中でアメリカの西海岸に生息するといわれる1頭のクジラはですね、仲間には届かない52ヘルツの高音を出すそうなんですよ。
上地 本当にいるんですね。
荒木 本当にいるらしいですね。で、世界一孤独なクジラといわれているんですって。聞き取ってもらえないんですね。広い海の中でも孤独に過ごしているということらしいんですが、そういう状況をタイトルとして使っているわけですね。
だいたいタイトルの意味がわかりますよね。だからコミュニケーションが取れない、仲間はずれになるという中で、この世の中にはね、自分の声を汲み取ってくれる人がいるという希望を込めてタイトルがつけられているということなんですね。先ほどおっしゃったように非常に熱演、杉咲花ちゃんね。『市子』という前の作品でも、今までと明らかに違う演技の深みが見えましたけども、志尊淳さんもね、重要な役をやるんですけども、彼の持ち味というかね、元々あまり口を開けないでちょっとしゃべる感じとか、あとで効いてくるんですよね、アンさんという人物にね。悲しみや諦めなんかを込めた演技がとても良かったと思いますね。
上地 素晴らしかったです。
荒木 ただね、他にもですね、宮沢氷魚くん演じる初めての恋人で、典型的ないい人からダメンズに変わる恋人ですよね。自分の勤める会社の専務っていう役回りもね、なかなか良かったですよね。
東 良かった。
荒木 だから物語はすごく重くて。希望も感じさせるんですけども、生きづらさとかね、たぶんみんな少しのところで途切れてしまいそうなところをギリギリ生きている、というね。そういうのがダイレクトに伝わる作品でした。こういう映画を観ていると、自分にあんまり関係ないなと思っちゃうんですよね。でも本当はこうやって普通に生活していても平気に見えても、苦しんでいる人が自分の近くにいるんじゃないかと。そういうふうにやっぱり・・・聞こえないけど、52ヘルツで。そういう人たちに対して、まあでも、もしかしたら自分がそうなるかもしれない。
東 そうですね。みんな何かしら52ヘルツできっとね、抱えているところはあるのかもしれないな、ってちょっと思って。それぞれの52ヘルツで、叫びたいことがあるかもしれないなって思うと、すごく寄り添ってくれる映画ですよね。
荒木 だから寄り添う心とか、向き合う勇気を持たないと。でもそういうもの持てるんだろうかな~って。私なんて特に昭和世代で、不適切な世代の代表みたいなものだから、相当努力が必要だなと。あの映画を観ていてね、そういうふうにちょっと思いましたね。だから他人事だと思わないで、こういうものを感じている人たちに配慮して優しい目を向けなきゃいけないなというふうに思いました。ということで『52ヘルツのクジラたち』現在公開中です。
上地 トリは私、上地由真のおすすめ作品です。私がご紹介するのは3月8日から公開の『ゴールド・ボーイ』です。これもネタバレ心配第3弾ですね(笑)今日全部そうですよね。
東 ね~、すごい!
上地 あらすじです。舞台は沖縄。オープニングの美しい海の映像から一転、岡田将生さん演じる東昇が義理の両親を崖から突き落とすシーンから始まるんです。
東は沖縄では誰もが知る大企業の婿養子でしたが、妻から離婚を切り出されたことから焦り、義理の両親の殺害を計画します。綿密に考えられた計画は完全犯罪のはずだったのですが、崖の下にいた3人の中学生が偶然その様子をカメラに収めていたんですね。
それぞれ複雑な家庭環境で問題を抱えていた3人は大金を手に入れようと東を脅迫することになります。リーダー格となる頭脳明晰な少年・朝陽と冷酷な殺人鬼・東。大人と子供の騙し合いの結末はどうなるのか…?!というお話ですね。いや~、本当にこれ観て、人間不信になる。怖かった。
荒木 特に東が怖い。
上地 さゆみんも東ですけどね。
東 はい、そうですね。
上地 いや、怖かった~。二転三転してね、本当に先が読めない。ずっとドキドキしていましたね。どうでしたか?
東 私こそ、崖から突き落とされたような気持ちになりましたね。冒頭で東がそれをするんですけれど、本当に一瞬も飽きさせないですし、なんか演技対決がすごかった。羽村仁成くん、去年『リボルバー・リリー』でね、活躍されていましたけど、今回とんでもない芝居を見せてくれて。ベテランの岡田将生さんとの芝居対決みたいなシーンがあるんですけど、私、もうずーっと2人のやり取りに悪寒と寒気…両方一緒?(笑)
荒木 まあ同じだよね。
上地 あははは!
