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映画
5月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦
(2024年5月16日20:00)
文化放送「上地由真のワンダーユーマン」(月曜午後9時30分)でパーソナリティ―の上地由真と映画ソムリエの東紗友美さん、映画評論家の荒木久文さんの3人が5月のおすすめ映画を紹介して見どころを解説した。同番組では毎週テーマを設け“由真的”テイストで進行。毎月第1週目は「今月のシネマログ」と題し、その月に公開される話題の映画作品を上地由真と映画の専門家2人が紹介する。今回は5月6日の放送で『関心領域』『ボブ・マーリー:ONE LOVE』『青春18×2 君へと続く道』が紹介された。
上地 上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。
よろしくお願いします。
荒木・東 よろしくお願いします。
上地 この間、さゆみんと『コナン』を観てきたんです。
東 あっ!行ったね~。楽しかったね~! 最近ユニクロが毎年コラボしているコナンのTシャツをお揃いで着て。少年探偵団のTシャツを。
上地 そうそうそう。胸に探偵バッジを付けて。 いや~。『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』今年も良かったわ。
東 そう。本当に北海道の五稜郭に行きたくなる。もうね、最高だったね。
上地 映像が素晴らしい。きれいだった。
東 今ね、めちゃくちゃヒットしているのは、荒木さんもご存知かもしれないんですけど。私、今回の作品、絶対に100億円いってほしいですよ。理由は、もし100億円いったら、女性監督で初100億超えの作品が生まれるっていう記録的なことも成し遂げることになるんですよ、名探偵コナン。100億超えたら。
上地 え、でも超える可能性あるんじゃない?
東 だいぶある。もう前作の112パーセントの比率でスタートしているから、まあどうやってもいくんじゃないかなと。
上地 この放送の時にもしかしたらいっているかもしれないよね。
東 可能性あるね。楽しみー!
上地 楽しみです。今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」5月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これはおすすめ!」と思った作品をご紹介していきます。ではまず、さゆみんからお願いします。
![5月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦](../movie/images/240512-31.jpg)
東 はい。私がご紹介するのは5月24日から公開の『関心領域』という映画です。
ナチスドイツの占領下にあった戦争中のポーランド。
アウシュビッツ強制収容所で所長を務めるルドルフ・ヘスと妻のヘートヴィヒは、収容所の壁一枚を隔てたすぐ隣の家で幸せそうに暮らしています。収容所からの音や立ち上る煙などが間近にありながら、一家は満ち足りた日常を送っているのだが、不穏な空気が漂っています。第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞の2部門に輝いた大変話題作になっています。この作品があったから、役所広司さんが主演の『パーフェクトデイズ』が選ばれなかった、賞を獲ることができなかったんじゃないか、とも言われています。
そして今年『オッペンハイマー』が作品賞、他7部門を受賞しましたが、それと唯一作品賞で戦える対抗馬なんじゃないかって言われていたのが、この『関心領域』という映画になるんですけども。
いや~、ちょっとね、今までに観たことのない形で戦争とかホロコーストの真実を描いた作品であることは、これはもう間違いのない作品だなと思いましたね。一家がすごく楽しそうに、もうまるで理想郷のような牧歌的な場所でね、お花に満ちあふれて、庭にはプールがあって、美味しそうなご飯が食卓には飾られて・・・という生活をしているんですけど、よくよく聞いていると、うしろで叫び声、銃声、何かを焼却炉で焼く音、ゴーっと焼く音がずっと聞こえていて。さすが音響賞を獲っているだけあって、そのいろんな音が大きくなったり、時々はっきり聞こえたり、ぼわーんと聞こえたり。そういうのをずっと繰り返していていながらも、物語が進行していくんですけども、決して虐殺のシーンですとか収容所の中は見せないからこそ、私たちの想像力を主人公にしてしまったようなタイプの作品で。由真さん、いかがでしたか?
上地 いや本当にさゆみんが言うように、美しいおうちのお庭とかお花とか色彩豊かなきれいな映像じゃないですか?それの背景の音…。
東 そう。もう言うだけでも鳥肌立っちゃうようなね。
上地 きれいな映像にうめき声だとか叫び声だとか赤ちゃんの泣き声だとか、そういうのでよくわかんない感情、不気味っていうのかグロいっていうのか、恐ろしい映画だなって。
東 一切怖いシーンはないのにね。
上地 そう、それなのに!だから想像力がより搔き立てられるんですよね。
東 うんうん、何が起きているんだろう?ってね。荒木さん、どうです?
