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「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報

(2020年11月29日10)

映画評論家・荒木久文氏が、「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」の見どころととっておき情報を紹介した。
トークの内容はFM Fuji「GOOD DAY」(火曜午後3時、11月24日放送)の映画コーナー「アラキンのムービーキャッチャー」でパーソナリティ・鈴木ダイを相手に話したものです。

「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報
(映画トークで盛り上がった荒木氏㊧と鈴木氏)

鈴木   こんにちは。よろしくお願いします。

荒木   よろしくお願いします。11月も末に入り、そろそろまとめの季節ですよね。

鈴木   早い、今年!なんだろうな~。

荒木   早いよね。

映画界では映画賞のシーズンが始まろうとしています。今日の特集はいつもその賞レースのトップを切る報知映画賞について、予告編っぽくなるんですがお話ししようと思います。 賞の正式発表は12月に入ってからなのですが、今回各賞のノミネートが発表されましたのでそのあたりをお話ししようと思います。

報知映画賞というのは、新聞社系で最古で今年45周年を迎えます。 その年の最も早く決まる映画賞で、権威のある賞、歴史がありその年の流れを作ると言われています。
今年も実施されますが、そのシステムは、まず一般投票です。ファン投票と呼ばれています読者投票ですね。作品賞、主演男優賞など9部門に10から15作品がノミネートされ、それをもとに11人の選考委員による選考会で決定されます。私はノミネート委員と選考委員も兼ねていますのでノミネートから参加しています。
先日会議がありまして全ノミネート作品が発表されました。ダイちゃんの手元にいってると思います。

鈴木   ありますね!!

荒木   主演男優賞が12人くらいで、それから助演女優賞、新人賞、アニメ作品賞などいろいろあるんですけど、何といっても目立つのは嵐の二宮くんが、ユニークな家族写真の撮影で知られる実在の写真家を演じた『浅田家!』です。主人公の二宮くんの主演男優賞を始めとする8部門ノミネートを記録しました。だからと言って全部の賞を受賞できるわけではなんですけど。

続いて6部門ノミネート作品が、菅田将暉くんと小松菜奈さんのラブストーリーの『糸』、そして、元SMAPの草彅剛さんがトランスジェンダー役に挑戦した『ミッドナイトスワン』、森山未来がボクサー役を演じた『アンダードッグ』前編後編ですね。
ミッドナイトスワンは読者投票がすごかったです。5部門でトップでした。作品賞、主演男優賞の草彅剛さん、内田監督の監督賞、助演女優賞で水川あさみさん、新人賞で服部樹咲さんの5部門です。読者投票で1位、すごいですね。
また、再来週にご紹介しますので楽しみにしていただきたいです。

作品賞・邦画部門では、ベネチアの銀獅子賞を取った、黒沢清監督の『スパイの妻』や河瀬直美監督のカンヌ映画祭公式作品『朝が来る』など海外で高い評価を受けている作品など17作品がノミネートされています。
海外作品賞は、アカデミー賞4冠の韓国映画『パラサイト 半地下の家族』、難しくて分かんないという人続出の『テネット』などがノミネートされました。
アニメ作品賞は、例の『鬼滅の刃』など10本がノミネートされました。

結果発表は12月に入ってからですが、選考会議、いろいろ面白いんですよ。選考委員の先生方、みんな本気になって選んでいるから自分の作品でもないのに、「これがいい」「あれがいい」とか、このご時勢に口から唾が飛ぶ勢いで喋ってます。会議の裏話なども含めてレポートしたいと思います。

鈴木   うんうん、面白いですね。楽しみです。

「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報
「アンダードッグ」(公式サイトから)

荒木   国際東京映画祭の際にもご紹介しましたが、この映画祭のオープニング作品でもありました『アンダードッグ』という作品。報知映画賞の作品賞、監督賞に武正晴監督、主演男優賞に森山未來さん、助演男優賞に北村拓海さんと勝地涼さん、助演女優賞に水川あさみさん、という6ノミネートされています。
非常に評判を呼んだ作品なのでちょっとご紹介したいと思います。ボクシング映画はどうですか?