東 本当に具合悪くなって(笑)映画観た後もしばらく、さぶいぼが治まらない状態になって。めちゃくちゃ面白い!すごかった。すごい映画だった~。
荒木 演技でいうとね、岡田将生さんね、人間味のない殺人鬼、美しい殺人鬼ですよね。彼の綺麗な顔で今回はですね、特に唇がね。薄い唇が冷酷そうで、本当にゾクゾクするような緊張感。いい役者ですよね、とっても。少年少女たちもね、実年齢よりずっと下の演技をしなきゃいけないんですけども3人とも危うさとかしたたかさとか、それからあどけなさも含めて、とてもいい演技でしたよね。特に女の子をやっているのは星乃あんなさんというらしいんですけど、ちょっと無邪気でね、とってもいい味を出していましたよね。
東 なんか原作もすごいですよね。中国の原作になっているんですよね。
荒木 中国の原作で『悪童』というタイトルだったらしいですね。
上地 それが『ゴールド・ボーイ』?
荒木 そうそう。
上地 タイトルから想像できなかったです。
荒木 そうですね。監督が、由真さんもよくご存知な…。
上地 金子修介さん。
荒木 この人ね、『デスノート』や平成『ガメラ』3部作なんかで有名なんですけども、本当に守備範囲が広いんですよね。大学卒業後、教師の免許もあるんですけども、日活でロマンポルノをやっていたんですね、脚本をね。その後、押井守の『うる星やつら』の脚本でデビューして、ヤクザコメディの『恐怖のヤッちゃん』さらに『ガメラ』その成功で、怪獣映画というジャンルに新風を吹き込んだわけですよ。他にもヒットした『デスノート』があったり。まあだからそういう意味じゃ、コメディからシリアス、怪獣、アニメまでオールラウンド。
東 すごいな~。
荒木 他にもね、『学校の怪談3』なんかも手掛けていまして、ちょっと甘酸っぱい初恋描写も得意なんですよね。だから今回もちょっとその初恋描写もありますよね。
それからまた、少女アイドル好きでも知られていて、アイドル映画でも起用されることが多いんですよ。だから中山美穂とか宮沢りえ、それから上戸彩ちゃんなんかを使ったりね。ヒロイン発掘に長けているっていうことでね。そういう意味では今回の星乃あんなちゃんも、これスターになるんじゃないかなと思いますね。
まあ元々ね、そういうことが上手い監督で。それからこれ、サイコパスの映画ですから。サイコパスの映画っていうとみんな「俺、サイコパスじゃない」「私、サイコパスじゃない」からって安心して観られているんだけど、この映画、だんだん…サイコパスを介していると自分もサイコパスになっていくというパターンなんですよね。
最後はね、そういう要素が出てきますよね。付き合う人によって犯罪に手を染めてしまうんですよね。そういうところもあったりして、これはまあ新しい見方で、現実的かどうかと言われるとどうでもないんですけども、面白い見方だなと思いましたよね。
あとタイトルは『ゴールド・ボーイ』なんですけど、普通『ゴールデン・ボーイ』っていうと思わない?
上地 「ゴールデン・ボーイ」?たしかに。
荒木 映画の話じゃないんですけども。「ゴールド・ボーイ」っていうと「ゴールド」は「本物の金」、「ゴールデン」は「金のように見える」なんだよね。従って「ゴールデン・ボーイ」という場合には「金のように輝くばかりの少年」、「ゴールド・ボーイ」は「金でできた少年」少年型の金の棒みたいな、そういう感じなんですよ。
東 あ~!なるほどね。ちょっとそのへんね…。
荒木 うん、そのへんね。
東 でも、もう典型的な、何も知っちゃいけない…。(笑)
上地 何も言えないよね。
荒木 何も言えない…。
東 今日、何も言えない3部作でしたね。
上地 本当だよ~。(笑)
荒木 そう、何も言えない。でもさあ、だから周りを撫でていて肝心のところに踏み込めないっていうのはね、愛撫や前戯で、ですね…。
上地 出た~。(笑)
東 由真さん、締めてもらっちゃっていいですか~?
上地 いいですかね?
荒木 文句言われますよね、相手にね~。前戯ばっかりやっているんじゃ…。
上地 ということで私がご紹介したのは3月8日から公開の『ゴールド・ボーイ』でした。3月公開の映画作品の中から、それぞれの推しをご紹介しました。ぜひ映画館でチェックしてください。映画評論家の荒木久文さん、そして映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。
荒木・東 ありがとうございました。
■上地 由真
オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。
■東 紗友美
映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。
■荒木 久文
現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員 日本映画ペンクラブ会員。