荒木 今ね、二人がおっしゃったように、この映画はね、見せない映画なんですよね。直接な表現じゃないから淡々とした恐ろしさがあるんですよ。カメラってずっと引いた時点で…。
東 どうですよね。ロングショットの構成で基本進んで。
荒木 まあひとつ手前の部屋から撮っているような感じで。残酷シーンも一切ないんですけども、その残酷さが音を中心にね、川から流れてくる遺留物とかね、見せないで想像させる。で、耳をすませば遠くから悲鳴やらうめき声が聞こえる。このあたりのテクニックって新しい感じですよね。そういう意味でいうと、アウシュビッツの恐ろしさを別の面から撮ったということと、もうひとつは人間の恐ろしさですよね。特にこの一家、お母さんがいますよね。
上地 はい…。
東 このキャラクターが強くて。図太いんですよね。
上地 歩き方から嫌だったな。
東 演じているサンドラ・ヒュラーさん、今年『落下の解剖学』でも話題だった女優さんなんですけど。さっき言ったロングショットでも歩き方とかで芝居しているんですよね。図太さとか。顔が映っていなくてもね。(笑)
荒木 まさにね、この奥さんが自分の関心領域以外には一切関心がないという、それが象徴的な人物でしたよね。彼女にとっては関心がある以外の他の世界は存在しないんですね。自分の身の回りだけ、自分の好きなものだけしか見ないというか見られないというかね。
おまけに 非常にわがままで夫が転勤になろうとすると、「私はここが理想郷なのよ。冗談じゃないわよ!」などと言う。
東 ちょっと夫婦のファミリードラマっぽい視点があったりしつつ…。
荒木 そうなんですよね。そういう非常に上手く作ってある映画ですよね。
東 たしかに。そしてタイトルがまたこれが素晴らしい。邦題がそのまま『関心領域』になっているんですけどね、良いタイトル、ちゃんとつけてくれていますよね。
そのままにしてくれてね、変えずに。『関心領域』って、荒木さん、意味があるんですよね?
荒木 そうですね。ひとつにはアウシュビッツの範囲という意味でもあるんですよ。
東 実際にそう言われていた地域というか。
上地 ああ、そうなんですね。
荒木 ドイツ軍の間でね、アウシュビッツの周辺のこと。
東 40平方キロメートルの地域。
荒木 アウシュビッツってひとつだけじゃなくて、いくつかある収容所なんですけど、その地域をそう呼んでいた。ダブルミーニングなんですよね。
まあ関心領域というとね、我々にも・・・さっきおふたりがおっしゃったけれども、関わることですよ。本当に怖いことは、私たちにも起こりかねないということでもあるんですよね。最近は若い人は、新聞はもとよりテレビとか持っていない人多いですよね。
自分でネットで好きなタイプ、インスタやユーチューブ、SNSばっかり見ていると、自分に興味のある情報しか集まってこないというか、いわゆる関心領域情報しか入ってこないんですよね。隣の収容所のことがわからないのと同じように、今、日本の社会で世の中で何が起こっているのかわからなくなってきているっていう人もずいぶんいるんじゃないのかな? 戦争がどこで起こって、地球温暖化がどうなって、子供の数がどうなっているかわからなくさせられているんじゃないかと思うんですよね。
たぶん、みんなね、自分は最新の機器でSNS使ってしょっちゅう見ているし、情報早いし深いと思ってしまっていると思うんですよ。でもそれは、もしかしたら自分で興味のあることしかなくって…。
東 そうかもしれない。
荒木 だから社会的な疑問とかね、批判精神がね、どんどんどんどん持てなくなっているんじゃないかなと。そういう意味では情報弱者になりつつあるんじゃないかなと・・。だから私みたいなじいちゃんやおばあちゃんの方が新聞読んだりテレビ見ているほうが、情報的なバランスが取れている。
東 たしかにそうかもしれない。
荒木 そのへんをね、ちょっと若い人は考えないと、これ他人事で、ああ見終わったわね、ということじゃないと思うんですよね。世の中のことを意識して見ないと何も見られなくなっちゃうよ、と警告のための映画でもあると思うんですよね。
東 まさにこの映画に関心を私たちが寄せることが必要な時代になってきますよね。本当にすごい映画なので、ぜひ観ていただきたいです。私がご紹介したのは、5月24日から公開の『関心領域』でした。
上地 続いては、映画評論家・荒木さんのおすすめ作品です。
荒木 はい。ではまずこの曲からいってみましょう。
♪~「ONE LOVE」~
これはね、レゲエミュージック、その象徴とも神様ともいわれるボブ・マーリーの名曲「ワン・ラヴ」という曲なんですけども。ご存じですね?お二人とも。全く知らないと思っていたんですけども。
![5月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦](../movie/images/240513-30.jpg)
上地 知っていますよ~。
東 お名前はいろんなところで聞きますよね。
荒木 そういうことですか。1960年代ですね、レゲエって。後半からジャマイカで誕生してですね、1980年代の前半まで世界中に大流行した音楽なんですね。その4分の4の2と4ね、ンッチャ、ンッチャという、後ノリっていうやつですよね。ベースがうねるようなベースラインとかね、特徴的な音楽なのでいたことがあると思うんですけども。私が若い頃は音楽だけじゃなくて、そのファッションとかね、考え方、こういうのもずいぶん流行したんですけども。お二人がレゲエが好きだと思わなかったので…。
上地 絶対聞きます、夏になったら特に。
東 うんうんうん。
荒木 ああ、そうですか。じゃあボブ・マーリーとかも知っているんだ?