鈴木   ボクシング、やっぱり一番のイメージは『ロッキー』だよね。

荒木   そうだね!『ロッキー』に尽きるからね。
日本映画にもボクシング映画結構あるんですよ。3年前の『あゝ、荒野』とかね。
また、6年ほど前には、ボクシングを通して変化してゆく女性の姿を描く『百円の恋』という作品がありました。

鈴木   結構あるもんですね。

荒木   そうなんですよ。
『百円の恋』はその年いろんな映画賞を獲った映画です。この作品、監督は武正晴さん、脚本は足立紳のコンビだったのですが、この二人がまたコンビを組んでボクシング映画を作ったわけです。それが11月27日公開の『アンダードッグ』です。

前編131分、そして後編145分、合計4時間36分の大作です。

アンダードッグとは、前にも説明しましたが、「かませ犬」のことです。転じて、格闘技などで引き立て役として対戦させる弱い相手のことをいいます。

この長い映画、森山未來さん、北村匠海さん、勝地涼さんがメインキャスト。
森山未來さんはプロボクサーの末永晃。彼はかつて掴みかけた日本チャンピオンの夢を諦めきれず、現在も“かませ犬”としてリングに上がり、ボクシングにしがみつく日々を送る崖っぷちボクサーです。幼い息子には父親としての誇り高い姿も見せてやることができず、今や“負け犬”。どん底を這いずる“夢みる燃えカスとなった男”です。
2人目は北村拓海さん演じる木村龍太。児童養護施設出身で、”若き天才ボクサー“として将来を期待されていました。子供のころ森山さん演じる末永晃と出会いボクシングに目覚めたのですが、過去に起こした事件によって将来に暗い影が近づいてきます。
そして3人目は勝地涼さんが演じている芸人の宮木瞬。大物俳優の二世タレントで、芸人としても鳴かず飛ばずの宮木は、自らの存在を証明するかのようにテレビの企画でボクシングに挑むことになります。“夢さがす”芸人ボクサーです。それぞれの生き様を抱える3人の男たちは、人生の再起をかけて拳を交えるのですが…。
そういった内容の胸を熱くする、ボクシング映画です。
三者三様の理由を持つ男たちが戦いのリングに立つとき、何を得て何を失うのか?

4時間36分ですが、長いと感じませんよ。ボクシングシーンも素晴らしいですし、皆さん体を作り上げてきていて、本格的なボクシングになっていますので、ボクシング好きな人もそうでない人も、人生ドラマとしても素晴らしい作品なので是非観ていただきたいです。 通常料金で4時間観れると考えるとお得なのかなと思います。

鈴木   あはは。確かに2本分ですもんね!

荒木   そうですよ。
あらすじなどはあえて言いませんが、3人のすさまじい生き様、酸いも甘いも噛み締めて、どん底から這い上がろうとする三匹の犬たちのドラマですね。ストーリーについてはオリジナルドラマですので原作もありませんので、予備知識なしで映画を観てほしいですね。

鈴木   映画を観るしかないんですもんね。

荒木   そうです。
また、3人と彼らを取り巻く人々の群像劇として全8話のシリーズで描く「配信版」もABEMAプレミアムで配信されるそうなので、興味のある人はそちらも注目していただきたいと思います。
11月27日公開の『アンダードッグ』でした。
そして 11月末というと、そろそろクリスマスプレゼントを考える季節でもありますね。 鈴木   あともう1ヶ月ですもんね。

荒木   昔は子供たちには絵本や童話なんかをプレゼントしたと思うんですが、今はあんまり喜ばないんですかね?

鈴木   本、どうなんですかね。

荒木   今はゲームとかですよね。

次は偶然11月27日公開の2本の映画です。絵本作家と童話作家の原作の映画で、同じテーマの「ヒトラーの支配から脱出するユダヤ人」を描いた作品をご紹介しましょう。

「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報
「アーニャは、きっと来る」(公式サイトから)

まず、イギリスの児童文学作家マイケル・モーパーゴという人の『アーニャは、きっと来る』というタイトルの作品です。フランスを舞台にユダヤ人救出作戦の行方を描いたヒューマンドラマです。
1942年、第2次世界大戦がはじまったころ、ピレネー山脈の麓にあるフランスの小さな村。 13歳の羊飼い少年ジョーは、ユダヤ人の男ベンジャミンと出会います。彼はユダヤ人の子どもたちを、ドイツに占領されていたフランスから安全なスペインへ逃がす計画を立て、ジョーは手伝うことになります。
その一方で、ジョーはドイツ軍の下士官と親しくなります。ナチスなんだけどとてもいい人だったのです。
そんな中、村人たちが一致団結して子どもたちを逃がす日が迫ります。
しかし、ベンジャミンが待つユダヤ人の娘アーニャは現れず、ドイツ軍が村に迫ってきます…というフランスの美しい山々を背景に緊迫する脱出劇です。
フランスの名優ジャン・レノも出演しています。