上地 もちろん知っています。
荒木 私、知らないからそこから始めなきゃと思ってました。(笑)
上地 あはは!でもね、詳しくは…。
東 名前と音楽というところだけで、今でもカルチャーのような、神様のようなレゲエの神様と呼ばれています?そこのあたりは知らなかったので教えていただきたいです。
荒木 ああ、そうですか。はい。ボブ・マーリーは、1945年の生まれです。
白人の父と、アフリカ系のジャマイカ人の母の間に生まれた白人と黒人のハーフです。
父親61歳、母親16歳という時の子供だそうです。マーリーは、両親がすぐ離婚したので非常に貧しい生まれの中から音楽と宗教と、それとサッカーに非常に興味を持って青年に育つんです。それで音楽活動に入ってレゲエミュージックの先駆者として活躍します。基本的には宗教的であって社会的な歌詞、曲で知られるジャマイカ音楽の世界的認知度を高めたという。特に同時にボブ・マーリーはラスタファリ運動・・、聞いたことありますかね?
東 この映画に本当によく出てくる言葉で、これ勉強してから行った方がいいですよね。
荒木 これね、ちょっと難しいんですけども、1930年代にジャマイカの労働者階級と農民を中心にして発生した宗教的な思想運動ですね。一種の革命運動であり宗教なんですけどね。この実践者としても有名ですね。みんな、ほら、何て言うの?ラスタカラーっていう黄色と緑と赤と青のね、ニット帽とかね、かぶったりしますよね。あれがラスタカラーって呼ばれて。
上地 あれがラスタカラーっていうんだ?!
荒木 そうそう。で、ボブ・マーリーのいわゆるドレッドヘアですね。私には絶対できないドレッドヘア。
上地・東 (笑)
荒木 これがですね、本当に象徴的な世界的なシンボルとなっていって、音楽的にはもう有名な音楽ソフトの推定売上数が7500万枚を超えるという。36歳でがんで亡くなっているんですね。映画は、えっと東さんは観ていただいているんですね?
東 観てね、私も全然、名前と音楽しか知らなかったアーティストさんなんですけど、ひとりの人間としての不甲斐なさみたいなところとか、やっぱり神様、人徳者みたいな、そういう印象があったし、それはもちろん崩さないんですけど、なんかちょっとダメな部分も描かれたりして、ちゃんと観やすい内容になっていたかなと。
荒木 1970年代中盤から、彼が死ぬまでを描かれていますね。
その頃ジャマイカは、二大政党が激しく対立する内乱状態だったんですね。
そこで、コンサートから始まるんですが、ボブ・マーリーはその頃大スターですから、その人気を利用しようとする2つの党派の政治闘争に巻き込まれて暗殺されそうになってピストルで撃たれちゃうんですね。怪我しちゃうんですね。だけどマーリーはそれをおして、コンサートに出て、その後はロンドンに渡って、世界的なスターとして一世を風靡してヨーロッパツアーとかやるんです。その後祖国に帰ってきて、このタイトルにもなっている“ワン・ラヴ ピース コンサート”に出て、党の2人の政敵である党首に握手をさせたというお話ですね。1981年にボブ・マーリーは脳腫瘍によってこの世を去るというところで終わる、という作品です。
中身はね、彼の家族が深く関わっているから、お墨付き映画というので、ちょっと都合良いようにも作っているなという部分もあるんですけども、まあそれを差し引いてもね、音楽と平和とサッカーをこよなく愛したボブ・マーリーの人生を描いた素晴らしい作品だと思います。まあボブ・マーリーと聞くと、本当に国のトップレベルの政治にまで影響する立場になって、その結果政治の争いに巻き込まれるというパターンになっているんですけど、それほどジャマイカにとって大きなアーティストだったんですね。
翻って他の国にこういう人いるかなと思ったら、ちょっと考えるのがテイラー・スウィフト。彼女がちょっと同じような、今立場になっているのかな、と思いました。2020年にはバイデン氏を支持して、今年はどうか?というのが話題になっていますよね。ちょっとリベラル色が強い人です。インスタグラムのフォロワー数が2億8000万ですよ。東さんより、ちょっと多いですよね。
東 やめてくださいよ、もう。(笑)
荒木 まあ他にもね、アリアナ・グランデなんかもね、そういう意識して政治家に関わろうとする人多いですよね。役者さんでやっているのはキングズリー・ベン=アディル。
東 すごいこの人、ね!