『アーニャは、きっと来る』が“逃がす”方の話だとしたら、続いて紹介する作品は“逃げる”方の話です。
ドイツの絵本作家ジュディス・カーが、自身の少女時代の体験をもとに綴った自伝的小説『ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ』を映画化した『ヒトラーに盗られたうさぎ』という作品です。

「アンダードッグ」「アーニャは、きっと来る」「ヒトラーに盗られたうさぎ」のとっておき情報
「ヒトラーに盗られたうさぎ」(2020年11月27日(金)よりシネスイッチ銀座にて全国順次ロードショー)( © 2019, Sommerhaus Filmproduktion GmbH, La Siala Entertainment GmbH, NextFilm Filmproduktion GmbH & Co. KG, Warner Bros. Entertainment GmbH )

1933年2月のお話ですので、『アーニャは、きっと来る』よりちょっと前ですね。まだそんなにナチスの勢力が強くなかった頃ではあります。

ベルリンで両親と兄と暮らす9歳のアンナは、ある朝突然、「家族でスイスに逃げる」と母から告げられます。
アンナの父親はユダヤ人の演劇評論家で、新聞やラジオでヒトラーへの痛烈な批判を展開していましたが、次の選挙でのヒトラーの勝利が現実味を帯びてきたことに身の危険を感じ、密かに亡命の準備を進めていたわけです。
逃げるとき、持っていくものは1つだけと言われたアンナは大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみに別れを告げます。その後、いくつもの国で長い年月もの間、過酷な逃亡生活をしていくわけですが、彼女は明るさを忘れず、たくましく成長していきます・・・という話です。

それぞれ子供たちのお話なんですけど、両作品ともドイツからのユダヤ人の脱出を子供の視点で描がき、戦争という過酷な環境で必死に、でもたくましく生き抜く子供たちを描いています。
クリスマスなので他にもいろんな映画ありますけど、この辺りの話が分かるような年代のお子さんと観に行くのもいいかもしれませんね。両親と安心して観られる映画なので、クリスマスプレゼントの一つとして連れて行くのもいいんじゃないかなと思います。

『アーニャは、きっと来る』と『ヒトラーに盗られたうさぎ』という、2本とも11月27日公開の作品でした。

鈴木   荒木さん、ナチスの収容所とかこういう映画って、過去にも『シンドラーのリスト』だったりと名作いっぱいあるじゃないですか。

荒木   名作ありますよね。

鈴木   僕のイメージなんですけど、こういう映画って真夏のわいわいしているときの公開よりもクリスマス近い冬に公開されるイメージが強いんですけど気のせいですかね?

荒木   そうですね。長い戦争で冬の寒い山脈を越えたり、『サウンド・オブ・ミュージック』もそうでしたがスイスに脱出したりしますよね。みんな苦労して脱出するイメージがあって、どうしても冬山が舞台になったりしますね。そういう悲惨な子供時代を過ごした人が書いた話です。

鈴木   なるほど。これは必見ですね。

荒木   はい、是非観ていただきたいと思います。

12月は日本も戦争が始まった時期ですよね。その辺りも描いている作品もあるので、12月はしみじみすることもあると思いますが、そういう映画もいいのではないでしょうか。

鈴木   荒木さん、ありがとうございました。

■荒木久文(あらき・ひさふみ)1952年長野県出身。早稲田大学卒業後、ラジオ関東(現 RFラジオ日本)入社。在職中は編成・制作局を中心に営業局・コンテンツ部などで勤務。元ラジオ日本編成制作局次長。プロデューサー・ディレクターとして、アイドル、J-POP、演歌などの音楽番組を制作。2012年、同社退職後、ラジオ各局で、映画をテーマとした番組に出演。評論家・映画コメンテイターとして新聞・WEBなどの映画紹介・映画評などを担当。報知映画賞選考委員、日本映画ペンクラブ所属。

■鈴木ダイ(すずき・だい)1966年9月1日生まれ。千葉県出身。日本大学芸術学部演劇学科卒。1991年、ボストン大学留学。1993年 パイオニアLDC株式会社(現:ジェネオン・ユニバーサル)入社 し洋楽宣伝プロモーターとして勤務 。1997年 パーソナリティの登竜門であるJ-WAVE主催のオーディション合格 。
現在は、ラジオパーソナリティとして活躍するほか、ラジオ・テレビスポット、CMのナレーション、トークショー司会やMCなど、幅広く活躍。 古今東西ジャンルにこだわらないポピュラー・ミュージックへの傾倒ぶり&造詣の深さ、硬軟交ぜた独特なトーク、そしてその魅力的な声には定評がある。FM Fuji『GOOD DAY』(火曜午前10時)のパーソナリティなどに出演中。

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