荒木 ちょうどやっぱりボブ・マーリーと同じように白人と黒人のハーフなんですって。監督はね、『ドリームプラン』なんかを作ったレイナルド・マーカス・グリーンですね。この人、面白い映画をたくさん作っていますけどね。まあそういういろんなことで影響のあったボブ・マーリーという人を余すことなく描いていますので、そういう意味では今アメリカとね、ボブ・マーリーの話はしたけど、日本もね、こういうことで本当いうとね、ちゃんとした政治的な意識、これ別に無理矢理持つことじゃないんですけども、アーティストが政治的発言や支持政党を発表するとですね、必ず音楽に政治を持ち込むな、そういう意見が出ますよね。まあそれもあるかもしれないけど、でもそれでいいのか?っていう気もしますよね。そういう意味ではね、日本にはボブ・マーリーのような本当の意味のアーティスト、国民的アーティストって生まれにくいのかもしれないですね。映画を観て僕はそんなことを感じましたということで。
東 たしかに。
荒木 『ボブ・マーリー:ONE LOVE』という作品でした。5月17日の公開です。
![5月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦](../movie//images/240514-70.jpg)
上地 トリは私、上地由真のおすすめ作品です。私がご紹介するのは、現在公開中の『青春18×2 君へと続く道』という作品です。この作品はですね、台湾スターのシュー・グァンハンさん、そして清原果耶さんのダブル主演による日本と台湾、18年前と現在を舞台に描くラブストーリーです。
物語の始まりは現在の台湾。36歳になったジミーは大学時代の友人と立ち上げた会社を解雇され、失意のまま故郷に戻ります。そんな時、実家で初恋の相手アミからの手紙を見つけ、当時を思い出し心がざわつきます。アミは高校生だったジミーのアルバイト先にやってきた4歳年上の日本人バックパッカーでした。旅費を稼ぐために店で働き始めたアミに仕事を教えるうちに親しい関係になっていきますが、アミはある日突然帰国してしまいます。アミのことが気になりながらも会うことができずにいた日々。今の自分を見つめ直すために、そしてアミとのある約束を果たすためにジミーは彼女の思い出を辿る日本への旅に出かけます・・・というお話です。青春って、せつないよね…。
東 うんうん。沁みてるね~(笑)
荒木 (笑)
上地 沁みるよ~!
上地 最後 本当にせつなくてね。なんか甘酸っぱい気持ちになったんですけど。舞台が日本と台湾ですごく日本の風景も台湾の風景も美しく描かれていましたよね。
東 そう、対比的にね。台湾のカラッとした夏と、日本の新潟の雪景色とかは、すごいバランスでなっているなと思いながら。
上地 そうなんですよ。美しく描かれていて。どうですか、台湾スターのシュー・グァンハンさん!もうすごく…。
東 何?その表情~!なんなん?(笑)
上地 すごく好きで(笑)あのシャイな青年の役をね、されていたんですけど。それがまた可愛くて。
東 彼のね、シュー・グァンハンさんの成長ものとしてもね。全然違う男になっているんですよね、36歳の時と18歳の時と。
上地 そう。18歳の時は可愛かった、お姉さんとしては。
東 もう好きになっちゃっていますけど?
上地 そう~!どうでしたか?
東 いや~、これはとってもいい!恋愛映画であり、成長映画であり、ロードムービーだなと思ったんですけど。台湾の初恋映画で欲しいものがあるんですよ。私は欲しいなって思うシーンがあって。まあカラッとした地域なので2人乗りのバイクシーン。
上地 ああ、いい!
東 ランタンの灯りに秘めた約束。もうね、カラッとさせちゃうような永遠の彼女みたいな存在。こういうの、全部あったんですよ、この映画に。
上地 あったね。
東 そう。だからもう台湾映画の初恋のいいとこどりをしつつも、景色が日本になって。なんかね、良かったなと思いつつ、あとね、旅映画として非常に秀逸ですよね。
自分を振り返るための、自分が今いる場所を確認するための旅があるって、この人は旅をするんですけど。あ、その視点、ちょっと忘れていたって思いながら。
上地 なんか自分探しの旅に出るとかっていうけど、そうじゃなくていいんだよ、みたいなね。
東 そうそうそう。あと何をやる、クリアするとかじゃなくて、今いる自分を確認するための旅。今日でも旅に出られるじゃん、って思って。
上地 本当に一人旅したくなる映画ですね。旅先で出会う人たちもいい人々でしたよね。
東 いい距離感。まさに旅で出会えそうな距離感の人たちが出ていて、リアルさもあって良かったし、恋愛描写も泣きましたよね。
荒木 監督がね、今…。
東 もう、作品が続いている…。
荒木 藤井道人監督。まあ『新聞記者』とか『余命10年』とかいろんなジャンルをやっている方ですけども、どれをやらせても非常に高い打率を稼ぐというかですね。本当に甘酸っぱいエモーションに溢れる映画もね。彼はおじいちゃんが台湾の出身で…。
東 えっ、そうなんですか?
荒木 そうそう。もともと台湾に非常に興味を持っていた、ということと、まあさっきおっしゃった台湾青春映画のね、エッセンスみたいなのが濃いね。
18歳の時はどこか旅をしたことありますか?
上地 もう奈良から出たことなかった。
荒木 ああ、そう。私は18歳の時は昔…もういないのかな?カニ族って。
上地 カニ族?
荒木 ものすごいでかいリュックを背負って北海道を周るんですよ。バックパッカーですね。それ、カニ族って言ったの、昔、姿がカニに似ているから。
上地・東 へえ~!
東 北海道よりカニ族が気になっちゃって(笑)
荒木 え?知らない?世代…それで1か月くらい周りましたよ。
上地・東 へえ~、すごーい!
荒木 北海道を一周ですよね、ほぼ。まあ大学1年生の時だったから。
東 はあ~!
上地 すごいな~。
荒木 それで自分はどこに存在するのか、この映画と同じようなことを考えましたけど。
上地 すごい!そんなこと、考えていたんだ。
荒木 その時はわかんなかったし、今もわからない(笑)
上地 あっはっは!
東 結局…(笑)
荒木 今、考えてみたら、これ18×2ですよね。36。私、18×4にほぼ近いのにまだわからないっていうのはどういうことでしょうね?
上地 そんな簡単にわからないですよね。
荒木 そういうことですよね。
上地 だから面白いの。わからなくていいの。
でもこれ、岩井俊二さんの『Loⅴe Letter』って大好きな映画なんですけど、これもし時間あったら見てほしい。まず見てから映画を観た方がいいかもしれないですよね。
東 ちょうど18年前の台湾なので、ちょうどそれが上映されている時期だったりするのでね。
荒木 非常にそれはいい提案ですよ。まあ藤井監督も当然それを意識して作っているみたいな感じですけどね。
上地 よりなんか…グッとくるところがね、あると思いますよ。
荒木 青春18っていうのはね、それこそ青春18切符からね、ちょっといろいろ連想すると思いますけど。
東 たしかに、そうですね。
荒木 青春は18だけじゃないです。青春18切符も81歳になっても乗れますし。
上地 乗れるんですか?
東 何歳になっても使えるらしいです。びっくり、びっくり。
上地 一生青春ですね。
荒木 そうですね、はい。
上地 はい。私がご紹介したのは公開中の『青春18×2 君へと続く道』という作品でした。5月公開の映画作品の中から、それぞれの推しをご紹介しました。ぜひ映画館でチェックしてくださいね。映画評論家の荒木久文さん、そして映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。
荒木・東 ありがとうございました。
![4月のおすすめ映画 文化放送「上地由真のワンダーユーマン」推薦](../movie/images/220508-01.jpg)
■上地 由真
オーディションがきっかけで関西を中心に音楽活動開始。2007年シングル「shine day」などをリリース、以降全国各地でライブ活動やイベント参加。最近は女優としても活躍、舞台、映画などのジャンルにも進出。
■東 紗友美
映画ソムリエとしてTV・雑誌・ラジオなどで活動中。趣味は、映画ロケ地巡り。国内外問わず廻り、1年で100箇所以上ロケ地を訪れたことも。インスタグラムでも毎日映画に関する写真やコメントをほぼ毎日掲載中。
■荒木 久文
現在 複数のラジオ番組を中心に、新聞紙面 ニュースWEBなどに映画をテーマとした評論 批評 紹介 などの活動を展開。報知映画賞選考委員 ノミネート委員 日本映画ペンクラブ会員。